
今年度は儲かって、思っていたより税金が高くなりました。
あとから決算賞与を計上することはできませんか?

使用人賞与は原則として現金主義です。
未払いの賞与を損金の額に算入するためには、要件があります。
法人の費用の損金算入時期は、原則として発生主義(債務確定基準)によりますが、現金主義を採用するものもいくつかあります。
代表的なものは
です。
原則の発生主義(債務確定基準)による
と合わせて、損金算入時期と税務処理を確認しましょう。
使用人賞与の損金算入時期
原則
損金は原則として発生主義(債務確定基準)によりますが、使用人賞与は
に損金の額に算入することになっています。
使用人賞与は、親族等の特殊な関係にある使用人に対する過大な部分の金額を除き、損金の額に算入することができます。
臨時の多額の費用となる可能性が高い使用人賞与について未払計上を認めると、冒頭のような租税回避や利益操作に繋がりかねません。
そこで、原則は損金経理を要件とする現金主義とし、特定の要件を満たす場合の特例として発生主義(債務確定基準)による損金算入が認められています。
特例:支給予定日が到来しているもの
法人では一般に、使用人賞与について、労働協約や就業規則などによって支給対象期間や支給基準などを定めています。
その労働協約等によって支給されるのであれば、契約に基づくものであるため、金額が合理的に算出され明確であることを条件に債務が確定しているものとし、未払計上を認めることとされています。
支給予定日が既に到来しているものの、資金繰りの悪化などにより支給が遅れた場合などが考慮されています。
労働協約等による支給予定日が到来している使用人賞与について、未払計上により損金の額に算入できる要件は以下です。
上記の要件を満たす場合に限り
の損金の額に算入することができます。
特例:支給予定日が到来していないもの
決算賞与などの臨時の支給をする場合に、支給予定日が到来していない使用人賞与について、未払計上により損金の額に算入できる要件は以下です。
上記の3要件を満たす場合に限り
の損金の額に算入することができます。
未払計上が認められない場合の税務処理
現金主義が原則とされる使用人賞与について、特例の要件も満たさず、未払計上が認められない場合の税務処理は以下です。
X1年度
(賞与)×× /(未払金)××
X2年度
(未払金)×× /(現金預金)××
交際費の損金算入時期
概要
交際費は
に計上することになっています。
損金の原則である発生主義(債務確定基準)の考え方です。
損金経理(支払)の場合
X1年度(接待行為のあった事業年度)
(交際費)×× /(現金預金)××
損金経理(未払)の場合
X1年度(接待行為のあった事業年度)
(交際費)×× /(未払金)××
X2年度
(未払金)×× /(現金預金)××
仮払金経理の場合
X1年度(接待行為のあった事業年度)
(仮払金)×× /(現金預金)××
X2年度
(交際費)×× /(仮払金)××
経理が未処理の場合
X1年度(接待行為のあった事業年度)
仕訳なし
X2年度
(交際費)×× /(現金預金)××
寄附金の損金算入時期
概要
寄附金の支出は
とされています。
損金は原則として発生主義(債務確定基準)によりますが、寄附金は現金主義です。
寄附金の未払計上ができるとなると、利益操作に繋がりやすくなります。
また、通常寄附については契約書を交わしたりしませんので、その取消しが容易です。
従って、寄附金は支払ってはじめて損金性が認められるため
の損金の額に算入することになっています。
損金経理(支払)の場合
(寄附金)×× /(現金預金)××
損金経理(未払)の場合
X1年度
(寄附金)×× /(未払金)××
X2年度
(未払金)×× /(現金預金)××
仮払金経理の場合
X1年度
(仮払金)×× /(現金預金)××
X2年度
(寄附金)×× /(仮払金)××
おわりに
の損金算入時期と税務調整について解説しました。
損金の原則は発生主義ですが、租税回避や利益操作の防止として、未払計上が認められないものもあります。
決算の時期になってから、慌てて税金のことだけを考えるのではなく、日々の経営管理を大切にしましょう。