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被相続人の居住用財産(空き家)を譲渡した場合の3,000万円控除の特例:適用要件と必要書類

税金
税金

土地や建物を売却した場合

  • 譲渡価額(売却代金)-(取得費+譲渡費用)

で計算した

  • 譲渡所得金額

に税率を乗じて所得税の金額を算出しますが、一定の場合には特別控除の特例があります。

特別控除の特例の適用を受けられる場合、譲渡所得金額は

  • 譲渡価額(売却代金)-(取得費+譲渡費用)- 特別控除額

で計算します。

そして、この特例のひとつが

  • 被相続人の居住用財産を譲渡した場合

です。

この特例の特別控除額は、3,000万円です。

被相続人の居住用財産を譲渡した場合の特例

譲渡所得金額 = 譲渡価額(売却代金)-(取得費+譲渡費用)- 特別控除額(3,000万円)

特例の適用を受けるための、適用要件と必要書類を紹介します。

改正により、2024年以降の譲渡については適用要件が変更になる見込みです。(2023.03.11)

適用要件(Yes/No判定)

相続の状況

相続の状況
相続または遺贈により、家屋と敷地の両方を取得しましたか?
  • Yes:売却時期
  • No:特例の適用は受けられません。

下記のような場合は、特例の適用は受けられません。

  • 取得した方が、相続人または包括受遺者でない場合
  • 家屋のみ、または、敷地のみを取得した場合
  • 家屋または敷地を、相続または遺贈により取得した、他の相続人がいる場合

売却時期

売却時期
相続から3年以内の売却ですか?

特例の適用が受けられるのは、相続開始日以後3年を経過する日の属する年の12 月31 日までの間に行った売却に限ります。

3年以内
適用対象期間の数え方

令和4年に売却した場合は、相続開始が平成31年1月2日以後のものが対象です。

相続前の使用状況

相続前の使用状況
被相続人は、家屋を住まいとして使用し、一人で住んでいましたか?

この特例は、被相続人(亡くなった方)の居住用財産で、空き家となってしまったものが対象です。

被相続人が複数の住まいを持っていた場合は、主な住まいとしていた家屋のみが対象となります。

また、老人ホームに入居していた場合でも、入居直前の主な住まいで、老人ホームの入居から相続開始までの間

  • 老人ホームが主な住まいであった
  • 引き続き家財等の保管に利用していた
  • 事業や貸付けに使用していない
  • 他者が居住用として使用していない

といった要件を満たせば、特例の適用を受けることができます。

なお、店舗兼住宅のように、住まいとして利用していない部分がある場合には、住まいに使っていた部分のみが特例の対象です。

また、母屋、離れ、倉庫など複数の建物がある場合も、主に住まいとしていた部分のみが対象です。

この場合、敷地については面積按分となります。

家屋(建物)の状況

家屋(建物の状況)
家屋は、昭和56 年5 月31 日以前に建築されたものですか?
  • Yes:
  • No:特例の適用は受けられません。
家屋(建物の状況)
家屋は、区分所有建物(マンション等)ですか?

区分所有建物の登記がされている二世帯住宅やマンションは、特例の適用を受けることはできま
せん。

売却時の家屋と敷地

売却時の家屋と敷地
家屋と敷地は、どのように売却しましたか?

家屋と敷地を売却した場合

家屋
売却時の家屋と敷地:家屋と敷地を売却した場合
家屋は、相続開始から売却までの間、空き家でしたか?
  • Yes:
  • No:特例の適用は受けられません。

相続開始から売却までの間に、事業、貸付け、居住のために使用した場合は、特例の適用を受けることはできません。

売却時の家屋と敷地:家屋と敷地を売却した場合
家屋は、売却時に地震に対する安全基準等に適合していましたか?
  • Yes:敷地
  • No:特例の適用は受けられません。

地震に対する安全基準等とは

  • 建築基準法施行令第三章及び第五章の四の規定
    または
  • 国土交通大臣が財務大臣と協議して定める地震に対する安全性にかかる基準

のことをいいます。

敷地
売却時の家屋と敷地:家屋と敷地を売却した場合
敷地は、相続開始から売却までの間に、事業、貸付け、居住のために使用しましたか?
  • Yes:特例の適用は受けられません。
  • No:売却先

