グループ法人間で一定の資産を譲渡した場合、譲渡法人では譲渡時に
を行い、譲受法人において
といった事由が発生した際に、その繰り延べた譲渡損益を改めて認識します。(「戻入」「再計上」「損益の実現」といった言い方をします。)
この譲渡損益の戻入をする際に
には、その処理を行う事業年度に注意が必要です。
繰延と戻入
まず、一連の処理を例を挙げて解説します。
グループ法人:A社、B社、C社
譲渡法人:B社(内国普通法人)
譲受法人:C社(内国普通法人)
取引1:B社がC社へ、譲渡損益調整資産(簿価1,500万円)を1,800万円で譲渡
取引2:C社が他社へ、取引1の譲渡損益調整資産を譲渡
取引1(B社がC社へ、譲渡損益調整資産(簿価1,500万円)を1,800万円で譲渡)のときの、B社の会計処理と税務処理は、以下のようになります。
(現金預金)1,800 | (固定資産)1,500 |
(譲渡益)300 |
この規定「完全支配関係がある法人の間の取引の損益」の条文は
という文言です。
が対応していて、一瞬
ん!?
となった方もいらっしゃるかもしれません。
「相当する金額」に着目ですね。
譲渡損益調整資産の損益をなかったことにする(不算入とする)のではなく、相当する金額を加減算して調整するということです。
あくまでも損益を繰り延べるだけですので、留保項目として別表五に残り、戻入(再計上)によって消却される日を待つことになります。
その後、C社が、その譲渡損益調整資産を他社へ譲渡した場合、B社の税務処理は、以下のようになります。
これによって、当初の譲渡損益が認識されることになります。
事業年度が異なる場合
譲渡法人と譲受法人の事業年度が異なる場合、譲渡法人で戻入の処理を行う事業年度は
です。
???
わかりにくいですよね。
線表にすると一目瞭然です。
たとえば
で、C社が他社に譲渡したのが、X1年7月1日だとします。
このとき、B社で戻入の処理をする事業年度は
です。
従って
の事業年度に戻入の処理をすることになります。
情報の共有化が進み、特にグループ内では、他社の取引をリアルタイムで把握することも難しくなくなりました。
上記の例ですと、譲渡したX1年7月の時点でその取引を知り、X1年度(X1年1月1日からX1年12月31日)の申告の際に、誤って戻入処理をしてしまいそうですよね。
戻入の事由が発生する取引を行うのは譲受法人ですが、繰り延べた損益を実現する処理をするのは譲渡法人です。
従って、譲受法人で
という事由が発生したときは、譲渡法人へ通知する義務があります。
そして、事由は譲渡だけではありませんので、多くの場合は、自社(譲受法人)の事業年度が終わったときに1年分をまとめて通知することになります。
そのため、譲渡法人で戻入を行う事業年度は、譲受法人の事業年度終了の日に合わせたものになっています。
譲渡法人と譲受法人の事業年度が異なる場合は、戻入の処理を行う事業年度に注意が必要です。
おわりに
グループ法人税制のひとつである
について
の解説をしました。
グループ法人税制は、会計には存在しないものですので、確定決算型であっても税務調整が必要となります。
事務負担等を考慮し、この規定に該当する譲渡損益調整資産は、かなり限定されたものになっていますが、裏を返せば、該当する場合は税額への影響が大きくなる可能性が高いです。
損益を実現する事業年度は、前もって正確に把握しておきたいですね。