業務委託(個人事業)1社と、アルバイトが2社あります。
確定申告はどうなりますか?
所得の区分と源泉徴収制度について確認しましょう。
源泉徴収が必要なもののうち
について解説します。
源泉徴収の概要
所得税は
といって
ことになっていますが、一部の所得については、併せて
が採用されています。
源泉徴収制度は、支払者が、支払の際に、支払金額から所得税を差し引いて国に納付するというものです。
そして、源泉徴収された所得税は、最終的に確定申告や年末調整で精算されます。
確定申告は、すべての収入が対象で、すべての控除を申告することができます。
一方、年末調整は、給与所得がある方のための特別な制度で、確定申告の一部を会社が代わりにしてくれる制度です。
給与等の源泉徴収
給与等とは、使用人や役員に対する、俸給、給料、賃金、歳費、賞与のほか、名称を問わず、給与の性質を有する収入のことです。
これらの給与等については、勤務先が、毎月支払の際に、あらかじめ所得税を差し引いて、国に納めています。
これを源泉徴収といいますが、このときの源泉徴収税額がいくらになるかは
で決められています。
通常入社時に、会社へ
という書類を提出します。
これにより、源泉徴収税額表の
を使用して計算することになります。
そして、年末に在籍していれば、一定の場合を除いて
ということになります。
例えば
の場合、給与明細は以下のようになります。(住民税については除外しています。)
基本給 | 250,000 |
健康保険料 | 13,169 |
厚生年金保険料 | 23,790 |
雇用保険料 | 1,250 |
所得税 | 5,200 |
差引支給額 | 206,591 |
社会保険料控除後の金額は
ですので、源泉徴収税額表によると
の行で、扶養親族等が0人の場合は
です。
なお、源泉徴収税額表は、毎年新しいものが出ますので、最新のものを確認しましょう。
ちなみに、令和5年の場合は、3月から健康保険料率が変わりましたので、3月以降は
基本給 | 250,000 |
健康保険料 | 13,221 |
厚生年金保険料 | 23,790 |
雇用保険料 | 1,250 |
所得税 | 5,200 |
差引支給額 | 206,539 |
となります。
そして、年末調整の差額を12月分の給与で精算する場合は、12月分の給与明細が以下のようになります。
基本給 | 250,000 |
健康保険料 | 13,221 |
厚生年金保険料 | 23,790 |
雇用保険料 | 1,250 |
所得税 | 5,200 |
年末調整還付 | 7,300 |
差引支給額 | 213,839 |
1年分を正確に計算し直すと、余分に徴収している金額が7,300円あったため、差額が還付されます。
ですので、正しい金額に計算し直された1年分の源泉徴収税額(1年分の所得税額)は
となります。
12月分または翌年1月分の給与で精算することが多いですが、年末調整が済むと、会社から以下のような源泉徴収票が、本人へ交付されます。
右上の源泉徴収税額の項目が、1年間の所得税額ですので、確認しておきましょう。
なお、年末調整は、給与を支払う会社にとっては、絶対にしなければならない義務で、源泉徴収票も本人に必ず交付されます。
また、1社の給与所得しかない方は、年末調整だけで済ませてもいいですし、年末調整をした上で、自分でさらに確定申告をすることもできます。
給与所得の確定申告は、スマホでもできますし、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」は年々便利になっています。
やったことがない方は、ぜひ一度試してみて下さいね。
勤務先が複数ある場合はどうなりますか?
はい。2社目以降は事情が異なります。
1社だけに勤務している場合は、上述のとおり
を提出し、これにより、源泉徴収税額表の
を使用して計算することになります。
そして、年末に在籍していれば、一定の場合を除いて
になります。
ただし、この取り扱いは1社のみです。
この1社のみの給与を
といい、2社目以降はすべて
と呼ばれます。
従たる給与の支払先へは
を提出することはできません。
従って、源泉徴収税額は税額表の
を使用して計算することになります。
そして、年末に在籍していても
にはなりません。
例えば
の場合、給与明細は以下のようになります。(住民税および社会保険料については除外しています。)
基本給 | 150,000 |
雇用保険料 | 750 |
所得税 | 8,700 |
差引支給額 | 140,550 |
社会保険料控除後の金額は
ですので、源泉徴収税額表によると
の行ですので
になります。
そして、年末または翌年1月頃に、年末調整が済んでいない状態の源泉徴収票が、会社から交付されます。
年末調整はしてもらえませんが、源泉徴収票の本人への交付は義務ですので、必ず受け取りましょう。
従たる給与の源泉徴収票は、中段の「摘要」欄に
と記載することが一般的です。
また、下段の
の箇所に印(*)が入ります。
そして、右上の源泉徴収税額は、1年分を合計しただけの金額で、正しい金額に計算し直されたものではありません。
従って、特定の場合を除いて
の2枚(または3枚以上)を合わせて、確定申告をすることになります。
なお、同時に2社以上で勤務するのではなく、年の途中で転職した場合には、年末に在籍している会社で、前職分と合わせて年末調整をしてもらうことができます。
乙欄の源泉徴収税額は、納めすぎであることが多く、確定申告によって還付となる可能性が高いです。
給与所得の確定申告は、スマホでもできますので、試してみて下さいね。
報酬・料金等の源泉徴収
個人が支払を受ける報酬や料金等で、源泉徴収が必要なものは、大きく分けて以下の8区分に分類されています。
そして、それぞれについて、該当するもの、該当しないものが細かく定められています。
国税庁が毎年作成している「源泉徴収のあらまし」に詳しく記載されていますので、最新のものを確認すると良いですね。
税率については
というものがほとんどですが、区分によっては、別途算式や控除額等が定められているものもあります。
例えば
の区分に
がありますが、税率は
です。
消費税の分はどうなりますか?
