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完全支配関係がある法人の間の取引の損益(譲渡損益調整資産):グループ法人間で事業年度が異なる場合

税金
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グループ法人間で一定の資産を譲渡した場合、譲渡法人では譲渡時に

  • 譲渡損益の繰延

を行い、譲受法人において

  • 譲渡、償却、評価換え、貸倒れ、除却等
  • 完全支配関係がなくなった

といった事由が発生した際に、その繰り延べた譲渡損益を改めて認識します。(「戻入」「再計上」「損益の実現」といった言い方をします。)

この譲渡損益の戻入をする際に

  • グループ法人間で事業年度が異なる場合

には、その処理を行う事業年度に注意が必要です。

繰延と戻入

まず、一連の処理を例を挙げて解説します。

グループ法人:A社、B社、C社
譲渡法人:B社(内国普通法人)
譲受法人:C社(内国普通法人)
取引1:B社がC社へ、譲渡損益調整資産(簿価1,500万円)を1,800万円で譲渡
取引2:C社が他社へ、取引1の譲渡損益調整資産を譲渡

取引1(B社がC社へ、譲渡損益調整資産(簿価1,500万円)を1,800万円で譲渡)のときの、B社の会計処理と税務処理は、以下のようになります。

会計処理
(現金預金)1,800(固定資産)1,500
(譲渡益)300
税務処理
  • 譲渡損益調整勘定繰入額 300 (減算・留保)
※別の調整名の例:完全支配関係がある法人間の損益の減算調整額

この規定「完全支配関係がある法人の間の取引の損益」の条文は

  • 譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額は、損金の額又は益金の額に算入する。

という文言です。

  • 譲渡利益額と損金の額
  • 譲渡損失額と益金の額

が対応していて、一瞬

ん!?

となった方もいらっしゃるかもしれません。

くま税理士
くま税理士

「相当する金額」に着目ですね。

譲渡損益調整資産の損益をなかったことにする(不算入とする)のではなく、相当する金額を加減算して調整するということです。

あくまでも損益を繰り延べるだけですので、留保項目として別表五に残り、戻入(再計上)によって消却される日を待つことになります。

その後、C社が、その譲渡損益調整資産を他社へ譲渡した場合、B社の税務処理は、以下のようになります。

税務処理
  • 譲渡損益調整勘定戻入額 300 (加算・留保)
※別の調整名の例:完全支配関係がある法人間の損益の加算調整額

これによって、当初の譲渡損益が認識されることになります。

事業年度が異なる場合

譲渡法人と譲受法人の事業年度が異なる場合、譲渡法人で戻入の処理を行う事業年度は

  • 再譲渡した日の属する譲受法人の事業年度終了の日の属する事業年度

です。

???

くま税理士
くま税理士

わかりにくいですよね。

線表にすると一目瞭然です。

たとえば

  • B社(譲渡法人)の事業年度:1月1日から12月31日
  • C社(譲受法人)の事業年度:4月1日から翌3月31日

で、C社が他社に譲渡したのが、X1年7月1日だとします。

このとき、B社で戻入の処理をする事業年度は

  • 再譲渡した日(X1年7月1日)の属するC社の事業年度(X1年4月1日からX2年3月31日)終了の日(X2年3月31日)の属する事業年度

です。

従って

  • X2年1月1日からX2年12月31日

の事業年度に戻入の処理をすることになります。

情報の共有化が進み、特にグループ内では、他社の取引をリアルタイムで把握することも難しくなくなりました。

上記の例ですと、譲渡したX1年7月の時点でその取引を知り、X1年度(X1年1月1日からX1年12月31日)の申告の際に、誤って戻入処理をしてしまいそうですよね。

戻入の事由が発生する取引を行うのは譲受法人ですが、繰り延べた損益を実現する処理をするのは譲渡法人です。

従って、譲受法人で

  • 譲渡、償却、評価換え、貸倒れ、除却等
  • 完全支配関係がなくなった

という事由が発生したときは、譲渡法人へ通知する義務があります。

そして、事由は譲渡だけではありませんので、多くの場合は、自社(譲受法人)の事業年度が終わったときに1年分をまとめて通知することになります。

そのため、譲渡法人で戻入を行う事業年度は、譲受法人の事業年度終了の日に合わせたものになっています。

譲渡法人と譲受法人の事業年度が異なる場合は、戻入の処理を行う事業年度に注意が必要です。

おわりに

グループ法人税制のひとつである

  • 完全支配関係がある法人の間の取引の損益(譲渡損益調整資産)

について

  • 譲渡法人と譲受法人の事業年度が異なる場合

の解説をしました。

グループ法人税制は、会計には存在しないものですので、確定決算型であっても税務調整が必要となります。

事務負担等を考慮し、この規定に該当する譲渡損益調整資産は、かなり限定されたものになっていますが、裏を返せば、該当する場合は税額への影響が大きくなる可能性が高いです。

損益を実現する事業年度は、前もって正確に把握しておきたいですね。

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