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設備投資のための税制措置:中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制

税金
税金

中小企業が設備投資を行った場合の、主な税制措置である

  • 中小企業投資促進税制
  • 中小企業経営強化税制

を例に、設備投資を行う際の留意点を解説します。

有利な税制は手続きが必要

中小企業が設備投資を行った場合の、主な税制措置として

  • 中小企業投資促進税制
  • 中小企業経営強化税制

の2つがあります。

まず

  • 中小企業投資促進税制

は、正式には

  • 中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除

といい、中小企業が機械等を取得したときに

  • 取得価額の30%の特別償却
    または
  • 取得価額の7%の税額控除(一定の法人のみ)

が受けられるという制度です。(以下「投資促進税制」とします。)

一方

  • 中小企業経営強化税制

は、正式には

  • 中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除

といい、中小企業が特定経営力向上設備等を取得したときに

  • 取得価額の全額の特別償却(即時償却)
    または
  • 取得価額の7%の税額控除(一定の法人は10%)

が受けられるという制度です。(以下「経営強化税制」とします。)

似たような制度ですが、少しずつ違いますね。

くま税理士
くま税理士

はい。どちらが得だと思いますか?

2つ目の「経営強化税制」ですか?

くま税理士
くま税理士

そうですね。

特別償却の限度額が大きいですし、税額控除の対象範囲も広いです。

例えば

  • 資本金:6,000万円

の中小企業が、いずれの税制でも適用対象となる

  • 機械装置:200万円

を取得した場合

  • 投資促進税制:特別償却60万円(税額控除の選択は不可)
  • 経営強化税制:特別償却200万円または税額控除14万円(法人税額の20%が限度)

となります。

なお、特別償却は、減価償却を前倒しして、課税の繰延ができる制度です。

一方、税額控除は、課税が減免(税金が減額)される制度です。

課税の繰延については、以下の記事をご参照ください。

話を戻して、上記のように、適用できる税制が複数ある場合は、できるだけ有利なものを選びたいところです。

ただし、経営強化税制を適用したい場合は

くま税理士
くま税理士

事前の申請や証明書等の取得が必要です。

まず、原則として、設備の取得前に

  • 経営力向上計画

の申請をし、その認定を受ける必要があります。

申請から認定までの標準処理期間は30日で、その認定後に設備を取得する必要があります。

例外として、設備取得後に申請をすることもできますが、取得後60日以内に申請した上で、事業年度末までに認定を受けておく必要があります。

決算間際に慌てて取得しても間に合いませんね。

くま税理士
くま税理士

そうですね。事前の準備が大切です。

また、経営強化税制は

  • A類型:生産性向上設備
  • B類型:収益力強化設備
  • C類型:デジタル化設備
  • D類型:経営資源集約化に資する設備

といった類型に分かれており、このうち

  • A類型:生産性向上設備

の場合は

  • 工業会等からの証明書

それ以外の

  • B類型:収益力強化設備
  • C類型:デジタル化設備
  • D類型:経営資源集約化に資する設備

の場合は

  • 経済産業局からの確認書

を取得する必要があります。

これらの証明書や確認書の取得期間も、加味しておかなければなりません。

また、複数の類型に該当する場合は、なるべく手続きが簡素なものを選択したいところです。

そういった選択も、時間に余裕があってこそ検討することができます。

より有利な税制を、手続きの負担をなるべく軽減した上で適用するには、事前にしっかりと計画をたて、時間に余裕を持って設備投資を行うことが必要です。

適用対象資産の確認は念入りに

この2つの税制は、対象資産も異なります。

  • 投資促進税制

で対象となるのは

  • 機械装置(160万円以上)
  • 一定の工具(120万円以上)
  • ソフトウェア(70万円以上)
  • 普通貨物自動車、内航船舶

などです。

一方

  • 経営強化税制

で対象となるのは

  • 機械装置(160万円以上)
  • 工具、器具備品(30万円以上)
  • 建物附属設備(60万円以上)
  • ソフトウェア(70万円以上)