相続開始から売却までの間に、事業、貸付け、居住のために使用した場合は、特例の適用を受けることはできません。

家屋を取り壊して敷地を売却した場合

家屋
売却時の家屋と敷地:家屋を取り壊して敷地を売却した場合
家屋は、相続開始から取り壊しまでの間、空き家でしたか?
  • Yes:敷地
  • No:特例の適用は受けられません。

相続開始から取り壊しまでの間に、事業、貸付け、居住のために使用した場合は、特例の適用を受けることはできません。

敷地
売却時の家屋と敷地:家屋と敷地を売却した場合
敷地は、相続開始から売却までの間に、事業、貸付け、居住のために使用しましたか?
  • Yes:特例の適用は受けられません。
  • No:
売却時の家屋と敷地:家屋と敷地を売却した場合
敷地は、家屋の取り壊しから売却までの間に、建物や構築物の敷地のために使用しましたか?
  • Yes:特例の適用は受けられません。
  • No:売却先

相続開始から売却までの間に、事業、貸付け、居住、または、建物や構築物の敷地のために使用した場合は、特例の適用を受けることはできません。

売却先

売却先
売却先(買い主)は第三者ですか?
  • Yes:売却金額
  • No:特例の適用は受けられません。

売却先(買い主)が、配偶者や親族、同族会社など、特別の関係にある相手である場合は、特例の適用を受けることはできません。

売却金額

売却金額
売却金額は1億円以下ですか?

売却金額が1億円を超えるものは、この特例の対象から除かれます。

複数回にわたって売却する場合は、合算した合計金額で判定します。

特例の重複・併用

特例
この特例を以前に受けたことや、「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」との併用はありませんか?
  • Yes:3,000万円の特別控除を受けることができます。
  • No:特例の適用は受けられません。

同じ被相続人から相続により取得した家屋または敷地の売却について、既にこの特例の適用を受けている場合は、重複して適用を受けることはできません。

また、相続財産に関する別の特例である

  • 相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例

との併用はできません。

必要書類

特例の適用を受けるために、確定申告書に添付が必要な書類は以下です。

  • 譲渡所得の内訳書
  • 登記事項証明書
  • 被相続人居住用家屋等確認書
  • 売買契約書の写し
  • 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し(家屋を売却した場合のみ)

譲渡所得の内訳書

土地や建物を売却した場合は

  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】

を確定申告書に添付します。

この内訳書の1面から3面に加えて

  • 被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例の適用を受ける場合の記載事項

として5面を添付します。

登記事項証明書

登記事項証明書は

  • 相続により取得したこと
  • 昭和56 年5月31 日以前に建築されたこと
  • 区分所有建物建物ではないこと

を証明するために必要な書類です。

上記を証明できる書類であれば、ほかの書類でも構いません。

また、書類の添付の代わりに、申告書等に

  • 不動産番号
    または
  • 土地の地番、家屋番号

を記載することで、添付を省略することもできます。

被相続人居住用家屋等確認書

家屋の所在市町村に申請し、交付を受ける書類です。

適用要件のうち

  • 被相続人が住まいとして使用していたこと
  • 被相続人以外に居住していた者がいなかったこと
  • 事業、貸付け、被相続人以外の居住のために使用されていたことがないこと
  • 被相続人の家財等の保管のために使用されていたこと

などを証明するための書類です。

売買契約書の写し

売却金額が1億円以下であることを証明するために必要な書類です。

証明ができれば、ほかの書類でも構いません。

耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し

家屋を取り壊さずに売却した場合に必要です。

地震に対する安全基準等への適合を証明する書類です。

  • 耐震基準適合証明書

は、譲渡の日前2年以内に調査が終了したものが有効です。

  • 建設住宅性能評価書の写し


は、譲渡の日前2年以内に評価されたもので、耐震等級の評価が、等級1~3であるものに限ります。

おわりに

土地や建物を売却した場合の

  • 被相続人の居住用財産(空き家)を譲渡した場合の3,000万円控除の特例

の、適用要件と必要書類を紹介しました。

  • 相続開始前
  • 老人ホーム入所時
  • 相続開始後
  • 売却時

のそれぞれの期間に要件があります。

相続が開始した時点では要件を満たしていたのに、空き家になってから売却するまでの間に貸付をしたり、耐震基準を満たさない家屋をそのまま売却したりすると、適用が受けられなくなります。

売却する予定がある場合は、事前に要件を確認しておきたいですね。

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