PR

給与等と報酬・料金等の源泉徴収:確定申告と年末調整

税金
税金

業務委託(個人事業)1社と、アルバイトが2社あります。

確定申告はどうなりますか?

くま税理士
くま税理士

所得の区分と源泉徴収制度について確認しましょう。

源泉徴収が必要なもののうち

  • 給与等の源泉徴収
  • 報酬・料金等の源泉徴収

について解説します。

源泉徴収の概要

所得税は

  • 申告納税制度

といって

  • 自分で自分の所得と税金を計算して申告する

ことになっていますが、一部の所得については、併せて

  • 源泉徴収制度

が採用されています。

源泉徴収制度は、支払者が、支払の際に、支払金額から所得税を差し引いて国に納付するというものです。

そして、源泉徴収された所得税は、最終的に確定申告や年末調整で精算されます。

確定申告は、すべての収入が対象で、すべての控除を申告することができます。

一方、年末調整は、給与所得がある方のための特別な制度で、確定申告の一部を会社が代わりにしてくれる制度です。

給与等の源泉徴収

給与等とは、使用人や役員に対する、俸給、給料、賃金、歳費、賞与のほか、名称を問わず、給与の性質を有する収入のことです。

これらの給与等については、勤務先が、毎月支払の際に、あらかじめ所得税を差し引いて、国に納めています。

これを源泉徴収といいますが、このときの源泉徴収税額がいくらになるかは

  • 源泉徴収税額表

で決められています。

源泉徴収税額表
国税庁「令和5年分 源泉徴収税額表」より

通常入社時に、会社へ

  • 扶養控除等申告書

という書類を提出します。

これにより、源泉徴収税額表の

  • 甲欄

を使用して計算することになります。

そして、年末に在籍していれば、一定の場合を除いて

  • 年末調整の対象者

ということになります。

例えば

  • 月給:250,000円
  • 扶養親族等:0人

の場合、給与明細は以下のようになります。(住民税については除外しています。)

基本給250,000
健康保険料13,169
厚生年金保険料23,790
雇用保険料1,250
所得税5,200
差引支給額206,591
給与明細:令和5年1月・2月(兵庫県40歳未満の場合)

社会保険料控除後の金額は

  • 250,000 - ( 13,169 + 23,790 + 1,250 ) = 211,791円

ですので、源泉徴収税額表によると

源泉徴収税額表02
国税庁「令和5年分 源泉徴収税額表」より
  • 211,000円以上 213,000円未満

の行で、扶養親族等が0人の場合は

  • 5,200円

です。

なお、源泉徴収税額表は、毎年新しいものが出ますので、最新のものを確認しましょう。

ちなみに、令和5年の場合は、3月から健康保険料率が変わりましたので、3月以降は

基本給250,000
健康保険料13,221
厚生年金保険料23,790
雇用保険料1,250
所得税5,200
差引支給額206,539
給与明細:令和5年3月~11月(兵庫県40歳未満の場合)

となります。

そして、年末調整の差額を12月分の給与で精算する場合は、12月分の給与明細が以下のようになります。

基本給250,000
健康保険料13,221
厚生年金保険料23,790
雇用保険料1,250
所得税5,200
年末調整還付7,300
差引支給額213,839
給与明細:令和5年12月(兵庫県40歳未満の場合)

1年分を正確に計算し直すと、余分に徴収している金額が7,300円あったため、差額が還付されます。

  • 徴収:5,200円 × 12 = 62,400円
  • 還付:7,300円

ですので、正しい金額に計算し直された1年分の源泉徴収税額(1年分の所得税額)は

  • 62,400 - 7,300 = 55,100円

となります。

12月分または翌年1月分の給与で精算することが多いですが、年末調整が済むと、会社から以下のような源泉徴収票が、本人へ交付されます。

源泉徴収票(年調済)
源泉徴収票

右上の源泉徴収税額の項目が、1年間の所得税額ですので、確認しておきましょう。

なお、年末調整は、給与を支払う会社にとっては、絶対にしなければならない義務で、源泉徴収票も本人に必ず交付されます。

また、1社の給与所得しかない方は、年末調整だけで済ませてもいいですし、年末調整をした上で、自分でさらに確定申告をすることもできます。

給与所得の確定申告は、スマホでもできますし、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」は年々便利になっています。

やったことがない方は、ぜひ一度試してみて下さいね。

勤務先が複数ある場合はどうなりますか?

くま税理士
くま税理士

はい。2社目以降は事情が異なります。

1社だけに勤務している場合は、上述のとおり

  • 扶養控除等申告書

を提出し、これにより、源泉徴収税額表の

  • 甲欄

を使用して計算することになります。

そして、年末に在籍していれば、一定の場合を除いて

  • 年末調整の対象者

になります。

ただし、この取り扱いは1社のみです。

この1社のみの給与を

  • 主たる給与

といい、2社目以降はすべて

  • 従たる給与

と呼ばれます。

従たる給与の支払先へは

  • 扶養控除等申告書

を提出することはできません。

従って、源泉徴収税額は税額表の

  • 乙欄

を使用して計算することになります。

そして、年末に在籍していても

  • 年末調整の対象者

にはなりません。

例えば

  • 月給:150,000円

の場合、給与明細は以下のようになります。(住民税および社会保険料については除外しています。)

基本給150,000
雇用保険料750
所得税8,700
差引支給額140,550
給与明細:令和5年1月~12月

社会保険料控除後の金額は

  • 150,000 - 750 = 149,250円

ですので、源泉徴収税額表によると

源泉徴収税額表(乙)
国税庁「令和5年分 源泉徴収税額表」より
  • 149,000円以上 151,000円未満

の行ですので

  • 8,700円

になります。

そして、年末または翌年1月頃に、年末調整が済んでいない状態の源泉徴収票が、会社から交付されます。

年末調整はしてもらえませんが、源泉徴収票の本人への交付は義務ですので、必ず受け取りましょう。

源泉徴収票(年調未済)

