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所得金額調整控除(子ども等・年金等):令和2年分の年末調整と確定申告から開始

税金
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令和2年分の年末調整や確定申告から、給与所得控除、公的年金等控除、基礎控除などの金額が変わります。

  • サラリーマンは結局同じらしいよー。
  • 青色申告の人はe-Taxすると得するらしいよー。

なんて聞いたことがありませんか?

控除額10万円が、各控除を行ったりきたり。

合計で帳尻を合わせて、おそらく半数以上のサラリーマンには影響がない改正です。

でも帳尻合わせがうまくいかないパターンがあるんです。

それが

  • 給与収入と年金収入の両方がある方

これを調整するために作られたのが「給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除」です。

もうひとつの「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」は、実質増税となる高収入の方のうち特定の方向けの救済措置です。

  • どんな控除なの?
  • 条件は?
  • いつ控除するの?

といった疑問について解説していきます。

所得金額調整控除

まず、帳尻合わせがうまくいったパターンをみてみましょう。

Aさん
Aさん

サラリーマンのAさんは年収600万円です。

令和元年令和2年
給与所得控除174万円164万円
基礎控除38万円48万円
合計212万円212万円

10万円が行ったりきたりしただけで、プラスマイナスゼロですね。

では

Bさん
Bさん

給与と年金の両方があるBさん(68歳)。
給与は150万円、年金は250万円です。

令和元年令和2年
給与所得控除65万円55万円
公的年金等控除120万円110万円
基礎控除38万円48万円
合計223万円213万円

所得控除の合計額が減ってしまいました。

このままだとBさんにとっては増税です。

そこで考え出されたのが所得金額調整控除です。

給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除

略称で「所得金額調整控除(年金等)」といいます。

給与と年金の両方がある方は、さらに10万円控除することができる制度です。

そうすると

令和元年令和2年
給与所得控除65万円55万円
公的年金等控除120万円110万円
所得金額調整控除(年金等)10万円
基礎控除38万円48万円
合計223万円223万円

となり、所得控除の合計額が去年までと同じになります。

ただし、所得金額調整控除(年金等)は年末調整ではできませんので、確定申告の際に適用します。

国税庁の確定申告書等作成コーナー(令和2年分は令和3年1月公開予定)では、おそらく「給与と年金を両方入力したら自動計算」といった感じになるんじゃないかなと思いますが、念のため確認してくださいね。

子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除

こちらの略称は「所得金額調整控除(子ども等)」です。

Cさん
Cさん

サラリーマンのCさんは、身体障害者手帳(2級)を持っています。
収入は給与だけですが、年収1,000万円です。

令和元年令和2年
給与所得控除220万円195万円
基礎控除38万円48万円
合計258万円243万円

所得控除の合計が15万円も減ってしまいました。

半数以上のサラリーマンには影響がないと思われる今回の改正ですが、高収入の方は増税になります。

また、合計所得金額が2,400万円を超える方は、基礎控除も減額されます。

合計所得金額基礎控除額(令和2年)
2,400万円超2,450万円以下32万円
2,450万円超2,500万円以下16万円
2,500万円超0円

すでに配偶者控除では本人の収入に制限がつくようになっていますし、高収入の方々はもう慣れっこでしょうか…。

増税になるのは担税力がある証。
納税額が多いのは名誉なことです。

といった稀有な方もいらっしゃるかもしれませんが

ただでさえ累進課税なのに…。
子どももいて別に余裕があるわけじゃないのに…。

という方もいるかもしれません。

そんな方の負担が増えないように考え出されたのが「所得金額調整控除(子ども等)」です。

給与の年収が850万円を超える方のうち

  • 本人が特別障害者に該当する方
  • 23歳未満の扶養親族がいる方
  • 特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる方

については、なるべく負担が増えないように調整されます。

金額は

(給与収入-850万円)×10%

で計算されますが、最大で15万円という上限があります。

Cさんの場合ですと、ちょうど上限の15万円ですね。

その結果

令和元年令和2年
給与所得控除220万円195万円
所得金額調整控除(こども等)15万円
基礎控除38万円48万円
合計258万円258万円

となり、所得控除の合計額が去年までと同じになります。

所得金額調整控除(子ども等)は年末調整でできますので、会社からもらった書類に記入してください。

確定申告でも適用できますが、年末調整でやってもらった方がいいですよね。

「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の下部に記入欄が用意されていますので、書き忘れないでくださいね。

