為替予約の振当処理について、具体例を見ながら順を追って解説します。
事前予約の場合
為替差損の場合
100ドルの借入金について、以下のような内容で事前予約をしたとします。
取引日レートは取引日の直物相場(150円)、予約レートは予約日の先物相場(153円)です。
この場合、法人税法上の処理は以下のようになります。
予約日(X1年9月1日)
仕訳なし ※帳簿書類へ記載 |
為替予約によって、確定させた資産や負債の円換算額は
に、その資産や負債の円換算額とされます。
予約日には、仕訳はありませんが帳簿書類への記載が必要です。
取引日(X1年10月1日)
(現金預金)150,000 | (借入金)153,000 |
(前払費用)3,000 |
取引日には、一旦為替予約差額の全額を前払費用へ計上します。
為替予約差額は、取引日レート(150円)と予約レート(153円)の差額ですので
です。
決算日(X2年3月31日)
(為替差損)2,000 | (前払費用)2,000 |
為替予約差額を配分し、当期分の為替差損益を計上します。
為替予約差額は
です。
配分期間は、取引日から決済日の期間ですので
です。
簡便的に月数で計算すると
で、取引日があるX1年度と、決済日があるX2年度、それぞれの月数は
です。
したがって、配分額は
となりますので、X1年度対応分の2,000円を為替差損へ計上します。
決済日(X2年6月30日)
(借入金)153,000 | (現金預金)153,000 |
(為替差損)1,000 | (前払費用)1,000 |
予約レート(153円)によって決済し、X2年度分の為替差損を前払費用から振替えます。
税務調整が必要な場合
会計上、取引日において
(現金預金)150,000 | (借入金)153,000 |
(為替差損)3,000 |
のように為替差損の全額を計上し、決算日に振替処理等による為替予約差額の配分をしなかった場合は、X1年度において
の税務調整を行い、翌X2年度に
とします。
為替差益の場合
為替差益の場合の確認として、例を貸付金に変更して見てみましょう。
100ドルの貸付金について、以下のような内容で事前予約をしたとします。
取引日レートは取引日の直物相場(150円)、予約レートは予約日の先物相場(153円)です。
この場合、法人税法上の処理は以下のようになります。
予約日(X1年9月1日)
仕訳なし ※帳簿書類へ記載 |
為替予約によって、確定させた資産や負債の円換算額は
に、その資産や負債の円換算額とされます。
予約日には、仕訳はありませんが帳簿書類への記載が必要です。
取引日(X1年10月1日)
(貸付金)153,000 | (現金預金)150,000 |
(前受収益)3,000 |
取引日には、一旦為替予約差額の全額を前受収益へ計上します。
為替予約差額は、取引日レート(150円)と予約レート(153円)の差額ですので
です。
決算日(X2年3月31日)
(前受収益)2,000 | (為替差益)2,000 |
為替予約差額を配分し、当期分の為替差損益を計上します。
為替予約差額は
です。
配分期間は、取引日から決済日の期間ですので
です。
簡便的に月数で計算すると
で、取引日があるX1年度と、決済日があるX2年度、それぞれの月数は
です。
したがって、配分額は
となりますので、X1年度対応分の2,000円を為替差益へ計上します。
決済日(X2年6月30日)
(現金預金)153,000 | (貸付金)153,000 |
(前受収益)1,000 | (為替差益)1,000 |
予約レート(153円)によって決済し、X2年度分の為替差益を前受収益から振替えます。
税務調整が必要な場合
会計上、取引日において
(貸付金)153,000 | (現金預金)150,000 |
(為替差益)3,000 |
のように為替差益の全額を計上し、決算日に振替処理等による為替予約差額の配分をしなかった場合は、X1年度において
の税務調整を行い、翌X2年度に
とします。
事後予約の場合
為替差損の場合
100ドルの借入金について、以下のような内容で事後予約をしたとします。
取引日レートは取引日の直物相場(150円)、予約日レートは予約日の直物相場(153円)、予約レートは予約日の先物相場(156円)です。
この場合、法人税法上の処理は以下のようになります。
取引日(X1年10月1日)
(現金預金)150,000 | (借入金)150,000 |
取引日レートで借入金を計上します。
予約日(X1年12月1日)
(為替差損)3,000 | (借入金)6,000 |
(前払費用)3,000 |
※帳簿書類へ記載 |
為替予約によって、確定させた資産や負債の円換算額は
