入会金や会費の取り扱いは、名目ではなく内容によって判断されます。
また、税金の種類によって判断のポイントは異なります。
入会金や会費について、消費税と法人税での取り扱いを確認しましょう。
消費税における取扱い
概要
消費税の課税対象となる取引は、以下の4つをすべて満たすものです。
このうち、入会金や会費の判定においては
かどうかがポイントになります。
課税対象外(不課税)となる場合
組合や同業者団体等の入会金や通常会費は、ほとんどの場合、課税対象外(不課税)と判定されます。
会員等が支払う入会金や通常会費は、団体等の通常業務を運営するために経常的に必要となる費用を分担するものです。
団体等は会員等に対して役務の提供を行いますが、入会金や通常会費は、その役務の提供との間に明白な対価関係はありません。
従って
に該当せず、課税対象外(不課税)として取り扱われます。
尚、判定が困難なものについて、役務の提供に対する対価に該当しないものとする場合には
ことになっています。
団体等(受取側)と会員等(支払側)の双方が、対価として認識していない場合には、課税の対象にはなりません。
お互いに課税対象外で処理していたらそれでいいのですね。
消費税は間接税です。
受け取った側が預かっていないのなら、支払った側も支払ったことにはなりません。
インボイス制度が始まれば、これが書類(請求書)で明確になりますね。
課税対象となる場合
一方で、「会費」という名目であっても、実際には役務の提供の対価である場合があります。
などが代表的です。
「入会金」という名目の場合も
といった目的で会員等の資格を付与するために収受したものは、役務の提供の対価です。
いずれも
に該当しますので
であれば、課税対象となります。
ただし、入会金で、退会等の際に返還することになっているものについては、単なる預り金ですので、課税の対象にはなりません。
法人税における取扱い
概要
法人税における入会金や会費の取り扱いは多様で、団体別に細かく定められています。
同業者団体の場合
入会金
同業者団体の入会金(加入金)は、自己が便益を受ける費用として繰延資産に該当します。
5年間で償却し、損金の額に算入します。
ただし、他に譲渡することができるものや出資の性質を有するものは、無形固定資産に該当します。
時の経過により価値が減少するものではありませんので償却することは認められておらず、他に譲渡したり脱退したりするまで、損金の額には算入されません。
会費
同業者団体の通常会費は、団体の通常業務を運営するために経常的に必要となる費用を分担するものです。
このような通常会費は、原則として、支出事業年度に諸会費等として損金の額に算入されます。
ただし、通常会費であっても、団体において不相当に多額の剰余金が生じている場合には、前払費用として損金の額には算入しません。
また、団体の通常業務以外の別の目的のために支出する「会費」もあります。
例えば
といったものです。
このような通常会費以外の会費については、支出時には前払費用とし、団体が支出した日にその費途に応じて支出したものとします。
つまり、同業者団体を通じて自社が支出したこととするということです。
ちなみに上述の例の場合は
といった処理をするのが一般的です。
レジャー施設等の場合
入会金
レジャー施設等の入会金は、会員が
などを利用することを目的として支出するものですが、その会員種別で取り扱いが異なります。
法人会員の場合は、原則として資産に計上します。
レジャー施設等の入会金は、その支出によって会員等の権利を取得するもので、その権利は他に譲渡することができます。
このような譲渡性のある入会金は、無形固定資産に該当し、時の経過により価値が減少するものではないため償却をすることは認められませんので、非償却資産として取り扱います。
従って、会計上費用計上した場合には
の税務調整が必要となります。
なお、入会金(会員等の権利)を譲渡した場合には、譲渡した事業年度の損金の額に算入します。
また、会員を脱退した際に入会金の返還を受けることができない場合には、その脱退した事業年度の損金の額に算入します。
ただし、会員の有効期間が定められている場合には、繰延資産として処理することもできます。
個人会員の場合はどうなりますか?
はい。原則として給与になります。
法人税では、個人が負担すべきものを法人が支払った場合は、給与に該当します。
会員が役員の場合は
の税務調整が必要となることがありますので、注意が必要です。
ただし、個人会員であっても
で、法人が負担すべきものと認められるときは、法人会員の原則処理(資産計上)が認められます。
逆に、法人会員であっても、
する場合には、個人が負担すべきものであると考えれらるため、資産計上は認められず給与として処理することになります。
会員種別だけが判断のポイントではないのですね。
そうですね。業務に必要かどうかも重要な判断基準です。
会費
レジャー施設等の会費も入会金と同様の判断基準となります。
個人が負担すべきものは給与となりますが、法人が負担すべきものは、その使途に応じて交際費や福利厚生費等として取り扱います。
交際費は、以下の、相手・行為・目的の3要件を満たすものとされています。
接待といえばゴルフが代表的ですね。
ゴルフクラブの年会費は交際費に該当します。
福利厚生費は
ですが
などが判断基準とされています。
社内規定などが設けられておらず、特定の者だけが利用したり、金額が高すぎたりするものは認められません。
保養所やスポーツクラブなどは、要件を満たせば福利厚生費に該当します。
社交団体の場合
社交団体に対して支出した金額については、入会金や会費といった名目に関わらず同じ取り扱いとなります。
目的が懇親を深めることですので、原則として交際費に該当します。
判断基準や会員種別に関する取り扱いはレジャー施設等と同様で、個人が負担すべきものは給与に該当します。
尚、ロータリークラブやライオンズクラブは、世界的には慈善事業とされています。
日本においては、主な目的が懇親であるため交際費とされますが、支出の目的に応じて寄附金とする場合もあります。
おわりに
入会金や会費について、消費税と法人税での取り扱いを確認しました。
税金の種類によって判断基準は異なります。
各々で複数の取り扱いが考えられるものについては、混乱しがちですので整理しておきましょう。