PR

取引相場のない株式(原則的評価方式):会社規模の判定と特定の評価会社

税金
税金

オーナー企業の経営者です。
相続や事業承継に備えて準備をしておきたいです。

くま税理士
くま税理士

株式の評価が必要ですね。

上場していない会社の株式については

  • 非上場株式
  • 自社株

などと呼ばれることもありますが、財産評価の場面では

  • 取引相場のない株式

といいます。

この取引相場のない株式は

  • 原則的評価方式
  • 特例的評価方式

のいずれかで評価しますが、オーナー企業の大株主やその親族のように

  • 支配目的で多数の株式を所有

する者が納税義務者となる場合には

  • 原則的評価方式

によって評価することになります。

なお、親族で株式の大半を所有している場合であっても、その分散状況や取得者(納税義務者)によっては

  • 配当目的で少数の株式を所有

する少数株主と判定され

  • 特例的評価方式(配当還元方式)

による評価となることもあります。

今回は、オーナー企業の相続や事業承継を前提とした

  • 原則的評価方式

による評価の、はじめの一歩である

  • 会社規模の判定
  • 特定の評価会社

について解説します。

まずは、評価方法(計算式)の決定に影響を及ぼす各要素を、確認しておきましょう。

一般の評価会社:会社規模の判定

取引相場のない株式の評価額は

  • 類似業種比準価額
  • 純資産価額

の2つの金額を使って計算します。

類似業種比準価額とは、上場している同業他社の株価を基に一定の割合を考慮して算出した金額です。

純資産価額とは、相続税評価額に評価替えした資産の合計額から負債等の合計額を差し引いた金額で、帳簿価額とは異なります。

この2つの金額を、会社の規模に応じて、異なる割合で組み合わせて計算します。

会社規模の分類は

  • 大会社
  • 中会社(大)
  • 中会社(中)
  • 中会社(小)
  • 小会社

の5つです。

大会社の場合は

  • 類似業種比準価額
  • 純資産価額
    のいずれか低い方

になります。

一般に類似業種比準価額の方が低くなることが多く、2種類の金額を比較するだけのこの方式を

  • 類似業種比準方式

といいます。

中会社の計算方法は

  • 併用方式

と呼ばれ

  • 類似業種比準方式による評価額 × Lの割合 + 純資産価額 ×( 1 - Lの割合)
※議決権割合が50%以下の場合は「純資産価額×80/100」

で算出します。

Lの割合は

  • 中会社(大):0.90
  • 中会社(中):0.75
  • 中会社(小):0.60

です。

小会社の場合は

  • 純資産価額
  • 類似業種比準価額 × 0.50 + 純資産価額 ×( 1 - 0.50 )
    のいずれか低い方
※議決権割合が50%以下の場合は「純資産価額×80/100」

で算出し、この計算方法を

  • 純資産価額方式

といいます。

以上をまとめると

  • 類似業種比準価額 < 純資産価額

であると仮定した場合、以下のようになります。

[類]類似業種比準価額
[純]純資産価額
大会社[類]類似業種比準方式
中会社(大)[類]× 0.90 +[純]× 0.10併用方式
中会社(中)[類]× 0.75 +[純]× 0.25併用方式
中会社(小)[類]× 0.60 +[純]× 0.40併用方式
小会社[類]× 0.50 +[純]× 0.50純資産価額方式

上の方に分類された方が得ってことですか?

くま税理士
くま税理士

おっしゃる通りです。

低い方の金額(類似業種比準価額)の割合が多い方が、評価額は低くなりますね。

たとえば

  • 類似業種比準価額:2,200円
  • 純資産価額:4,900円

であった場合

  • 大会社:2,200円
  • 中会社(大):2,200 × 0.90 + 4,900 × 0.10 = 2,470円
  • 中会社(中):2,200 × 0.75 + 4,900 × 0.25 = 2,875円
  • 中会社(小):2,200 × 0.60 + 4,900 × 0.40 = 3,280円
  • 小会社:2,200 × 0.50 + 4,900 × 0.50 = 3,550円

となります。

でも会社規模の分類って、最初から決められているんじゃないんですか?

くま税理士
くま税理士

いいえ。あなた(の会社)次第です!

会社規模は、以下のような書類に沿って判定します。

第1表の2

判定に使われる要素は

  • 従業員数
  • 総資産価額
  • 取引金額

の3つです。

従業員は

  • 直前期末以前1年間における従業員数

で、70人以上であれば大会社となり、ここで判定は終了です。

70人未満であれば、総資産価額と組み合わせて判定します。

総資産価額は

  • 直前期末の総資産価額(帳簿価額)

です。

業種に応じて基準が異なり、従業員数と合わせて少ない方で判定します。

取引金額は

  • 直前期末以前1年間の取引金額(売上高)

です。

こちらも業種に応じて基準が異なり、取引金額と従業員の判定結果と合わせて、多い方で判定します。

たとえば

  • 製造業
  • 従業員数:30人
  • 総資産価額:2億円
  • 取引金額:5億円

だった場合、以下のようになります。

第1表の2記載例

短時間のアルバイトさんも従業員に数えていいのですか?

