サラリーマンで年収が1,000万円です。
税率は33%ってことですか?
いえいえ。税率を乗じるのは「課税所得」で、「収入」とは違います。
また、所得税は「超過累進税率」で計算します。
所得税の計算方法として
について解説するとともに、課税所得別に
を算出し、早見表を作成してみたいと思います。
課税所得と超過累進税率
課税所得
所得税額は、以下の手順で計算されます。
- 1収入-経費=所得
収入は10種類の所得に分けられます。
種類ごとに決められた計算方法で経費を差し引いて所得を算出します。 - 2所得-所得控除=課税所得
所得から所得控除を差し引いて課税所得を算出します。
所得控除とは、個人的な事情を考慮した税負担の調整を目的としたものです。 - 3課税所得×所得税率=所得税額
課税所得に所得税率を乗じて所得税額を算出します。
所得税は超過累進税率で計算します。 - 4所得税額-税額控除=所得税率
税額控除がある場合は、算出された所得税額から更に差し引きます。
税額控除は、税負担の軽減を目的としたものです。
図にすると以下のようになります。
収入に税率を乗じるんじゃないんですね。
そうですね。所得税は、所得(利益)に対して課される税です。
例えば、会社員の方の年収は
に該当し、収入金額に応じた
という経費を差し引くことになっています。
年収が1,000万円の場合は、給与所得控除の金額は195万円ですので
が、所得金額になります。
ここからさらに所得控除を差し引くのですね。
はい。10種類以上の所得控除があります。
所得控除の種類は、以下のとおりです。
最後の基礎控除は、特別所得が高い人を除いて、ほとんどすべての人が受けられる所得控除です。
会社員の場合は、各種の保険料控除、配偶者(特別)控除、扶養控除などがお馴染みですね。
例えば、年収1,000万円で社会保険料が150万円の場合は
が課税所得になります。
この金額に税率を乗じるのですね。
はい。この課税所得が計算の基になる金額です。
なお、税額控除がある場合は、算出された所得税額からさらに直接控除することができます。
主なものは
などです。
会社員の場合は、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)がお馴染みですね。
超過累進税率
課税所得が607万円なので、607万円×20%ですよね。
いえいえ。課税所得×税率ではありません。
所得税額は、超過累進税率を乗じて計算します。
超えた部分のみ(超過)、税率が上がっていく(累進)という計算方法です。
図にすると以下のようになります。
195万円までの部分は、全員5%です。
課税所得が195万円以上の人は、まずここで
が確定です。
次の境目は330万円で、10%です。
課税所得が330万円以上の人は、195万円から330万円の間の135万円分が10%になります。
が確定です。
さらに次の境目は695万円です。
課税所得が607万円の場合は、330万円から607万円までの間の277万円分だけが20%です。
従って、合計すると
となります。
じゃあ実際の所得税率は…
78万6,500円 ÷ 607万円 = 12.95…%
で13%ぐらいですね。
以降同様に、23%、33%、40%、45%と税率は上がっていきますが、課税所得が3,000万円ぐらいにならないと、実際の所得税率が30%を超えることはありません。
住民税(10%)を加味しても、課税所得が600万円前後の場合は、合わせて22~23%ぐらいです。
実際の所得税額
それでは、課税所得ごとに実際の所得税額を計算して、本当の税率を算出してみましょう。
課税所得100万円
課税所得が100万円の場合は
ですので
となり、実際の所得税率も
です。
課税所得 | 所得税額 | 実際の所得税率 |
---|---|---|
100万円 | 5万円 | 5% |
課税所得200万円
課税所得が200万円の場合は
ですので
となり、実際の所得税率は
です。
課税所得 | 所得税額 | 実際の所得税率 |
---|---|---|
200万円 | 10万2,500円 | 5.125% |
課税所得300万円
課税所得が300万円の場合は
ですので
となり、実際の所得税率は
です。
課税所得 | 所得税額 | 実際の所得税率 |
---|---|---|
300万円 | 20万2,500円 | 6.75% |
課税所得400万円
課税所得が400万円の場合は
ですので
となり、実際の所得税率は
です。
課税所得 | 所得税額 | 実際の所得税率 |
---|---|---|
400万円 | 37万2,500円 | 9.313% |
課税所得500万円
課税所得が500万円の場合は
ですので
となり、実際の所得税率は
です。
課税所得 | 所得税額 | 実際の所得税率 |
---|---|---|