重複適用について

親族間の重複適用

所得金額調整控除は、基礎控除、給与所得控除、公的年金等控除などの変更に伴って適用される調整です。

つまり、ひとりひとりの個人にかかるものです。

例えば、共働きのDさん夫婦の場合。

Dさん
Dさん

Dさんは、収入が給与だけで、年収が850万円超、子ども(23歳未満の扶養親族)がいます。

Eさん
Eさん

Dさんの配偶者Eさんも、収入は給与だけで年収が850万円を超えています。

おなじみの「扶養控除」は、夫婦どちらかおひとりしか使えませんよね。

でも「所得金額調整控除(子ども等)」は、夫婦ともにそれぞれで適用することができます。

子ども等と年金等の重複適用

ではこちらの場合はどうでしょうか。

Fさん
Fさん

身体障害者手帳(2級)を持っているFさん。
給与の年収は1,000万円。年金の収入もあります。

子ども等にも年金等にも該当しますね。

こういった場合には重複適用が可能です。

  • 所得金額調整控除(子ども等)は年末調整
  • 所得金額調整控除(年金等)は確定申告

で適用することになるかと思いますが、所得金額調整控除は、どちらも給与所得から控除する制度です。

確定申告では、所得金額調整控除(子ども等)適用後の給与所得から、所得金額調整控除(年金等)の金額をさらに控除することになります。

合計所得金額の見積額

では最後はこちらの事例で確認です。

Gさん
Gさん

給与と年金の両方があるGさん。
給与の年収は850万円を超えています。

Hさん
Hさん

Gさんの配偶者Hさんも、給与と年金の両方がありますが、金額は少ないのでGさんは配偶者控除が受けられそうです。
また、Hさんは身体障害者手帳(2級)を持っています。

この場合には

  • Gさんの所得金額調整控除(子ども等)
  • Gさんの所得金額調整控除(年金等)
  • Hさんの所得金額調整控除(年金等)

が適用できます。

そして、Gさんの年末調整の書類に記入する、Hさん(配偶者)の合計所得金額の見積額は、所得金額調整控除(年金等)を考慮した金額になります。

2か所給与の場合も同じですが、会社の年末調整の時点で計算する合計所得金額と、確定申告後の最終的な合計所得金額が異なることもあります。

会社がすべてを把握しているわけではありませんので、ご自身できちんと確認してくださいね。

コラム:青色申告特別控除とe-Tax

今回の基礎控除の変更に伴って、青色申告特別控除の金額も変わりました。

合計所得金額が2,400万円以下の場合
令和元年令和2年
基礎控除38万円48万円
青色申告特別控除65万円55万円

合計は変わりませんね。

ただし、e-Taxで申告(電子申告)をすると、青色申告特別控除が65万円になります。

合計所得金額が2,400万円以下の場合
令和元年令和2年(e-Tax以外)令和2年(e-Tax)
基礎控除38万円48万円48万円
青色申告特別控除65万円55万円65万円
  • 郵送などで申告すると今までどおり
  • e-Taxで申告すると10万円得する

という形です。

税理士に依頼して「e-Taxできません」なんてことはないと思いますが、今までご自身で郵送申告をされてきた方は早めに検討しておいた方がいいですね。

  • e-Taxをしないと損をする

というわけではなく

  • e-Taxをすると得をする

という体裁です。

あまり気が進まなければ今までどおり郵送申告でもいいと思いますが、3月の申告期限ギリギリになって

やっぱりe-Taxでやりたい(汗)

と焦るくらいなら、早めに準備をしておいた方がいいですね。

おわりに

令和2年分の年末調整・確定申告から始まる「所得金額調整控除(子ども等・年金等)」についてお話ししてきました。

ご本人やご家族が該当する場合や、該当する方の年末調整をする予定の会社の方は、早めに確認しておきましょう。

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