くま税理士
くま税理士

従業員の数え方には決まりがあります。

従業員のうち、1人として数えることができるのは

  • 継続勤務従業員

と呼ばれる

  • 直前期末以前1年間
  • 週30時間以上

の勤務をしている従業員のみです。

継続勤務従業員に該当しない、短期間や短時間勤務の従業員については、労働時間で換算して人数を算出します。

具体的には、年間1,800時間で1人分になります。

たとえば

  • 継続勤務従業員:30人
  • 上記以外の従業員:50人(70,200時間)

だった場合は、従業員が80人で大会社に該当するように思いますが、実際には

  • 30 + 70,200 / 1,800 = 69人 < 70人

で、中会社になります。

新入社員や退職者の状況、各従業員の労働時間が少し違うだけで、会社規模の判定が変わることがあります。

総資産価額(帳簿価額)と取引金額(売上高)の金額基準はもちろん、従業員の就業状況についても、賃金台帳やタイムカードなどを正確に管理して、こまめに確認しておけるといいですね。

特定の評価会社

営業状態や資産の保有状況が特殊な会社については、類似業種比準価額を用いて評価することが適当でないため

  • 特定の評価会社

として、原則として純資産価額で評価することになります。

評価額が高くなるということですね。

くま税理士
くま税理士

はい。

一般の評価会社より不利になることが多いです。

特定の評価会社となるのは、営業状態が特殊な状況である


  • 清算中の会社
  • 開業前の会社
  • 休業中の会社
  • 開業後3年未満の会社

資産の保有状況が特殊である

  • 土地保有特定会社
  • 株式保有特定会社

そして、継続的に営業はしているけれど、財政状態や経営成績に問題があるとされる

  • 比準要素数0の会社
  • 比準要素数1の会社

があります。

第2表

比準要素とは、直前期末の1株当たりの

  • 配当金額
  • 利益金額
  • 純資産価額

のことで、類似業種比準価額の算出に使われる金額です。

この3要素すべてがゼロ(またはマイナス)の場合は

  • 比準要素数0の会社

となり、会社規模に関わらず

  • 純資産価額
※議決権割合が50%以下の場合は「純資産価額×80/100」

で評価することになります。

また、すべてがゼロ(マイナス)とまではいかなくとも

  • いずれか2つがゼロ(またはマイナス)

である場合は

  • 比準要素数1の会社

に該当する可能性があります。

前期のみの金額で判定すると、たまたまその事業年度だけのことだったかもしれません。

そこでさらに遡って、2期前と3期前の金額や平均額も考慮して、重ねて判定します。

その結果

  • 比準要素数1の会社

に該当することとなってしまった場合は、会社規模に関わらず

  • 純資産価額
  • 類似業種比準価額 × 0.25 + 純資産価額 × 0.75
    のいずれか低い方
※議決権割合が50%以下の場合は「純資産価額×80/100」

で評価することになります。

小会社より損ですね。

くま税理士
くま税理士

そうですね。

類似業種比準価額の割合が、小会社よりもさらに低いですね。

オーナー企業の場合、配当をしていないことが多く、赤字が続くと

  • 比準要素数1の会社

に該当してしまうことがあります。

何期も連続して各要素がゼロ(マイナス)とならないように、事業の計画等を見直して、事前に対策を講じておきたいところです。

利益を出し、余裕があれば配当をして、特定の評価会社(比準要素数1の会社)となることだけは避けたいですね。

おわりに

取引相場のない株式の

  • 原則的評価方式

のうち、主に

  • 一般の評価会社(会社規模の判定)
  • 特定の評価会社(比準要素数1の会社)

について解説しました。

評価額算出のメインである

  • 類似業種比準価額
  • 純資産価額

についても、それぞれ様々な要素や注意点、そして複雑な計算式がありますが、いずれにしても、相続発生前後や事業承継の直前になってから

思っていたより評価額が高いかも!

となっても、できることは限られます。

取引相場のない株式の評価は難解ですが、オーナー企業の経営者や親族であれば、将来の相続や事業承継に備えて、なるべく早く準備を始めておきたいところです。

まずは、どのような要素が評価方法に影響を及ぼすのかを知り、少しずつ理解を深めていけるといいですね。

タイトルとURLをコピーしました