賃上げ促進税制:特定法人(中堅企業)・繰越控除・子育て支援・女性活躍支援

税金
税金

今年度は

  • 賃上げ促進税制

の改正がありました。

細かな見直しも含めて、毎年のように何かしら変更がありますね。

税理士試験の受験中は大変でした…。

今回の改正の主な項目として

  • 特定法人(中堅企業)
  • 繰越控除制度
  • 子育て・女性活躍支援

の3つをご紹介します。

特定法人(中堅企業)

資本金が1億円以下の中小企業者等については、適用要件や税額控除割合が優遇されています。

改正前は、その

  • 中小企業者等
  • それ以外(大企業)

という区分でした。

けれど、今回の改正で区分がひとつ増え

  • 中小企業者等
  • 特定法人(中堅企業)
  • それ以外(大企業)

の3区分に変わりました。

特定法人は、給与等の増加割合が4%以上になると、それ以外の大企業よりも控除割合が優遇されます。

特定法人とは

  • 従業員が2,000人以下

の法人をいいます。

ただし、グループ企業の場合は

  • 50%超を支配している法人

と合算して

  • 従業員が10,000人以下

でなければなりません。

たとえば

  • A社がB社を50%超支配
  • A社:2,000人
  • B社:1,000人

の場合

関係図01

A社は

  • 自社が2,000人以下
  • B社と合計で10,000人以下(3,000人)

であるため、特定法人に該当しますし、B社は

  • 自社が2,000人以下

であるため、特定法人に該当します。

一方

  • C社がD社を50%超支配
  • C社:2,000人
  • D社:9,000人

の場合

関係図02

C社は

  • 自社は2,000人以下

ですが

  • D社と合計で10,000人超(11,000人)

ですので、特定法人に該当しませんし、D社は

  • 自社が2,000人超

ですので、特定法人に該当しません。

また

  • E社がF社を50%超支配
  • E社:9,000人
  • F社:2,000人

の場合

関連図03

E社は

  • 自社が2,000人超

ですので、特定法人に該当しませんが、F社は

  • 自社が2,000人以下

ですので、特定法人に該当します。

親会社は関係ないのですね。

くま税理士
くま税理士

はい。合算対象は、子会社(こちらが支配している法人)のみです。

条文には

  • その法人による支配関係がある他の法人

と書かれています。

  • その法人による

というところがキーワードですね。

したがって、こちらが支配されている法人(≒親会社)の人数は、考慮する必要はありません。

グループ企業の従業員数については、定期的に情報交換をして、最新の人数を確認しておきたいですね。

繰越控除制度

今回の改正で

  • 中小企業者等のみ

にはなりますが、ついに

  • 繰越控除制度

が追加となりました。

かつて

  • 所得拡大促進税制

と呼ばれた同制度ですが

  • 賃上げ促進税制

という名称で、常設の税制であるかのように定着してきましたね。

昨今は、決算検討事項の主要項目のひとつでもあります。

制度開始以来、単事業年度向けの税制措置でしたが、このたび、控除しきれなかった金額を

  • 最大5年間

繰り越すことができるようになりました。

適用を受けない欠損事業年度であっても、確定申告書に明細書の添付をすることで、引き続き翌事業年度以降に繰り越すことができます。

これにより、賃上げをした事業年度だけでなく、翌事業年度以降の税額にも影響を与えることとなりました。

今後は、より長期的な計画や管理が必要です。

毎月とまでは言いませんが、四半期ごと程度で、判定や試算をしておくといいですね。

子育て・女性活躍支援

税額控除割合の上乗せ措置の要件としては、従来から

  • 教育訓練費に関する要件

がありました。

教育訓練費について一定の要件を満たすと、税額控除割合が

  • 5%

上乗せされるというものです。

これに加えて、今回新たに

  • 子育てとの両立支援
  • 女性活躍支援

に関する要件を満たすと、さらに

  • 5%

上乗せされることになりました。

判定は

  • くるみん認定
  • えるぼし認定

で行います。

くるみん認定は

  • 次世代育成支援対策推進法

に基づく認定で

  • くるみん
  • プラチナくるみん
  • トライくるみん

があります。

  • くるみん

の場合は

  • 中小企業者等のみ

ですが

  • プラチナくるみん

であれば

  • すべての法人

が、上乗せ措置の対象となります。

えるぼし認定は

  • 女性活躍推進法

に基づく認定で

  • えるぼし
  • プラチナえるぼし

があります。

  • えるぼし

の場合は、基準の充足数に応じて

  • 中小企業者等
  • 中堅企業

のみが対象となりますが

  • プラチナえるぼし

であれば

  • すべての法人

が、上乗せ措置の対象となります。

各々認定基準がありますが、賃金以外の面での対応も適用要件となっています。

おわりに

おなじみとなった

  • 賃上げ促進税制

の改正ポイントとして

  • 特定法人(中堅企業)
  • 繰越控除制度
  • 子育て・女性活躍支援

の3つをご紹介しました。

17~18年前のことになりますが、今と同じようなユーロ高の時期がありました。

その頃、ヨーロッパから遊びに来た友人が

ホテルがすごく安かったの♪

と大喜びしていました。

友人としては、リーズナブルに楽しんでもらえて、お土産もたくさん買ってもらえて、とても嬉しかったのですが、日本人としては

ちょっと悲しい…。

と、複雑な心境だったことを思い出します。

近年は、外国で働いたり、外国に投資したりする人が増え

日本で働くのは損ですね。

といった声をよく聞きます。

日本で収入を得て、外国に住んでいる

一番損なパターンです。

という方もいらっしゃいますね。

あっという間に

  • 安い国ニッポン

というイメージがついてしまい、このままだと

出稼ぎでみんな居なくなっちゃうんじゃないの!?

などと思ったりします。

人材は人財です。

人を大切にして

ここで働きたい!

と思われるような企業が、これからもたくさん増えるといいなと思います。

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