
外国に住んでいて、日本の持ち家を貸しています。

日本に住んでいて、外国の持ち家を売りました。
国内外の不動産に関する所得は
で課税の範囲が異なります。
納税義務者である
の区分別に、国内外の不動産による
の取扱いを解説します。
誰:納税義務者の区分
まずは
の収入なのかを確認しましょう。
一般に
と言います。
納税義務者の区分は、まず
の2つに分かれます。
は
です。
逆に
は、その裏返しで
です。
ちなみに、国家公務員や地方公務員は、日本に住所がない期間も、日本に住所があるものとみなされます。
居住者はさらに
の2つに分かれます。
は
です。
その
は
で、日本に住所があったり、住んでいたりした期間が
です。

合計と言われても…。

すぐにはわからないですよね。
非永住者は
ですので、外国人を想定した区分です。
そして
といった場合は、すぐに年数がわかりますが、行ったり来たりしている場合は、頭の中だけで考えても、正確に年数を合計することは難しいですね。
そのため
という書類が用意されています。
非永住者だった期間がある居住者が、確定申告をする際に使用する書類で、英訳も付いています。

確認のためにも、まずは
を記入してみるとよいですね。
どこ:所得の源泉地
今度は
で発生した収入なのかを確認しましょう。
不動産に関する収入といえば
ですね。
それぞれ
として利益(所得)を計算しますが、動かすことができない土地や建物など(=不動産)が発生源となりますので、場所の特定は容易です。
所得が発生する場所を
と言いますが、不動産に関する所得の場合は
が源泉地となります。
日本にある不動産なら日本(国内)、外国にある不動産なら外国(国外)が源泉地で、それぞれ
になります。
課税所得の範囲と留意点
それでは
を組み合わせて
を確認していきましょう。
一般に
と言います。
居住者(永住者)
居住者(永住者)については
が課税対象です。
という言い方をすることもありますね。
従って、不動産の所在地に関わらず
のいずれについても、これらから発生した所得は、課税所得の範囲に含まれます。

外国通貨で支払を受けた場合はどうなりますか?

日本円に換算して計算します。
外貨建で取引をした場合は、原則として
により円換算した金額で計算します。
ただし、継続適用を要件として
も可能です。

外国でも申告をするときはどうなりますか?

二重課税となる場合は、外国税額控除が適用できます。
外国の不動産から発生した所得について、日本と外国の両方で、それぞれ申告納付をする場合
になります。
これを防止するため、日本では
の規定により、外国税額のうち一定額を、日本の税額から控除することができます。
なお、日本と外国で課税時期が一致しないことがあるため、外国税額控除には
という制度があり、控除しきれなかった金額等は、3年間繰り越すことができます。
また、不動産所得(賃貸収入)の場合は、外国税額を
することもできますが、他の所得を含めて
になります。
居住者(非永住者)
居住者(非永住者)の課税対象となる所得は
の3つです。
従って、まず
により発生した所得については、課税所得の範囲に含まれます。
一方
により発生した所得については
のみが課税対象となります。
日本での支払いというと、近頃は
ということは考えにくいですが
は代表的なものですね。
日本への送金については
と言ったりもしますが、外国の口座に振り込んでもらい、そこから
というのは、わかりやすい例です。
なお、同じ年に、外国で支払われた国外源泉所得以外の所得(≒国内源泉所得)がある場合は、国外源泉所得以外の所得に対応する金額を、先に送金したものとされます。
例えば、同じ年に、外国の預金口座で受け取った
があり、それを
した場合、送金課税の対象となるのは、50万円(150万円-100万円)です。
国外源泉所得以外の所得(≒国内源泉所得:100万円)は、送金の有無に関わらず、元々課税対象です。
こちらも、二重課税を防止するための措置ですね。
昨今は、EC(電子商取引)が進み、決済手段が多様化しています。
そんな中で、支払場所や送金が要件となると、思いもよらぬところで課税の対象となってしまうことがあります。
例えば、有名な例は
ですね。
引落が外国の預金口座の場合、この外国の預金口座から、日本へ送金されたことになります。

送ったつもりはないのに…。

そうですね。うっかり忘れそうですね。
送金課税については、いわゆる「送金」の手続きをしていなくても、課税対象となる場合がありますので、注意が必要です。
なお
については、居住者(永住者)と同じです。
非居住者
非居住者の課税所得の範囲は
のみです。
従って
により発生した所得だけが、課税対象になります。
日本と諸外国との租税条約においても、不動産の売却や貸付による所得については、その不動産の所在地で課税できることになっています。
非居住者の、日本の不動産に関する所得については、まず受取時に
がされます。
その上で
をして、精算することが必要になります。
非居住者が、日本で確定申告をするためには
を定めなければなりませんね。
納税地は
で、上記が無い場合は
です。
なお、賃貸収入で
である場合と、売却収入で
である場合は、源泉徴収は不要です。
源泉徴収税率は
です。
源泉徴収は、借主(支払者)の義務ですが、必要なのに忘れているようだと判断できるときは、貸主からも声をかけてあげられるとよいですね。
なお、日本で非居住者となっている場合は、他国で居住者となっていると考えられます。
従って、その国で
の規定がある場合は、日本での税額を
として、その国での申告において適用を受けることになります。
おわりに
納税義務者の区分別に、国内外の不動産に関する取扱いを解説しました。
課税対象となる範囲をまとめると、以下のようになります。
居住者 (永住者) | 居住者 (非永住者) | 非居住者 | |
日本の不動産 | |||
外国の不動産 (日本で支払) | |||
外国の不動産 (日本に送金) | |||
外国の不動産 (上記以外) |
居住者(永住者)の方の
居住者(非永住者)の方の
そして、日本と外国の両方で申告が必要なものは、忘れやすいですね。
申告漏れのないよう、今一度確認しましょう。