消費税個別事例:外国法人の納税義務と必要な手続き。

税金

消費税って日本の税金だから、外国の会社には関係ないよね?

くま税理士
くま税理士

いえいえ。日本国内で販売やサービスをおこなったときは、外国の会社でも消費税の納税義務者となる場合があります。

外国法人の納税義務判定と必要な手続きを、事例とともにみていきましょう。

事例

当社は1960年設立の老舗外国法人です。

2018年から日本で卸売業(仕入・販売)を始めました。

消費税の納税義務者となるのはいつからですか?

取引状況の詳細
  • 1960年
    設立

    事業年度は1月1日から12月31日です。

    資本金は日本円に換算すると3億円です。

  • 2018年1月
    日本での取引開始

    日本での商品の仕入れを開始しました。

  • 2018年3月
    課税売上高:700万円

  • 2018年5月
    課税売上高:500万円
  • 2018年7月
    課税売上高:600万円
  • 2018年8月
    課税売上高:300万円

    以後、毎月300万円の課税売上高があります。

  • 2018年の状況

    1月1日から6月30日までの課税売上高の合計額は1,200万円です。

    1月1日から12月31日までの課税売上高の合計額は3,300万円です。

    所得税法に規定する⽀払明細書に記載すべき給与等の⾦額に相当するものの合計額はありません。

  • 2019年の状況

    1月1日から6月30日までの課税売上高の合計額は1,800万円です。

    1月1日から12月31日までの課税売上高の合計額は3,600万円です。

    所得税法に規定する⽀払明細書に記載すべき給与等の⾦額に相当するものの合計額はありません。

  • 補足

    当社には⽇本に⽀店等の恒久的施設はありません。

    2017年以前に当社が日本で取引を行ったことはありません。

    当社の株主が日本で取引を行ったことはありません。

    これまでに課税事業者選択届出書の提出をしたことはありません。

納税義務判定の概要

基準期間の課税売上高

基準期間における課税売上高が1,000万円を超えると納税義務が生じます。

基準期間は原則として前々事業年度です。

特定期間の課税売上高

特定期間における課税売上高が1,000万円を超えると納税義務が生じます。

特定期間は原則として前事業年度の上期6か月間です。

なお、所得税法に規定する⽀払明細書に記載すべき給与等の⾦額に相当するものの合計額を、特定期間における課税売上高とすることもできます。

基準期間がない場合(新設法人・特定新規設立法人)

設立1年目や2年目には基準期間がありませんので、資本金で判定します。

資本金が1,000万円以上であれば、納税義務が生じます。

また、持株割合が50%を超えるような親会社等がある場合には、親会社等の基準期間相当期間の課税売上高が5億円超であれば、納税義務が生じます。

納税義務判定:2019年期

基準期間の課税売上高

2019年期の納税義務判定に使用する基準期間は、2017年期(2017年1月1日から2017年12月31日まで)です。

2017年期には日本国内での売上がありませんので、基準期間の課税売上高はゼロです。

日本で事業を始めたのが2018年でしょ?基準期間がないことにならないの?

くま税理士
くま税理士

設立が1960年ですので、基準期間はあります。

基準期間がない場合というのは、あくまで新しく設立した法人に対する規定です。

消費税では、内国法人(日本の法人)と外国法人の区別はありません。

日本での事業を開始したばかりの外国法人であっても、設立3期目以降であれば基準期間は存在します。

特定期間の課税売上高

2019年期の納税義務判定に使用する特定期間は、2018年上期6か月間(2018年1月1日から2018年6月30日まで)です。

2018年上期6か月間の課税売上高は1,200万円で、1,000万円を超えています。

ただし、所得税法に規定する⽀払明細書に記載すべき給与等の⾦額に相当するものの合計額を特定期間の課税売上高とすることができます。

所得税法に規定する⽀払明細書に記載すべき給与等の⾦額に相当するものの合計額はありませんので、特定期間の課税売上高はゼロです。

納税義務

したがって、2019年期の納税義務はありません。

納税義務判定:2020年期

基準期間の課税売上高

2020年期の納税義務判定に使用する基準期間は、2018年期(2018年1月1日から2018年12月31日まで)です。

2018年期の課税売上高は3,300万円で、1,000万円を超えています。

したがって、2020年期は納税義務があります。

外国法人が、新たに⽇本に⽀店を設けたり人的サービスを行う場合には、みなし事業年度の適用を受け、基準期間や特定期間の判定が異なる場合があります。

事例の場合には該当しませんが、日本支店の有無だけでなく事業内容についても確認が必要です。

必要な手続き等

納税地の選択

各届出書や申告書等は、納税地の所轄税務署長へ提出しますので、まずはじめに納税地を確定しなければなりません。

外国法人の納税地は、以下の順序で決められます。

  1. 国内に事務所等がある場合:その事務所等の所在地
  2. 不動産の貸付け等をする場合:その不動産等の所在地
  3. 過去に納税地がある場合:過去の納税地
  4. 事業者が選択した場所
  5. 麹町税務署の管轄区域

