消費税の納付額は
預かった消費税 - 支払った消費税 = 納付する消費税
で計算するのが原則ですが、簡易課税制度は、この「支払った消費税」を
で計算する、仕入税額控除の特例制度です。

みなし仕入率ってどのくらいですか?

事業区分によって決まっています。
簡易課税制度の事業区分ごとの割合(みなし仕入率)は以下のとおりです。
第1種事業 | 90% | 卸売業 |
第2種事業 | 80% | 小売業 |
第3種事業 | 70% | 製造業等 |
第4種事業 | 60% | 第1・2・3・5・6種以外の事業 |
第5種事業 | 50% | サービス業、運輸通信業、金融業、保険業 |
第6種事業 | 40% | 不動産業 |

我が社は不動産業を営んでいるので40%ですね。
他の業種に比べてあまり仕入税額控除ができないんですね…。

いえいえ。ちょっと待って下さい。
事業区分は、業種ではなく取引ごとにその内容で区分します。
事業区分ごとにそれぞれ留意点がありますので、業種別にみていきましょう。
業種が卸売業・小売業の場合
第1種事業(卸売業)と第2種事業(小売業)は、販売した相手によって区分されます。
また、事業全体としては卸売業や小売業を営んでいても、第3種事業(製造業等)に区分される取引があります。
ポイントは
です。
仕入れた商品を加工して販売することもありますよね。
その場合は第3種事業に区分されます。
例えば
などが例としてあげられます。
ただし、以下のような軽微な加工は、性質や形状の変更はなかったものとして、第1種または第2種に区分することができます。
同様に、食料品店での、切る、刻む、つぶす、挽く、たれに漬け込む、混ぜ合わせる、こねる、乾かすといった行為は軽微な加工に該当しますが、加熱する行為は第3種事業に区分されます。
また、加熱していなくても
なども、性質や形状の変更となりますので、第3種事業になります。
販売した商品について行うアフターサービスなどは、第5種事業(サービス業)に区分されます。
性質や形状を変更しないで事業者に販売 | 第1種 |
性質や形状を変更しないで消費者に販売 | 第2種 |
性質や形状を変更して販売 | 第3種 |
アフターサービス | 第5種 |
業種が製造業・建設業の場合
製造業等の事業区分を行う際は
がポイントになります。
例えば
などが第3種事業に区分される取引です。
下請会社では
になります。
取引先から原材料や仕掛品等を預かって加工等を行い、その加工賃を受け取るといった取引は、第3種事業には該当せず、「加工賃等を対価とする役務の提供」として第4種事業に区分されます。
なお、ここでいう材料とは、主要な原材料のことです。
原材料の無償支給を受けているのであれば、補助材料を自己で調達していたとしても第4種事業です。
逆に、原材料を自己で調達しているのであれば、補助材料の支給を受けたとしても第3種事業になります。
また、メンテナンスや保守点検等の製造以外のサービスは第5種事業(サービス業)に区分されます。
原材料を自己調達した場合 原材料を有償支給された場合 | 第3種 |
原材料を無償支給された場合 | 第4種 |
製造以外のサービス | 第5種 |
業種が飲食店業の場合
飲食店では多様な取引が行われますので、事業区分の数も多くなります。
まず
で区分されます。
持ち帰りの場合には、さらに
によって区分されます。
飲食物等を自分で製造した場合は第3種事業(製造業等)に該当します。
他から購入した飲食物等で、販売相手が事業者なら第1種事業(卸売業)、消費者なら第2種事業(小売業)になります。
そして店内飲食の場合は第4種事業になります。
これには出前も含まれます。
出前は、店内でテーブルまで持って行くことと同じサービスだと考えられるからです。
ただし、飲食設備のない宅配専門店が配達した場合は、製造業として第3種事業になります。
持ち帰り | 他者から購入した商品を事業者に販売 | 第1種 |
他者から購入した商品を消費者に販売 | 第2種 | |
自分で製造した製品を販売 | 第3種 | |
店内飲食 | 第4種 |
業種が不動産業の場合
第6種事業(不動産業)に区分される取引は
などです。
建物の販売については、入手方法と販売相手によって、第1種事業(卸売業)・第2種事業(小売業)・第3種事業(製造業等)に区分されます。
また、賃貸契約に伴って保険業務の代行などを行った場合は、第5種事業に区分されます。
他者から仕入れた建物の事業者への販売 | 第1種 |
他者から仕入れた建物の消費者への販売 | 第2種 |
自己が建設した建物の販売 | 第3種 |
不動産の仲介・斡旋 | 第6種 |
不動産(※土地・住宅を除く)の賃貸 | 第6種 |
不動産の管理 | 第6種 |
保険業務等 | 第5種 |
※土地・住宅の貸付は非課税です。

建物を販売したときは、みなし仕入率が全然違うんですね。

はい。
仲介や斡旋と違って、仕入れたり建設したりしたときに、たくさん消費税を払っているはずですからね。
おわりに
簡易課税制度の事業区分は業種とは異なります。
取引ごとに適切に区分しましょう。