今年も
の季節がやってまいりました。
特に7月の4週目は、各地で勝ち上がった強豪校同士の注目対決が目白押しです。
SNSでも

今日は1日中「バーチャル高校野球」です。
とか

今日は4試合観ました。
とか、みなさん
にクギ付けのようですね。

もちろん私もです。
今年の観戦記をお届けします。
昨年(2024年)分はこちら。
最強の「シンゆとり」時代
宮城大会の準々決勝(仙台育英vs東北)は、高校野球ファン大注目の対戦でした。
祝日の開催だったため、観客席は超満員です。
試合は、期待どおりの白熱した接戦で目が離せません。
緊迫した場面では、両者が何度も間をとって、サインを確認したり声を掛け合ったりしています。
また、体に異変を感じると、タイムをとるなどして、水を飲んだりストレッチをしたりしていました。
そしてそれを見守るベンチや審判団には、無理に急がせたりする様子は一切ありません。
体調への配慮はもちろんですが、その場に居合わせた全員から、悔いのない良い戦いをしてほしいという想いが伝わってきました。
普段はキビキビと素早い行動をしている球児たちですから、大切な場面くらいは

タイパなんてくそくらえ(言葉が汚くてすみません。)
の精神で、納得のいくまで時間を使ってほしいですね。
ここ数年で定着した給水タイムは、3回、5回、7回にありました。
導入され始めた当初は、給水タイムによって流れが変わってしまうのではないかという声もありました。
従来からあった、5回のグラウンド整備と同じ状況が増えるのではないかということですね。
けれど、これだけ回数が増えると、逆に給水タイムがあることが普通に感じられるようになってきました。
グラウンド整備に比べると、1回あたりの時間も短いですし、試合への影響はさほどないように思いました。
そう言えば、サッカーでも給水タイムができたみたいですね。
サッカーはずっと動いているはずなのに、真っ最中に急に選手が立ち止まって集まっていて、初めて見たときには何事かと驚きました。
今となっては、「水を飲んではいけない」とされていた時代があったなんて信じられませんね。
ほんの数十年前のことです。
野球に限らず、選手が力を最大限発揮できるよう、今後もスポーツ科学が進むといいなと思います。
今は当たり前だと思われていることが、あっさりと覆される日が来るかもしれませんね。
そして何と言っても、日程のゆとり(余裕)の持たせ方が、昨年よりもさらに強化されたように感じました。
ほとんどの地方で、連戦にならないように日程が組まれていて、準々決勝の前後あたりからは、各地で試合のない日が頻繁に見られました。
その結果(なのかどうかはわかりませんが)、仙台育英の投手は、天王山とも言える強敵との準々決勝で、しかもものすごい酷暑の中、130球を超える球数で完投勝利となりました。
1試合の出場選手数が日本一と言われる、人財豊富な強豪校です。
ほかに投げられる人が居ないとかではありません。
準備万端の好投手が、いつも大勢控えているのにです。
しかも

3日後の準決勝にも登板していましたよ。
最終回の1回だけでしたが、次の試合でも投げていました。
解説の方の話では、登板間隔が空きすぎるので、感覚を維持するためということと、本人の意思を確認して登板させたのではないかとのことでした。
準決勝は準々決勝の3日後、決勝は準決勝の4日後です。
連戦で投手のやりくりに苦労していた時代から、試合間隔を考慮して調整が必要になるほど、ゆとりのある日程が組まれる時代になりました。
ほかにも、同じ祝日に行われた佐賀大会の決勝は、完封試合でした。
翌日の北北海道大会の決勝も、180球を超える完投勝利です。
三重大会の決勝も完封でしたし、高知大会の決勝では、急遽登板となった2年生が完投し、自己最速の151キロを記録しました。
かつては、連戦の中で、1人で何百球と投げ切ることが美徳とされていた時代がありました。
それが、複数投手や継投が当たり前の時代になり、今度はまた、完投や完封の試合が頻繁に見られるようになりました。
地方大会を、1人で投げ抜いている学校もあるようでした。
試合の進め方や日程に配慮がされるようになったことで、体を壊すほどの無理をしなくても、毎試合ベストな状態で全力を尽くし、より高いパフォーマンスをすることができるようになったように思います。
甲子園での本大会でも、休養日が増えましたよね。
昔は準々決勝以降は連戦、さらにその前から合わせて4連戦ということもありました。
松坂大輔さん(1998年)も4連戦でしたね。
延長戦となった準々決勝の夜には、疲れ果ててゴハンが喉を通らない様子が放送されていました。
素人目に見ても、明らかに