国内に事務所等がなく、新たに日本で卸売業をはじめた場合は、事業者が選択した場所になります。

外国法人にとって便利な場所を選択すればよいことになります。

関連会社や取引先等、日本での活動の中心となる場所や、後述する納税管理人の住所地などでも構いません。

課税事業者届出書の提出

基準期間における課税売上高が1,000万円を超えたとき、または、特定期間における課税売上高が1,000万円を超えたときに、速やかに提出します。

基準期間用と特定期間用があります。

事例の場合には、基準期間用を提出します。

納税管理人届出書

消費税の課税事業者になると、申告書を提出し消費税の納付を行わなければなりません。

国内に事務所等がない外国法人が消費税の課税事業者となる場合には、この申告書の提出や税金の納付等の納税義務を果たすため、納税管理人を選任し届け出なければなりません。

納税管理人は個人でも法人でもかまいません。

簡易課税制度の検討

基準期間の課税売上高が5,000万円以下の場合には、簡易課税制度を選択することができます。

事例の場合には選択可能ですが、慎重に検討する必要があります。

帳簿と請求書の確認・整備

本則課税にて申告する場合には、帳簿や請求書が仕入税額控除の要件を満たしているかどうかを確認しておく必要があります。

外国語でもかまいませんが、必要な事項が記載され保存されていなければなりません。

外国法人の帳簿に不備があり、税務調査で仕入税額控除が否認される例もあります。

仕入税額控除の要件は、軽減税率とインボイス制度の導入による改正もありますので、課税事業者となる2020年期の開始までに、帳簿と請求書の整備をしておきましょう。

移行スケジュールと帳簿や請求書の記載事項はこちら。

移行スケジュールと記載事項
  • ~2019年9月
    請求書等保存方式
    帳簿
    • 取引相手の氏名または名称
    • 取引年月日
    • 取引内容
    • 取引金額(税込)
    請求書等
    • 書類作成者の氏名または名称
    • 取引年月日
    • 取引内容
    • 取引金額(税込)
    • 書類受領者の氏名または名称
  • 2019年10月~
    区分記載請求書等保存方式
    帳簿
    • 取引相手の氏名または名称
    • 取引年月日
    • 取引内容(軽減税率対象取引である場合にはその旨)
    • 取引金額(税込)
    請求書等
    • 書類作成者の氏名または名称
    • 取引年月日
    • 取引内容(軽減税率対象取引である場合にはその旨)
    • 税率ごとに合計した取引金額(税込)
    • 書類受領者の氏名または名称
  • 2023年10月~
    適格請求書等保存方式
    帳簿
    • 取引相手の氏名または名称
    • 取引年月日
    • 取引内容(軽減税率対象取引である場合にはその旨)
    • 取引金額(税込)
    請求書等
    • 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
    • 取引年月日
    • 取引内容(軽減税率対象取引である場合にはその旨)
    • 税率ごとに合計した取引金額(税抜または税込および適用税率
    • 税率ごとの消費税額等
    • 書類受領者の氏名または名称

    緑色:2019年10月から開始する区分記載請求書等保存方式での変更点

    赤色:2023年10月から開始する適格請求書等保存方式での変更点

申告・納付

消費税の申告・納付期限は、課税期間の末日の翌日から2か月以内です。

2020年期(2020年1月1日から2020年12月31日)の申告・納付期限は、2021年2月28日です。

(2021年2月28日は日曜日のようですので、翌日の2021年3月1日ですね。)

まとめ

外国法人の納税義務と必要な手続きについて、事例とともにお話をしてきました。

消費税は消費地課税主義のため、内国法人と外国法人の区別はありません。

⽇本に⽀店等の恒久的施設がない外国法人であっても、日本国内で事業を行う場合には、消費税の納税義務者となる場合があります。

納税義務の開始時期を早めに確認し、余裕をもって手続きや帳簿等の整備をしましょう。

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