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自宅を賃貸した場合の建物の減価償却:非業務用から業務用に変更した場合

税金
税金

転勤するので自宅を賃貸することにしました。

不動産所得の減価償却はどうなりますか?

くま税理士
くま税理士

自宅を賃貸したときは、特別な計算方法があります。

会社員の方が、転勤などで自宅を賃貸した場合は、不動産所得の申告をすることになります。

その際の減価償却の方法について解説します。

手順の確認と具体例

自宅を賃貸した場合のことを

  • 非業務用(自宅)を業務用(賃貸)に変更した

と言いますが、この

  • 非業務用の期間
  • 業務用の期間

それぞれ別々に、減価償却の計算をすることになります。

自宅として使っていた期間の減価償却も必要なんですか?

くま税理士
くま税理士

はい。賃貸開始時点の、未償却残高を知るために必要です。

未償却残高とは、まだ減価償却が終わっていない残りの金額のことです。

たとえば

  • 取得価額(購入した金額):1,000万円
  • 減価償却累計額(減価償却費の合計額):600万円

なら

  • 未償却残高:1,000万円 - 600万円 = 400万円

です。

なお、減価償却の計算には、以下のような情報が必要です。

  • 償却方法
  • 耐用年数
  • 償却率
  • 償却期間

これらを確認してから、計算式に当てはめていきます。

それでは、下記の例の場合の計算を見ていきましょう。

  • 平成25年(2013年)7月に3,000万円で新築(木造)
  • 令和5年(2023年)4月から賃貸

賃貸開始時の未償却残高

まず、自宅として使っていた期間(非業務用の期間)の減価償却費を計算します。

償却方法

減価償却の償却方法には、定額法、定率法、旧定額法、旧定率法などがあり、資産の種類によって

  • 償却方法が決められているもの
  • 償却方法を選ぶことができるもの

があります。

このうち、建物は償却方法が決められているものです。

※平成10年(1998年)3月31日以前に取得したものは選ぶことができました。

具体的には

  • 平成19年(2007年)3月31日以前に取得:旧定額法
  • 平成19年(2007年)4月1日以後に取得:定額法

です。

ただし、非業務用の期間の減価償却費を計算する場合は

  • 旧定額法

を使うことになっています。

耐用年数

耐用年数は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第一で確認することができます。

ほかにも、検索して頂くと、「確定申告書等作成コーナー」の「よくある質問」をはじめ、主なものだけを抽出した簡易版もたくさん見つかりますので、ご自身の見やすいもので確認して下さい。

耐用年数
確定申告書等作成コーナー:よくある質問 より抜粋

例の建物は、木造の住宅用ですから

  • 22年

です。

ただし、非業務用の期間の減価償却費を計算する場合の耐用年数は

  • 1.5倍

することになっています。

したがって、元々の耐用年数が22年ですので

  • 22×1.5=33年

となります。

償却率

償却率は

  • 償却方法
  • 耐用年数

の組み合わせで定められています。

国税庁の償却率表などを参照して、確認して下さい。

償却率
国税庁:減価償却資産の償却率等表

例の場合は

  • 旧定額法
  • 耐用年数:33年

ですから

  • 償却率:0.031

です。

償却期間

非業務用の期間の減価償却費を計算する場合、償却期間をまとめて計算します。

例の場合は

  • 9年9か月

ですが、6か月未満は切捨、6か月以上は1年としますので

  • 10年

となります。

償却費と未償却残高

それではいよいよ計算です。

非業務用の期間の減価償却の計算式は

  • 取得価額 × 0.9 × 償却率 × 償却期間

ですので、例の場合で当てはめると

  • 30,000,000 × 0.9 × 0.031 × 10 = 8,370,000

です。

したがって、未償却残高は

  • 30,000,000 - 8,370,000 = 21,630,000

となります。

賃貸中の減価償却費

賃貸中の減価償却費は、通常通り

  • 定額法
  • 耐用年数:22年(償却率0.046)

で計算します。

ただし、初年度は年の途中からになりますので月割計算が必要です。

4月からですので、償却期間は9か月です。

したがって

  • 30,000,000 × 0.046 × 9/12 = 1,035,000

減価償却が終わったあとの未償却残高は

  • 21,630,000 - 1,035,000 = 20,595,000

となります。

確定申告書等作成コーナーや会計ソフトなどで、減価償却資産の登録をする場合は

  • 取得年月:平成25年(2013年)7月
  • 取得価額:30,000,000円
  • 未償却残高:21,630,000円
  • 耐用年数:22年
  • 償却期間:9月

とすると、その年の減価償却費と未償却残高が自動で計算されます。

白色申告の場合は収支内訳書、青色申告の場合は青色申告決算書の

  • 減価償却費の計算

の欄に、以下のように表示されます。

減価償却費の計算
収支内訳書 より抜粋

おわりに

自宅を賃貸した場合(非業務用を業務用に変更した場合)の減価償却方法について解説しました。

不動産所得の場合、減価償却費の計算は欠かせません。

イレギュラーな処理についても、確認しておきましょう。

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