明日は無理そうだね…。
という状態でした。
案の定、翌日の準決勝は先発ではありませんでした。
9回に救援しましたが、当然ベストな状態ではありません。
対決を楽しみにしていた対戦相手の選手達は、さぞかし残念だっただろうなと思いました。
そんな中で決勝は、完投でも完封でもなくノーヒットノーランです。
まさに怪物です。

良い子は真似しないでください。(できないけど…。)
ちなみに、1993年に全国制覇したときの育英(兵庫)は3枚看板(3投手)でした。

30年前から複数投手の継投策です。
報徳学園(兵庫)も、私としては2枚看板のイメージ(1997年、2023年、2024年など)が強いですが

金村さん(1981年)は1人だったのかな?
2002年の「二刀流じゃない方の」大谷さんも、4連投を含む5完投でしたね。
そんな紆余曲折を経て、進化した「シンゆとり」の時代がやってきました。
科学的に体調に配慮した上での「ど根性」は、最強なのではないかと思います。
また、ゆとり(余裕)を持って落ち着いて試合を進められる環境は、体だけでなく集中力を維持することができて精神的にも大変有効です。
繰り返しになりますが、高校球児たちは、通常時にはいつも迅速な行動を心掛け、遅延行為とは対極の存在です。
ですので、試合を左右するような重要な場面では、急がず急がせず、たっぷりと時間を使ってほしいですね。

急ぐのはメジャーリーガーになってからでいいです。(ピッチクロック)
現時点での最善の環境を活かして、進化した選手の皆さんには、後悔のないように、心残りのないように、常にベストコンディションで、全力を出し切ってほしいですね。
大会運営アレコレ
各地の大会運営には、日程以外にも様々な工夫が見られました。
まずは開始時刻です。
全国大会では昨夏から2部制が導入されていますが、香川大会、徳島大会、三重大会、富山大会などで、お昼間の時間帯を避けた開始時刻が設定されている日がありました。
2部制でなくても、第1試合を8:30や8:45など、なるべく早い時刻から開始している地方もありましたし、愛知大会は午後のみ(14:00開始、16:30開始)の日があったようでした。
神奈川大会では、準々決勝の4試合を、すべて異なる球場で9:00から行い、午前中で全試合を終了していました。

横浜が負けるかと思いましたね。
平塚学園は本当に強かったですし、次の準決勝も1点差でした。
神奈川大会の決勝は、結局第1シード同士の対決(横浜vs東海大相模)になりましたが、両者とも厳しい勝ち上がりだったようです。
多くの地方で連戦を避けている中、神奈川大会は準決勝と決勝が、土日に連戦です。
横浜スタジアムですので、球場の都合もあるのかもしれませんが、両日とも外野席まで超満員でしたね。
さすがエンターテイナー神奈川大会です。
ちなみに兵庫大会は、これまで通り、第1試合が10:00開始で、続けて第2試合という進行でした。
JSPO(日本スポーツ協会)が制定している「熱中症予防運動指針」では
を超えると
となっています。
乾球温度がいわゆる気温だそうですが、湿度が高い場合は、1ランク厳しい条件を適用するとのことですので
に設定されている
を超えると
ということになるはずです。
そうなると、8月の兵庫県では

夜中にやるしかないんだけど…。
となります。
メインはWBGT(暑さ指数)のようですので、甲子園での全国大会でどのように適用されるのかわかりませんが、さすがにそろそろ英断のときなのではないかなと思います。
暑さ対策や熱中症対策にばかり気を取られ、その負担は年々増加し、根本的な解決にはなっていません。
「国民スポーツ大会」と名称が新しくなった国体は、分散開催の改革が進んでいます。
高校野球の全国大会も
での持ち回り開催や
を検討してもいいかもしれません。
どうしても「夏の甲子園」が譲れないのであれば
するしかないのではないでしょうか。
エスコンフィールドをはじめ、各地で立派な球場が建設されています。
せめて直射日光が当たらないようにするとか、強力な冷却設備を設置するとか、全試合ナイターにするとか、その場しのぎではありますが、なんとか選手の安全を確保できるような大会にしてほしいですね。
高校野球に興味のない人が、少し目にしただけでやいやい言っているのではありません。
30年以上観続け、「夏の甲子園」に魅了されてきた私が言っているのです。(ちょっと偉そうですみません。)
炎天下の甲子園じゃなくなっても、高校野球の素晴らしさは変わりませんので