明確に区分している場合は、税抜金額を対象とすることができます。
報酬・料金等に消費税が含まれている場合、原則として
が源泉徴収の対象となります。
ただし、請求書等で
が明確に区分されている場合は
を対象とすることができます。
例えば、1年間の報酬が以下のような金額だったとします。
1月 | 220,000 |
2月 | 165,000 |
3月 | 330,000 |
4月 | 275,000 |
5月 | 440,000 |
6月 | 385,000 |
7月 | 220,000 |
8月 | 165,000 |
9月 | 330,000 |
10月 | 275,000 |
11月 | 440,000 |
12月 | 385,000 |
税込金額を対象とした場合、各月の源泉徴収税額と手取額は、以下のようになります。
報酬(税込) | 源泉徴収税額 | 手取額 | |
---|---|---|---|
1月 | 220,000 | 22,462 | 197,538 |
2月 | 165,000 | 16,846 | 148,154 |
3月 | 330,000 | 33,693 | 296,307 |
4月 | 275,000 | 28,077 | 246,923 |
5月 | 440,000 | 44,924 | 395,076 |
6月 | 385,000 | 39,308 | 345,692 |
7月 | 220,000 | 22,462 | 197,538 |
8月 | 165,000 | 16,846 | 148,154 |
9月 | 330,000 | 33,693 | 296,307 |
10月 | 275,000 | 28,077 | 246,923 |
11月 | 440,000 | 44,924 | 395,076 |
12月 | 385,000 | 39,308 | 345,692 |
そして、この報酬について、支払先が税務署へ提出する支払調書は、以下のようになります。
一方、請求書等で、報酬(税抜金額)と消費税額を明確に区分している場合は、以下のようになります。
報酬(税抜) | 消費税額 | 源泉徴収税額 | 手取額 | |
---|---|---|---|---|
1月 | 200,000 | 20,000 | 20,420 | 199,580 |
2月 | 150,000 | 15,000 | 15,315 | 149,685 |
3月 | 300,000 | 30,000 | 30,630 | 299,370 |
4月 | 250,000 | 25,000 | 25,525 | 249,475 |
5月 | 400,000 | 40,000 | 40,840 | 399,160 |
6月 | 350,000 | 35,000 | 35,735 | 349,265 |
7月 | 200,000 | 20,000 | 20,420 | 199,580 |
8月 | 150,000 | 15,000 | 15,315 | 149,685 |
9月 | 300,000 | 30,000 | 30,630 | 299,370 |
10月 | 250,000 | 25,000 | 25,525 | 249,475 |
11月 | 400,000 | 40,000 | 40,840 | 399,160 |
12月 | 350,000 | 35,000 | 35,735 | 349,265 |
そして、この報酬について、支払先が税務署へ提出する支払調書は、以下のようになります。
なお、支払調書は本来、支払先が税務署へ提出する書類で、本人への交付義務はありません。
ただし、慣習として本人にも交付してくれる支払先があります。
ですので、確認に使用する程度なら構いませんが
支払調書が無いと、売上も源泉徴収税額もわからない。
という状況は避けたいですね。
源泉徴収をする義務があるのは支払先ですが、自分の報酬額や源泉徴収税額については、自分で請求書を発行し、自分自身できちんと把握しておきましょう。
なお、報酬・料金等の源泉徴収税額については、主に
として確定申告をすることで、正しい税額に精算されます。
事業所得の記帳や確定申告については、以下を参考にして下さい。
雑所得の確定申告については、以下を参考にして下さい。
おわりに
源泉徴収が必要なもののうち
について解説しました。
新しい仕事の形態が増え、かつてのような
という方は減りつつあります。
個人事業主の方はもちろん、会社員の方も、源泉徴収のしくみは知っておきたいですね。