500万円 | 57万2,500円 | 11.45% |
課税所得600万円
課税所得が600万円の場合は
ですので
となり、実際の所得税率は
です。
課税所得 | 所得税額 | 実際の所得税率 |
---|---|---|
600万円 | 77万2,500円 | 12.875% |
課税所得700万円
課税所得が700万円の場合は
ですので
となり、実際の所得税率は
です。
課税所得 | 所得税額 | 実際の所得税率 |
---|---|---|
700万円 | 97万4,000円 | 13.914% |
課税所得800万円
課税所得が800万円の場合は
ですので
となり、実際の所得税率は
です。
課税所得 | 所得税額 | 実際の所得税率 |
---|---|---|
800万円 | 120万4,000円 | 15.05% |
課税所得900万円
課税所得が900万円の場合は
ですので
となり、実際の所得税率は
です。
課税所得 | 所得税額 | 実際の所得税率 |
---|---|---|
900万円 | 143万4,000円 | 15.933% |
課税所得1,000万円
課税所得が1,000万円の場合は
ですので
となり、実際の所得税率は
です。
課税所得 | 所得税額 | 実際の所得税率 |
---|---|---|
1,000万円 | 176万4,000円 | 17.64% |
課税所得1,500万円
課税所得が1,500万円の場合は
ですので
となり、実際の所得税率は
です。
課税所得 | 所得税額 | 実際の所得税率 |
---|---|---|
1,500万円 | 341万4,000円 | 22.76% |
課税所得2,000万円
課税所得が2,000万円の場合は
ですので
となり、実際の所得税率は
です。
課税所得 | 所得税額 | 実際の所得税率 |
---|---|---|
2,000万円 | 520万4,000円 | 26.02% |
課税所得3,000万円
課税所得が3,000万円の場合は
ですので
となり、実際の所得税率は
です。
課税所得 | 所得税額 | 実際の所得税率 |
---|---|---|
3,000万円 | 920万4,000円 | 30.68% |
課税所得4,000万円
課税所得が4,000万円の場合は
ですので
となり、実際の所得税率は
です。
課税所得 | 所得税額 | 実際の所得税率 |
---|---|---|
4,000万円 | 1,320万4,000円 | 33.01% |
課税所得5,000万円
課税所得が5,000万円の場合は
ですので
となり、実際の所得税率は
です。
課税所得 | 所得税額 | 実際の所得税率 |
---|---|---|
5,000万円 | 1,770万4,000円 | 35.408% |
課税所得1億円
課税所得が1億円の場合は
ですので
となり、実際の所得税率は
です。
課税所得 | 所得税額 | 実際の所得税率 |
---|---|---|
1億円 | 4,020万4,000円 | 40.204% |
早見表
実際の所得税額の計算はいかがでしたでしょうか?
早見表にまとめました。
課税所得 | 所得税額 | 実際の所得税率 |
---|---|---|
100万円 | 5万円 | 5% |
200万円 | 10万2,500円 | 5.125% |
300万円 | 20万2,500円 | 6.75% |
400万円 | 37万2,500円 | 9.313% |
500万円 | 57万2,500円 | 11.45% |
600万円 | 77万2,500円 | 12.875% |
700万円 | 97万4,000円 | 13.914% |
800万円 | 120万4,000円 | 15.05% |
900万円 | 143万4,000円 | 15.933% |
1,000万円 | 176万4,000円 | 17.64% |
1,500万円 | 341万4,000円 | 22.76% |
2,000万円 | 520万4,000円 | 26.02% |
3,000万円 | 920万4,000円 | 30.68% |
4,000万円 | 1,320万4,000円 | 33.01% |
5,000万円 | 1,770万4,000円 | 35.408% |
1億円 | 4,020万4,000円 | 40.204% |
この所得税額に加えて
があります。
課税所得ごとの実際の所得税率に、12.1%を加算すると、おおよその税負担率になります。
おわりに
所得税の
の解説と、課税所得別の
の計算をしました。
日本は
の国だと言われています。
北欧を代表とする福祉国家は
米国のように、自分で健康保険に入っていないと医療費が高額になるような国は
の国だと言われます。
所得税、復興特別所得税、住民税と、社会保険料も合わせて、実際の負担率を計算して把握しておくといいですね。