に、その資産や負債の円換算額とされます。
予約日には、帳簿書類への記載が必要です。
事後予約の場合、為替予約差額には
の2種類があります。
直直差額は、取引日レート(150円)と予約日レート(153円)の差額ですので
です。
全額が当期の為替差損となります。
直先差額は、予約日レート(153円)と予約レート(156円)の差額ですので
です。
配分が必要な為替予約差額ですので、一旦全額を前払費用へ計上します。
決算日(X2年3月31日)
(為替差損)2,000 | (前払費用)2,000 |
為替予約差額を配分し、当期分の為替差損益を計上します。
ただし、配分するのは
のみです。
直先差額は
です。
配分期間は、予約日から決済日の期間ですので
です。
簡便的に月数で計算すると
で、予約日があるX1年度と、決済日があるX2年度、それぞれの月数は
です。
したがって、配分額は
となります。
ので、X1年度対応分の2,000円を為替差損へ計上します。
決済日(X2年5月31日)
(借入金)156,000 | (現金預金)156,000 |
(為替差損)1,000 | (前払費用)1,000 |
予約レート(156円)によって決済し、X2年度分の為替差損を前払費用から振替えます。
税務調整が必要な場合
会計上、予約日において
(為替差損)6,000 | (借入金)6,000 |
のように為替差損の全額を計上し、決算日に振替処理等による為替予約差額の配分をしなかった場合は、X1年度において
の税務調整を行い、翌X2年度に
とします。
為替差益の場合
為替差益の場合の確認として、例を貸付金に変更して見てみましょう。
100ドルの貸付金について、以下のような内容で事後予約をしたとします。
取引日レートは取引日の直物相場(150円)、予約日レートは予約日の直物相場(153円)、予約レートは予約日の先物相場(156円)です。
この場合、法人税法上の処理は以下のようになります。
取引日(X1年10月1日)
(貸付金)150,000 | (現金預金)150,000 |
取引日レートで借入金を計上します。
予約日(X1年12月1日)
(貸付金)6,000 | (為替差益)3,000 |
(前受収益)3,000 |
※帳簿書類へ記載 |
為替予約によって、確定させた資産や負債の円換算額は
に、その資産や負債の円換算額とされます。
予約日には、帳簿書類への記載が必要です。
事後予約の場合、為替予約差額には
の2種類があります。
直直差額は、取引日レート(150円)と予約日レート(153円)の差額ですので
です。
全額が当期の為替差益となります。
直先差額は、予約日レート(153円)と予約レート(156円)の差額ですので
です。
配分が必要な為替予約差額ですので、一旦全額を前受収益へ計上します。
決算日(X2年3月31日)
(前受収益)2,000 | (為替差益)2,000 |
為替予約差額を配分し、当期分の為替差損益を計上します。
ただし、配分するのは
のみです。
直先差額は
です。
配分期間は、予約日から決済日の期間ですので
です。
簡便的に月数で計算すると
で、予約日があるX1年度と、決済日があるX2年度、それぞれの月数は
です。
したがって、配分額は
となります。
ので、X1年度対応分の2,000円を為替差益へ計上します。
決済日(X2年5月31日)
(現金預金)156,000 | (貸付金)156,000 |
(前受収益)1,000 | (為替差益)1,000 |
予約レート(156円)によって決済し、X2年度分の為替差益を前受収益から振替えます。
税務調整が必要な場合
会計上、予約日において
(貸付金)6,000 | (為替差益)6,000 |
のように為替差益の全額を計上し、決算日に振替処理等による為替予約差額の配分をしなかった場合は、X1年度において
の税務調整を行い、翌X2年度に
とします。
短期外貨建資産等の特例
振当処理の原則は以上のとおりですが
については特例があります。
短期外貨建資産等とは、決済期限が、取引事業年度の翌期首から1年以内に訪れるもののことです。
これらについては、為替予約差額の全額を
とすることができます。
決済サイクルの短いもの、特に営業活動から生じる売掛金や買掛金について、為替予約差額の配分を行うのは大変煩雑になりますので、ぜひとも特例を活用したいですね。
ただし、この特例を適用したい場合は
に、選定し届出をする必要があります。
提出するのは
です。

届出期限は
です。
なお、既に配分の処理をしているものについては、この特例は適用できません。
おわりに
為替予約の振当処理について、具体例とともに解説しました。
実際の金額を当てはめて確認してみると、理解が進みやすいですね。