大したことではないと思いますよ。
もっと長く観続けている方々も、もっと深く愛している方々も、きっと近年の状況を鑑みて、同じように感じ始めているのではないかなと思います。
さて、球場の話が出ましたが、北海道の決勝は、南北ともに
で行われました。

めっちゃ豪華ですね!
日曜日に行われた南北海道大会の決勝では、煌びやかな観客席が人でいっぱいでした。

これは中なの?外なの?
と不思議な光景でしたが、冷房完備の完全な屋内ではないそうですね。
けれど、屋根で覆われているため直射日光が当たらないようで、幾分快適そうでした。
こんな憧れの球場で決勝が行われるとなると、選手はもちろん、ご家族や学校関係者の方々も楽しみですよね。
各地でプロの球場を使うことが増え、ネーミングライツも進んでいるようです。
今回はじめて知った球場名で面白かったのは、鳥取の
です。
ゴロがよくて、なんだかかわいくて、すぐに覚えてしまいそうです。
昔からある
なども、記憶に残りやすいですね。
ちなみに兵庫大会では、過去に甲子園球場を使う年が数回ありました。
甲子園は大阪にあると思われている方もいらっしゃるかもしれませんが

兵庫県(西宮市)にあります。
ということで、実は母校が

甲子園まであとひとつ!
だったことがあります。

決勝まで進んだのですか!?

いいえ。2回戦が甲子園の予定だったんです。
なので、1回戦に勝ったと聞いた時は、大泣きして喜びました。
それなのに、雨天順延で球場の変更があって

高砂球場になりました。
という悲しい思い出があります。(笑)
今は決勝を含む複数の試合が
で行われています。
近いので、母校や注目カードの試合があれば行きたいなと思うのですが、ついつい暑さに負けてネット観戦を選んでしまいます。
球場名がまだ
だった頃に、母校の試合を観に行ったことがあります。
もう卒業していて、全く面識のない、しかも保護者の方ばかりだったのですが、卒業生だと言うと、飲み物やうちわをくださって、とても楽しく一緒に応援させてもらったことがあります。
今年は、サンドウィッチマンさんが、出身校である仙台商業(宮城)に、大量のうちわを寄附したことが話題になりましたね。
強豪校や注目対決の観戦も楽しいですが、母校や近隣のなじみのある学校などの応援も、懐かしい気持ちになれておすすめです。
タイブレークの是非
もうひとつ、近年導入されたのがタイブレークです。
今大会は、観る試合、観る試合がタイブレークになって

めちゃくちゃ疲れました。
心臓がバクバクして、寿命が縮まりそうでした。
観ているだけでこんなに疲労困憊して、選手たちの精神状態が心配になるほどです。
特に、9回まで堅い守り合いで緊迫した試合をしていた場合、1点はとても遠い存在です。
それが、タイブレークになった途端、あっという間に手が届く存在になり、先攻であればなるべく多く、後攻でも1点では追いつかないような場面に遭遇します。
まるで別の試合のようになってしまい、1点の重みの違いに、気持ちがついていけない瞬間がありました。

違憲です!

それは「1票の重み」ですね。
鹿児島大会の準決勝(神村学園vs樟南)では、なんと延長12回まで試合が続きました。
延長戦が長くならないための、早く試合に決着をつけるためのタイブレークなのに、10回は両者ともに3点ずつ、11回は表裏0点で、結局わずか1点差の壮絶な試合になりました。
九州の試合は、解説の方の方言を聞くのが好きで、注目カードがあるとつい観てしまいます。
樟南は、私たちの世代だと、1994年の佐賀商との決勝戦が思い出されますが、なんと、あのときに満塁ホームランを打った選手の息子さんが、神村学園にいらっしゃるとのことでした。
それを聞いて

