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過小資本税制(国外支配株主等に係る負債の利子等の課税の特例)の概要と計算例

税金
税金

外国の親会社から多額の借入をしています。

くま税理士
くま税理士

支払利子の一部が損金不算入となるかもしれません。

外国の親会社から多額の借入がある場合等に検討が必要な

  • 国外支配株主等に係る負債の利子等の課税の特例

通称

  • 過小資本税制

について解説し、計算例を紹介します。

過小資本税制

概要

過小資本税制は、外国からの負債が過大である場合に、その支払利子の損金算入を制限する規定です。

会社は

  • 出資
    または
  • 借入

により資金調達をし

  • 出資の場合:配当
  • 借入の場合:利子

を支払います。

このうち、配当は資本等取引ですので、損益に影響しません。

一方、利子は損金の額に算入されます。

両者には

  • 配当:損金不算入
  • 利子:損金算入

という違いがあります。

これを利用すると、本来は配当として損金の額に算入されない金額を、利子として損金の額に算入することで、税負担を軽減したり、税率の低い国へ利益を移転したりすることができてしまいます。

この租税回避行為を防止するため、利子の損金算入を制限する規定があります。

そのうちのひとつが

  • 国外支配株主等に係る負債の利子等の課税の特例

通称

  • 過小資本税制

です。

摘要対象

対象となるのは

  • 国外支配株主等

と呼ばれる外国法人や非居住者に対する負債の利子です。

親会社を始め、兄弟会社も含まれます。

株式の保有割合としては50%以上とされていますが、人事、取引、資金の関係によって実質的に支配している場合も含まれます。

また、これらの国外支配株主等が、第三者を通じて資金を供与したり債務を保証したりした場合の、その第三者である

  • 資金供与者等

に対する負債の利子も対象です。

適用要件

損金算入が制限されるのは、以下のいずれにも当てはまる場合です。

  • 国外支配株主等・資金供与者等に対する負債の平均負債残高
     > 国外支配株主等の資本持分の3倍
  • 総負債の平均負債残高 > 自己資本の3倍
※3倍という倍数は、妥当と認められる他の倍数で計算することができる場合もあります。

そして支払った利子のうち、損金不算入となる金額は、この3倍を超える部分に対応する金額です。

なお、利子の損金算入を制限する規定として、過小資本税制以外に

  • 過大支払利子税制
  • 移転価格税制

があります。

過小資本税制と過大支払利子税制とは

  • 不利選択

をすることとなっていますので、いずれにも該当する場合は

  • 損金不算入額の大きい方

を適用しなければなりません。

また、支払利子について移転価格税制の適用があった場合は、その適用後の金額で、さらに過小資本税制または過大支払税制の適用有無を判定しますので、重複適用となる場合もあります。

計算例

前提条件

  • A社(外国法人)は当社の発行済株式の60%を保有
  • 自己資本:100,000,000円
  • 総負債:500,000,000円
  • 支払利子等(総負債):30,000,000円
  • 借入金(A社):300,000,000円
  • 支払利子(A社):16,500,000円

判定

国外支配株主等に対する負債

  • 300,000,000 > 100,000,000 × 60% × 3

総負債

  • 500,000,000 > 100,000,000 × 3

損金不算入額

超過額

国外支配株主等に対する負債
  • 300,000,000 - 100,000,000 × 60% × 3 = 120,000,000
総負債
  • 500,000,000 - 100,000,000 × 3 = 200,000,000
超過額
  • 120,000,000 > 200,000,000 ∴ 120,000,000

損金不算入額

  • 16,500,000 × 120,000,000 / 300,000,000 = 6,600,000(加算・社外流出)

おわりに

支払利子の損金算入を制限する既定のひとつである

  • 国外支配株主等に係る負債の利子等の課税の特例

通称

  • 過小資本税制

の解説と計算例の紹介をしました。

利子を利用した租税回避行為については、各国で制限が強化されています。

資金調達または資金提供をする場合は、借入だけでなく出資も合わせて検討し、適切な比率を維持したいですね。

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