従たる給与の源泉徴収票は、中段の「摘要」欄に

  • 年調未済

と記載することが一般的です。

また、下段の

  • 乙欄

の箇所に印(*)が入ります。

そして、右上の源泉徴収税額は、1年分を合計しただけの金額で、正しい金額に計算し直されたものではありません。

従って、特定の場合を除いて

  • 主たる給与の支払先から交付された源泉徴収票(年末調整済)
  • 従たる給与の支払先から交付された源泉徴収票(年調未済)

の2枚(または3枚以上)を合わせて、確定申告をすることになります。

なお、同時に2社以上で勤務するのではなく、年の途中で転職した場合には、年末に在籍している会社で、前職分と合わせて年末調整をしてもらうことができます。

乙欄の源泉徴収税額は、納めすぎであることが多く、確定申告によって還付となる可能性が高いです。

給与所得の確定申告は、スマホでもできますので、試してみて下さいね。

報酬・料金等の源泉徴収

個人が支払を受ける報酬や料金等で、源泉徴収が必要なものは、大きく分けて以下の8区分に分類されています。

  • 原稿料や講演料など
  • 弁護士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
  • 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
  • プロスポーツ選手、モデル、外交員などに支払う報酬・料金
  • 映画、演劇その他芸能、テレビ放送等の出演等の報酬・料金など
  • ホステスなどに支払う報酬・料金
  • 役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
  • 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

そして、それぞれについて、該当するもの、該当しないものが細かく定められています。

国税庁が毎年作成している「源泉徴収のあらまし」に詳しく記載されていますので、最新のものを確認すると良いですね。

※報酬・料金等は、令和5年版の場合は「第5 報酬・料金等の源泉徴収事務」に掲載されています。

税率については

  • 10.21%(報酬額が多い場合は20.42%)

というものがほとんどですが、区分によっては、別途算式や控除額等が定められているものもあります。

例えば

  • 原稿料や講演料など

の区分に

  • スポーツの実技指導等

がありますが、税率は

  • 報酬・料金等の10.21%
    (1回の支払額が100万円を超える場合は20.42%)

です。

報酬料金
国税庁「令和5年版 源泉徴収のあらまし」より

消費税の分はどうなりますか?

くま税理士
くま税理士

明確に区分している場合は、税抜金額を対象とすることができます。

報酬・料金等に消費税が含まれている場合、原則として

  • 税込金額

が源泉徴収の対象となります。

ただし、請求書等で

  • 報酬・料金の金額(税抜金額)
  • 消費税額

が明確に区分されている場合は

  • 税抜金額

を対象とすることができます。

例えば、1年間の報酬が以下のような金額だったとします。

1月220,000
2月165,000
3月330,000
4月275,000
5月440,000
6月385,000
7月220,000
8月165,000
9月330,000
10月275,000
11月440,000
12月385,000

税込金額を対象とした場合、各月の源泉徴収税額と手取額は、以下のようになります。

報酬(税込)源泉徴収税額手取額
1月220,00022,462197,538
2月165,00016,846148,154
3月330,00033,693296,307
4月275,00028,077246,923
5月440,00044,924395,076
6月385,00039,308345,692
7月220,00022,462197,538
8月165,00016,846148,154
9月330,00033,693296,307
10月275,00028,077246,923
11月440,00044,924395,076
12月385,00039,308345,692

そして、この報酬について、支払先が税務署へ提出する支払調書は、以下のようになります。

支払調書(税込)

一方、請求書等で、報酬(税抜金額)と消費税額を明確に区分している場合は、以下のようになります。

報酬(税抜)消費税額源泉徴収税額手取額
1月200,00020,00020,420199,580
2月150,00015,00015,315149,685
3月300,00030,00030,630299,370
4月250,00025,00025,525249,475
5月400,00040,00040,840399,160
6月350,00035,00035,735349,265
7月200,00020,00020,420199,580
8月150,00015,00015,315149,685
9月300,00030,00030,630299,370
10月250,00025,00025,525249,475
11月400,00040,00040,840399,160
12月350,00035,00035,735349,265

そして、この報酬について、支払先が税務署へ提出する支払調書は、以下のようになります。

支払調書(税抜)

なお、支払調書は本来、支払先が税務署へ提出する書類で、本人への交付義務はありません。

ただし、慣習として本人にも交付してくれる支払先があります。

ですので、確認に使用する程度なら構いませんが

支払調書が無いと、売上も源泉徴収税額もわからない。

という状況は避けたいですね。

源泉徴収をする義務があるのは支払先ですが、自分の報酬額や源泉徴収税額については、自分で請求書を発行し、自分自身できちんと把握しておきましょう。

なお、報酬・料金等の源泉徴収税額については、主に

  • 事業所得
    または
  • 雑所得

として確定申告をすることで、正しい税額に精算されます。

事業所得の記帳や確定申告については、以下を参考にして下さい。

雑所得の確定申告については、以下を参考にして下さい。

おわりに

源泉徴収が必要なもののうち

  • 給与等の源泉徴収
  • 報酬・料金等の源泉徴収

について解説しました。

新しい仕事の形態が増え、かつてのような

  • 1社だけに勤務して年末調整のみ

という方は減りつつあります。

個人事業主の方はもちろん、会社員の方も、源泉徴収のしくみは知っておきたいですね。

タイトルとURLをコピーしました