
外国の会社を買収する予定です。

外国子会社合算税制(CFC税制)はご存知ですか?
外国の企業について、買収やその他の組織再編等を行う際に検討すべき税制のひとつとして
があります。
かつては
とも呼ばれていた制度で、軽課税国(税率の低い国)の子会社等を利用した租税回避行為を防止するために、その子会社等の所得を日本の親会社等の所得と合算して、日本で課税するという制度です。
Yes/No判定を使って、まずは全体像を把握しましょう。
Yes/No判定
外国関係会社
外国関係会社とは、日本からの支配が過半となる外国法人のことです。
具体的には、日本の内国法人や居住者等によって
の50%超を直接および間接に保有されていたり
されていたりする外国法人のことです。
たとえば、外国法人X社の株式を
の割合で保有している場合、日本資本が75%(内国法人A社70%+内国法人B社5%)で50%超ですので、外国法人X社は外国関係会社になります。
適用対象法人(納税義務者)
CFC税制の適用対象として所得を合算する必要があるのは、外国関係会社の
している場合です。
たとえば、外国法人X社の株式を
の割合で保有している場合、内国法人A社は外国法人X社の所得を合算して申告する必要がありますが、内国法人B社は適用対象外になります。
特定外国関係会社
特定外国関係会社には
があります。
ペーパー・カンパニーとは
のいずれも満たさない外国関係会社のことです。
実体基準とは、主たる事業を行うための
を確認する基準です。
固定施設とは、事務所、店舗、工場などのことで、主たる事業を行うためのこれらの固定施設があれば、事業の実体があると考えられるため、ペーパー・カンパニーには該当しません。
管理支配基準は
を確認する基準です。
外国関係会社自身が、その所在する国や地域で、事業の管理、支配、運営を行っていれば、管理支配基準を満たしていると考えられるため、ペーパー・カンパニーには該当しません。
キャッシュ・ボックスとは金庫のことで、事実上金庫のような使い方をされている外国関係会社も、特定外国関係会社に該当します。
資金は豊富であるにも関わらず積極的な事業を行っていない会社のことで、具体的には、総資産に比し、受動的所得の割合が高い外国関係会社のことです。
ブラックリスト国とは、税制面における情報交換等に非協力的な国や地域のことです。
日本では、財務大臣が指定し告示した国や地域に所在する外国関係会社を、CFC税制での特定外国関係会社とすることができますが、現在該当する国はありません。
尚、EUでは、現在11の国および地域がブラックリストに掲載されています。
租税負担割合(特定外国関係会社)
CFC税制には、租税負担割合による免除規定があります。
特定外国関係会社については、租税負担割合が27%以上であれば、CFC税制の適用は免除されます。
租税負担割合は、単なるその国の税率ではなく、概ね以下のような計算式で算出した割合です。
分子の外国法人税は、外国関係会社が課された法人税です。
分母の所得には、日本では課税となるものを含みます。
これにより、外国での所得が日本で発生したと仮定した場合の税率(租税負担割合)を算出することができます。
分子、分母ともに、それぞれ細かい除外規定や調整項目があります。
たとえば、法定税率が特別低い国でなくても、有価証券の譲渡益が非課税となる国があります。
この場合、その非課税所得は分母に加算することになるため、租税負担割合は下がることになります。
このように租税負担割合は、所在地国や主たる事業が同じであっても、会社ごとに異なるのはもちろん、現地での優遇税制や、たったひとつの非課税取引によって大きく変動する可能性があります。
租税負担割合(特定外国関係会社以外)
CFC税制には、租税負担割合による免除規定があります。
特定外国関係会社以外の外国関係会社については、租税負担割合が20%以上であれば、CFC税制の適用は免除されます。
租税負担割合の計算式や留意点は、前項の租税負担割合(特定外国関係会社)と同様です。
経済活動基準
特定外国関係会社以外の外国関係会社については、租税負担割合が20%未満であっても、通常の事業活動を行っているのであれば、合算する所得を一定の受動的所得のみとすることができます。
その判定をするための経済活動基準が、以下の4つです。
事業基準とは、外国関係会社の主たる事業が
に該当していないかどうかを確認する基準です。
これらの事業は、その国で行うことについて経済的な合理性がなく、どこでも行うことができる受動的所得を得る事業です。
したがって、これらの事業に該当しない場合に、事業基準を満たしていることになります。
実体基準とは、その国に、主たる事業を行うための
を確認する基準です。
固定施設とは、事務所、店舗、工場などのことで、その国に主たる事業を行うための固定施設があれば、事業の実体があるということで実体基準を満たします。
管理支配基準は
を確認する基準です。
外国関係会社自身が、その所在する国や地域で、事業の管理、支配、運営を行っていれば、管理支配基準を満たします。
非関連者基準または所在地国基準については、業種によって適用される基準が異なります。
非関連者基準は
に適用され、これらの事業について、非関連者との取引が主(50%超)であれば、非関連者基準を満たします。
関連者には、たとえば、上述の適用対象法人などがあります。
関係会社間などの身内同士だけでなく、第三者と取引を行っているかどうかを確認する基準です。
所在地国基準は、非関連者基準が適用される業種以外の業種に適用されます。
その事業自体が、主としてその国で行われていれば、所在地国基準を満たします。
以上の4つの経済活動基準のうち、ひとつでも満たさない外国関係会社は
となり、外国関係会社の全所得(能動的所得+受動的所得)を合算することになります。
一方、4つの経済活動基準のすべてを満たす外国関係会社は
となります。
こちらに該当すると、合算の対象となる外国関係会社の所得は一定の受動的所得のみとなり、さらにその金額が少額であれば、合算が免除となる規定もあります。
その他の外国関係会社
CFC税制の検討が必要なのは、1社だけではない場合があります。
今判定を終えた会社は、さらに傘下に子会社などの関係会社がありませんでしょうか。
それらの外国法人が外国関係会社に該当すれば、その所得が合算対象となる可能性があります。
外国関係会社は
に保有している割合により判定します。
たとえば、外国法人X社の株式を
の割合で保有し、その外国法人X社に
という子会社があれば、その外国法人Y社も外国関係会社です。
すべての出資関係を正確に把握し、もれなく検討する必要があります。
おわりに
Yes/No判定を使って
の概要をご紹介しました。
各項目には、それぞれ細かな判定基準や免除規定などがあります。
また、具体的な対象所得の抽出や合算金額の算出は非常に複雑です。
外国との取引が当たり前となった現在では、国内の単独企業や国内だけのグループ企業、個人事業者であっても、国際取引に関する税制を取り扱うことが日常となりました。
けれど、外国に関係会社を持つと、支配被支配を問わず、検討が必要となる税制の範囲が飛躍的に拡大し、中には厳格で強力な課税制度もあります。
特にCFC税制は、租税回避行為をするつもりなどなく、純粋に事業の発展のために外国へ進出したのに、思いもよらず負担が発生してしまう可能性がある制度です。
国際取引や外国への事業展開にご不安がありましたら、ご相談ください。→ 単発個別相談




