PR

法人の配当と源泉所得税:受取配当等の益金不算入・所得税額控除・強制徴収・徴収不要(改正)

税金
税金

法人の配当と源泉所得税について

  • 所得税額控除の適用時期(受取配当等の益金不算入との関係)
  • 源泉所得税を強制徴収された場合
  • 源泉徴収が不要となる場合(改正:令和5年10月1日以後)

の3つを取り上げて解説します。

受取配当等の益金不算入と所得税額控除

計上時期の原則と特例

剰余金の配当と源泉所得税は、それぞれ以下の時期に計上することとされています。

剰余金の配当の計上時期
  • 原則:配当の効力を生ずる日の属する事業年度
  • 特例:支払を受けた日の属する事業年度(継続適用)
源泉所得税の計上時期
  • 原則:源泉徴収される事業年度
  • 特例:配当を未収の収益として計上した事業年度

配当の効力を生ずる日に支払いがあれば、同時に源泉徴収されるため事業年度が異なることはありませんが、支払いが事業年度をまたぐ場合があります。

その際の会計処理と税務処理を、組み合わせごとに確認していきましょう。

X1年度に配当の効力が発生し、X2年度に配当の支払があったものとします。

  • X1年度
    決議
  • 効力発生
  • X2年度
    支払

配当(原則)- 源泉所得税(原則)

  • 剰余金の配当:効力の生ずる日の属する事業年度(原則)
  • 源泉所得税:源泉徴収される事業年度(原則)

とする場合、効力の生ずる日の属する事業年度において、会計上は配当を収益計上していないため、税務上は計上もれの加算調整を行った上で、受取配当等の益金不算入の規定を適用します。

翌事業年度においては、会計上で収益計上しますので、税務上は認容にて減算調整をし、費用計上した源泉所得税については、加算調整した上で所得税額控除を適用します。

X1年度

会計処理

仕訳なし

税務処理
  • 未収配当計上もれ(加算・留保)
  • 受取配当等の益金不算入額(減算・課税外収入※)

X2年度

会計処理
(現金預金)××(受取配当金)××
(租税公課)××
税務処理
  • 前期未収配当計上もれ認容(減算・留保)
  • 法人税額から控除される所得税額(加算・社外流出その他)
  • 所得税額控除

配当(原則)- 源泉所得税(特例)

  • 剰余金の配当:効力の生ずる日の属する事業年度(原則)
  • 源泉所得税:配当を未収の収益として計上した事業年度(特例)

とする場合、効力の生ずる日の属する事業年度において、会計上、配当の未収金経理をしていますので、税務上も、同事業年度に受取配当等の益金不算入の規定を適用し、費用計上した源泉所得税については、加算調整した上で所得税額控除を適用します。

翌事業年度においては、支払日に未収金を振り替える処理のみで、収益や費用の計上はありませんので、税務調整はありません。

X1年度

会計処理
(未収金)××(受取配当金)××
(租税公課)××
税務処理
  • 受取配当等の益金不算入額(減算・課税外収入※)
  • 法人税額から控除される所得税額(加算・社外流出その他)
  • 所得税額控除

X2年度

会計処理
(現金預金)××(未収金)××
税務処理

調整なし

配当(特例)- 源泉所得税(原則)

  • 剰余金の配当:支払を受けた日の属する事業年度(特例)
  • 源泉所得税:源泉徴収される事業年度(原則)

とする場合、支払を受けた日の属する事業年度において、会計上、配当の収益計上をし、源泉徴収されるのは支払日ですので、税務上も、同事業年度に受取配当等の益金不算入の規定を適用し、費用計上した源泉所得税については、加算調整した上で所得税額控除を適用します。

X1年度

会計処理

仕訳なし

税務処理

調整なし

X2年度

会計処理
(現金預金)××(受取配当金)××
(租税公課)××
税務処理
  • 受取配当等の益金不算入額(減算・課税外収入※)
  • 法人税額から控除される所得税額(加算・社外流出その他)
  • 所得税額控除

配当の源泉所得税を強制徴収された場合

法人が配当を支払う場合には、源泉徴収が必要です。

これを失念し、配当の全額を支払ってしまった場合には、その支払った金額を源泉徴収後の金額として計算した所得税が徴収されます。

例えば、配当が200,000円で、20%の源泉徴収が必要な場合(復興特別所得税を除外します。)は

  • 源泉所得税:40,000円

で、本来支払うのは160,000円ですが、200,000円を支払ってしまった場合には、

  • 配当:250,000円(200,000÷(1-0.2)=250,000)
  • 源泉所得税:50,000円

だったことなります。

そして、この徴収された50,000円について

  • (租税公課)50,000(現金預金)50,000

のように損金経理した場合には、配当の追加支払いがされたものとして取り扱われます。

この場合、配当の支払は資本等取引ですので

  • 認定配当否認 50,000(加算・社外流出その他)

の税務調整が必要です。

配当の源泉徴収が不要となる場合(改正:令和5年10月1日以後)

令和4年度の税制改正で、一定の支配関係があるグループ内の配当について、源泉徴収制度の見直しが行われました。

受取配当等の益金不算入の規定では、持分割合や保有期間に応じて以下のように区分されています。

株式等の区分:受取配当等の益金不算入
  • 完全子法人株式等:ずっと(※)100%
  • 関連法人株式等:ずっと(※)3分の1超
  • その他の株式等:上記および下記以外
  • 非支配目的株式等:基準日に5%以下

(※)配当等の額の計算期間の初日から末日まで

上にいくほど益金不算入額が多く、完全子法人株式等では配当の全額が益金不算入とできます。

非支配目的株式等では、益金不算入額は配当の20%です。

これらのうち、完全子法人株式等と関連法人株式等において、多額の益金不算入と所得税額控除の適用により還付金が発生する可能性が高い状態になっていることについて、会計検査院の指摘があったため今回の見直しとなりました。

令和5年10月1日以後、以下の配当は源泉徴収が不要となります。

源泉徴収が不要となる配当等
  • 完全子法人株式等(株式等保有割合 100%)に該当する株式等に係る配当等
  • 基準日において発行済株式等の3分の1超を有している場合のその株式等に係る配当等

ひとつめは、改正案によると、受取配当等の益金不算入の規定による完全子法人株式等と一致する見込みです。

ふたつめは関連法人株式等に似ていますが少し違いますね。

くま税理士
くま税理士

そうですね。

保有期間の定めがなく、基準日のみで判定するようになっていますね。

これは、源泉徴収をする側(支払う側)が、継続して持分割合を把握するのは困難だと考えられるためです。

従って、受取配当等の益金不算入の規定において、保有期間の要件を満たさず関連法人株式等に該当しない株式等(その他の株式等)に係る配当についても、基準日の現況によっては源泉徴収が不要となることも考えられます。

それぞれ適切に区分し、混同しないようにしたいですね。

おわりに

法人の配当と源泉所得税について

  • 所得税額控除の適用時期(受取配当等の益金不算入との関係)
  • 源泉所得税を強制徴収された場合
  • 源泉徴収が不要となる場合(改正:令和5年10月1日以後)

の3つを取り上げて解説しました。

法人は源泉徴収義務者です。

配当に限らず何かを支払う際には、源泉徴収の要否を確認し、必要な場合は期限内に確実に納付しましょう。

タイトルとURLをコピーしました