なんという巡り合わせ!
と即座に驚くことができた私も、なかなかの高校野球ツウです。(自画自賛)
こういったエピソードを楽しめるのも、長く観ているからこそですね。
また、タイブレーク中に、強い横風が吹く場面が何度かありました。
球場がそういう構造なのか、地域として風の強い土地柄なのかわかりませんが、解説の方も、「三塁ランナーが居るので(ボークに)気をつけてほしいですね。」とおっしゃっていました。
タイブレークの重圧に加えて、風まで気にしなければならないなんて、どれだけ神経をすり減らす過酷な試合なのだろうと、呆然としてしまいました。
その中で捕手の堅守が光りました。
少しでも球をそらせば点が入ってしまいます。
解説の方も、何度も褒めていました。
同じ日、愛媛大会の準々決勝(松山商vs今治西)でもタイブレークとなり、こちらも延長11回までもつれました。
坊ちゃんスタジアムで行われた強豪校対決で、応援団の方のインタビューに大変感動しました。
松山商業と言えば、1996年の奇跡のバックホームが有名ですね。
実はあのとき

現場で生で観ていました。
今治西だと、1995年の藤井秀悟さんのご活躍をよく覚えています。
校名や都道府県名を聞くと、何かひとつはエピソードが思い浮かびますね。(笑)
石川大会では、決勝(小松大谷vs金沢)も準決勝(金沢vs星陵)もタイブレークで、星陵はその前の準々決勝でもタイブレークを経験していました。
この石川大会の決勝と同じ日に、各地でタイブレークとなった試合は8試合にのぼり、すべて決勝、うち3試合は延長11回まで行われていました。
大会の終盤に差し掛かると、対戦校の力が拮抗し、接戦となるのはわかりますが、それにしても多すぎるのではないかと驚いています。
秋田大会の決勝(金足農vs鹿角)も、先陣を切ってタイブレークでした。
ただ観戦した際は、かなりあっさりと、表を0点に抑え、裏の攻撃でバントとスクイズでサヨナラ勝ちという、セオリー通りの流れで決まったように感じていました。
ノーアウト一塁二塁から開始しますので

バント2回で簡単に1点入っちゃうね。
と考えてしまいますが、まず2回目でバント(スクイズ)を選ぶことができるのは、表を0点に抑えているからです。
タイブレークは点が入るように作られている制度ですので、0点に抑えるのは至難の業です。
このときは、とてもしつこく二塁に牽制をしてランナーを釘付けにし、フライや三振で抑えていました。
1点、2点は仕方がないと考えがちなタイブレークですが、絶対に点をやらないという戦い方でした。
そして簡単に決めた、送りバントとスクイズです。
本当は、全然簡単じゃなかったのですね。
その後のほかの試合では、最初の送りバントがなかなか決まらないという場面が何度もありました。
さすがかの有名な、サヨナラ2ランスクイズの学校です。
バントに絶対の自信があるから、送りバントとスクイズという作戦を選択することができたのですね。
セオリー通り、教科書通り、誰もが思いつく戦略ですが、それを選択し成功させることは、とても難しいことだったのだとわかりました。
最初の送りバントについては、簡単にやらせない、または、やりにくくさせるような守備を徹底している学校もありました。
タイブレークが導入され、各校で、研究やそのための練習がされているそうです。
送りバントをされても、必ず三塁でアウトにするような練習をしている学校もあるそうです。
攻撃側でも、解説の方が「自分なら100%送りバントですが打たせるようですね。」と驚いていた試合がありました。
タイブレークは、あまりにも苦しくて観ていられないことがあり

元に戻してほしいです…。
と思ったりもしましたが、こうやって数多くのパターンを観ると、色々な作戦が考えられて、まだまだ奥が深いなと、少しだけ面白く感じられるようになってきました。
近いうちに「逆転の報徳」のように「タイブレークの〇〇」という学校が出てくるかもしれません。
今だと、タイブレークと聞くと、昨年の大社が思い浮かびますね。
あまり多いと体と心が持ちそうにないので困りますが、甲子園での全国大会でも、数試合はタイブレークの戦いを観たいなと思います。
おわりに
今年の
を
で観戦しましたので、ご紹介しました。
各地の決勝が、あと2日間で行われます。
兵庫大会の決勝(報徳学園vs東洋大姫路)は、7月28日、ほっともっとフィールド神戸で10:00開始です。

プレイボール!