などです。

業種にもよりますが、運送業や運輸業を除くと、概ね「経営強化税制」の方が、対象資産の範囲は広いと言えます。

器具備品や建物付属設備についての適用可否は、大きな違いですね。

機械装置であれば、やむを得ない事情で計画立てて取得することができず、「経営強化税制」が適用できなかったとしても、決算や申告の段階で「投資促進税制」の適用を検討することができます。

「経営強化税制」よりも効果は低くなりますが、それでも適用できないよりは良いです。

けれど、器具備品や建物附属設備の場合は、そもそも対象資産ではありませんので、検討の余地すらありません。

万事休すです。

また、「経営強化税制」の対象資産については、前項でご紹介した

  • A類型:生産性向上設備
  • B類型:収益力強化設備
  • C類型:デジタル化設備
  • D類型:経営資源集約化に資する設備

の各類型ごとに、細かい要件が決められています。

例えば

  • A類型:生産性向上設備

では、設備の種類ごとに、販売開始時期が

  • 機械装置:10年以内
  • 工具:5年以内
  • 器具備品:6年以内
  • 建物附属設備:14年以内
  • ソフトウェア:5年以内

といったように定められています。

新しくないとダメってことですね。

くま税理士
くま税理士

はい。生産性が向上する設備でなければなりません。

最新モデルである必要はありませんが、一定期間内に販売されたモデルで、生産効率等が向上している設備でなければ適用対象となりません。

もちろん設備投資は、税金のためではなく、事業のために行うものですので、事業活動に最適な設備を選択すべきです。

その上で、税制面でも優遇措置が受けられるような設備を、じっくり選択できるといいですね。

現在使用中の設備の、日々の点検も大切です。

機械を使う技術者の方が

まだまだ使えます。

と言っていても、買い替えや交換までに、計画を立てたり準備をしたりする時間を考えると、全然「まだまだ」ではないかもしれません。

事業活動に欠かせない設備が対象となる税制については、定期的に確認しておきたいですね。

処理の選択による影響

前述のように

  • 投資促進税制

では、資本金3,000万円以下であれば

  • 特別償却または税額控除

のどちらかを、選択適用することができます。

また

  • 経営強化税制

では、対象となる中小企業のすべてが、選択適用が可能です。

  • 特別償却は課税の繰延
  • 税額控除は課税の減免

ですので

税額控除の方が得ですよね?

くま税理士
くま税理士

そうとも限りません。

まず、税額控除には

  • 法人税額の20%まで

という限度額があります。

複数の特例を適用する場合は、合計でこの限度額となる場合もあります。

また、税額控除は

  • 設立したてでまだあまり利益が出ていない
  • 繰越欠損金が残っている

といった事情などで、元々の税額が少ない場合は効果が薄いです。

1年間繰り越すこともできますが、翌年度以降の予測をした上で判断する必要があります。

一方、特別償却は、課税の繰延ですので、減価償却費の合計でみると税額が減額されるわけではありませんが、早期の投資回収という面で大きな影響を及ぼします。

特に、経営強化税制の初年度一括償却は、事業の成長を勢いづけるという意味では効果的です。

そして、設備投資の多寡にもよりますが、こちらもまた、その年度の状況だけでなく、翌年度以降のことも考慮して選択を検討する必要があります。

法人税は所得(利益)に課される税金ですので

  • 税金が少ない=利益が少ない

ということです。

目先の税額に囚われて、事業の成長の勢いを阻害してしまっていたら本末転倒です。

設備投資の税制適用は、翌年度以降の経営成績や税額の予測、事業計画も含めて、最適な選択をしたいですね。

おわりに

中小企業が設備投資を行った場合の、主な税制措置である

  • 中小企業投資促進税制
  • 中小企業経営強化税制

  • 手続き
  • 適用対象資産
  • 特別償却と税額控除

を例に

  • 設備投資前の準備
  • 設備投資後の計画

の重要性を解説しました。

事業活動に最適な設備を選択し、適切な時期に取得した上で、目的に合った税制を上手に活用したいですね。

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