春ですね。動物たちの出産シーズンですね。
子牛が産まれました!
乳牛って減価償却資産ですよね!?
子牛の場合はどのように計算するのですか?
育成中の生物については、特別な処理が必要です。
生物の減価償却と、育成中の牛馬や未成熟の果樹等の取扱いについて解説します。
生物と取得価額
乳牛や果樹などは、減価償却資産の生物に該当します。
生物は
で、観賞用や興行用など、器具備品に該当するものは除きます。
減価償却資産である生物は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令の
で定められた耐用年数に従って減価償却を行います。
減価償却をするには取得価額も必要ですよね?
自分の牧場で産まれた子牛の取得価額はどうなるんですか?
取得価額は、購入した場合は購入額ですが、自分で育てた場合は別の方法で算出します。
まず、自己が成育させた牛馬等の場合は、以下の金額の合計額になります。
自己が成熟させた果樹等の場合は
の合計額が取得価額になります。
ポイントは、成育、成熟というところですね。
売上を生み出すことができるようになってから減価償却を始めます。
確かに、初産がまだの子牛はお乳が出ません。
搾乳できるようになったら減価償却資産になるのですね。
はい。
それまでは、育成中の生物として管理します。
成育、成熟とされる時期は、牛馬等については
果樹等については
とされていますが、判定が困難な場合には、下記の表で定められた成熟年齢を使用することもできます。
種類 | 用途・細目 | 成熟の年齢または樹齢 |
---|---|---|
牛 | 満2歳 | |
馬 | 農業使役用 | 満2歳 |
〃 | 小運搬使役用 | 満4歳 |
〃 | 繁殖用 | 満3歳 |
〃 | 種付用 | 満4歳 |
〃 | 競争用 | 満2歳 |
〃 | その他用 | 満2歳 |
綿羊 | 満2歳 | |
豚 | 種付用 | 満2歳 |
〃 | 繁殖用 | 満1歳 |
かんきつ樹 | 満15年 | |
りんご樹 | 満10年 | |
ぶどう樹 | 満6年 | |
梨樹 | 満8年 | |
桃樹 | 満5年 | |
桜桃樹 | 満8年 | |
びわ樹 | 満8年 | |
くり樹 | 満8年 | |
梅樹 | 満7年 | |
柿樹 | 満10年 | |
あんず樹 | 満7年 | |
すもも樹 | 満7年 | |
いちぢく樹 | 満5年 | |
茶樹 | 満8年 | |
オリーブ樹 | 満8年 | |
桑樹 | 根刈、中刈及び高刈 | 満3年 |
〃 | 立通 | 満7年 |
こりやなぎ | 満3年 | |
みつまた | 満4年 | |
こうぞ | 満3年 | |
ラミー | 満3年 | |
ホップ | 満3年 |
会計処理
育成中の処理
生物の育成のためにかかった金額は、その時の費用(または必要経費)ではなく、将来の減価償却資産の取得価額になります。
減価償却資産に計上した後で、減価償却費として費用(または必要経費)になります。
そのため、期中に費用(または必要経費)に計上している金額のうち、育成のための金額は、費用(または必要経費)から控除して、資産として仮勘定へ振り替えます。
牧草ロールを買って、母牛と子牛に一緒にあげた場合は、按分しないといけませんね。
おっしゃる通りです。
すでに成熟し減価償却資産となっている母牛のための飼料費等は、費用(または必要経費)です。
一方、育成中の子牛のための飼料費等は、費用(または必要経費)から控除しなければなりません。
なお、育成費用は、簡便法として
に限定することもできます。
仕訳は以下のようになります。
期中:飼料を300,000円で購入した。
(飼料費)300,000 | (現金預金)300,000 |
期末:当期に育成中の子牛にかかった金額は200,000円だった。
(育成仮勘定)200,000 | (育成費振替高)200,000 |
なお「育成仮勘定」については
など、別の勘定科目でも構いません。
個人所得税の青色申告決算書では、貸借対照表の「未成熟の果樹 育成中の牛馬等」と印字されている項目です。
「育成費振替高」についても
といった勘定科目でも構いません。
個人所得税の青色申告決算書では、損益計算書で「経費から差し引く果樹牛馬等の育成費用」と印字されている項目です。
育成仮勘定に育成のための金額が累計されていき、それが将来の取得価額になります。
成熟時の処理
成熟時の仕訳は以下のようになります。
子牛が成熟年齢に至り、搾乳を開始した。(育成仮勘定の残高は300,000円、当期中に子牛の育成にかかった金額は180,000円だった。)
(生物)480,000 | (育成仮勘定)300,000 |
(育成費振替高)180,000 |
「生物」は
などの勘定科目でも構いません。
個人所得税の青色申告決算書では、貸借対照表で「果樹・牛馬等」と印字されている項目です。
前回の育成仮勘定への振替後に発生した、当期の育成のための金額についても、忘れないように振り替えましょう。
おわりに
生物の減価償却と、育成中の牛馬や未成熟の果樹等の取扱いについて解説しました。
育成資産についても、減価償却資産と同様にきちんと記録して管理したいですね。