愛兎は、昨秋から今春にかけて3回胃拡張になりました。
胃拡張は、一度なると同じような季節に毎年繰り返すことが多いそうです。
もうすぐ「季節の変わり目」がやってきますね。
愛兎の実体験と予防法をご紹介します。
実録:胃拡張体験記
地獄の一夜と夜間診療問題(2020年9月)
初めての異変
秋の気配がしてきた9月末。
20時半頃にペレットを食べ、夜の部屋んぽを終えてケージに戻っていた21時半頃のこと。
ケージ内で、寝ころんだまま必要以上にゴソゴソしています。
気になって見ていると、動いた拍子に「パキッ」という音が聞こえました。
ケージのすのこはプラスチック製で、チモシーや爪などが当たって音がすることはよくあります。
でも少し音が大きかった気がしたので
足をはさんで爪が折れたのかな!?
と心配になり、ケージの外(サークル内)に出してみました。
すると、ほふく前進で右に行ったり左に行ったり。
明らかに様子がおかしいです。
やっぱり怪我をしたのかも!
大急ぎで、夜間診療もしているかかりつけの病院に電話です。
ところが電話はつながらず「診療時間外です。」のアナウンスが…。
おかしいなー?
と、診療時間を確認したところ、日曜日は夜間診療はお休みとのこと。
今日は日曜日!!
でもまだ大丈夫です。
提携している動物病院があり、そちらは深夜に診療をしています。
気持ちを落ち着かせて電話をします。
かかりつけの病院と、うさぎだということを伝えると
来て頂いても構いませんが、今日はうさぎを診られる獣医師がいないんです…。
がーん…
うさぎを診られる獣医さんがいないのに、体調の悪い愛兎を、2時間近くかかる遠方の病院に連れていくかどうかは迷うところです。
一旦電話を切って、近くの夜間診療を探すことに。
インターネットで探し、うさぎに対応していて診療時間が22時半までと掲載されている病院を見つけました。
時刻は22時少し前。焦る気持ちをおさえて電話をすると
もう終了しました。
そ、そうですか…。
万事休す…。
地獄の一夜
そうこうしている間も、苦しそうな愛兎。
足や腕をそっと触ってみましたが、痛そうにする様子はありません。
ケージや周辺に、爪が落ちていたり血の跡が付いていたりもありません。
大好物のペレットと、お水をお皿で出しましたが、まったく口にしません。
チモシーももちろん食べていませんし、うんちもおしっこも出ていません。
怪我ではなさそうな気がしてきましたが、とにかく苦しそうなので、むやみに動かすのはよくなさそうです。
体の周りにフリースを敷きつめて、頭をそっと撫でて見守ります。
深夜2時頃、
さすがにお水ぐらいは飲んだ方がいいんじゃないかな…
と思い、初めてのシリンジに挑戦してみました。
投薬などで必要になるかもしれないので、練習のために買っておいたものです。
水を含んで口元にもっていくと、少しだけ舐めたようでした。
すると、急に立ち上がって、気張るような声(?)を出して、豪快にたっぷりのおしっこをしました。
苦しそうな様子は変わりませんが、少しすっきりしたような顔をしています。
その後も、呼吸は荒く、たまに体をくねらせたりして、とにかく辛そうです。
目の輝きがなくなり「このまま死んでしまうんじゃないか…」と、とても不安になりました。
3時頃から少しウトウトしてしまい、4時頃に、軽快な「カリカリカリカリ…」という音で目が覚めました。
出していたペレットを食べていました。
よかった。生きてた…。
目には輝きが戻り、少し元気になったように見えます。
うんちも少しだけしています。
診療時間開始を待って、病院に向かいました。
世界で一番会いたかった人
翌朝かかりつけの病院へ。
ちょうど主治医の獣医さんが朝から勤務している日でした。
一部始終を話し、獣医さんが念入りに愛兎を診てくれます。
このときの安心感といったらありませんでした。
昨晩から、世界中で一番会いたかった人です。
心の底からホッとしました。
命を救う職業は本当に素晴らしいですね。
まずは、怪我をしていないか全身くまなくチェック。
触診した限りでは怪我ではなさそうということで、体温を計って(お尻に体温計をさします!)、レントゲンを撮ったところ、「急性胃拡張」とのことでした。
胃拡張は、胃腸の動きが悪くなったり、物理的になにかが詰まってしまったりして、胃が膨らんでしまう病気だそうです。
今回の愛兎の場合は少し膨らんでいる程度でしたが、ひどくなると、素人が外から触ってもわかるくらいパンパンに膨らんでしまうそうです。
治療は、胃を動かす薬やビタミン剤などの点滴(首に注射します!)をしてもらいました。
帰ってからは、しばらくおとなしくしていましたが、夜にはすっかり元気になったようで、走り回り、ペレットも牧草もしっかり食べました。
ストレスとりんご(2020年11月)
2回目に胃拡張になったのは、午前中に爪切りに行った日の夜でした。
少しひんやりしてきた11月中旬のことです。
頑張って爪切りに行ったので、帰ってきてからりんごを出してあげました。
いつもは小さいかけらを2、3個食べたら「もういらない」とばかりに走り去って行くのですが、この日はいつもより多めに食べていました。
がんばったし、いいよね。
とあまり気にしていなかったのですが、夜になってなんだか嫌な予感が…。
見ていると、やはり前回同様、ほふく前進を始めてしまいました。
時刻は23時近く。
夜間診療は0時までです。
午前中に診てもらったところなので、とりあえず指示をあおごうと電話をしたところ、主治医の獣医さんはもう勤務を終えていて、別の獣医さんが応対してくれました。
事情を説明したところ
連れてきてください!
と言ってくださったので、静まり返った真夜中の病院へ、0時ギリギリに滑り込みました。
前回と同じく、体温を計って、レントゲンを撮り、やはり胃拡張とのことでした。
りんごをあげすぎたからでしょうか…。うぅぅ…。
それだけが原因ということはないです。
病院に行ったストレスや気温の変化など、たくさんのことが影響します。
また、今回も胃の膨らみ具合は少しでしたが
すごく痛いと思うので
ということで、胃を動かす薬やビタミン剤などに加えて、痛み止めも点滴してもらいました。
胃拡張は、うさぎにとって、すごく痛くて苦しい病気だそうです。
1回目はすぐに病院に行けなかったので、長い時間、自力で痛みと戦っていたんですね。
本当に苦しそうにしていて、見ているのがとても辛かったです。
今回は早めに連れて行くことができて、痛み止めをしてもらえてよかったです。
帰宅後は1時間ぐらい様子を見ていましたが、徐々に苦しそうな様子がなくなっていって、翌朝には元気になっていました。
三寒四温に要注意(2021年3月)
3回目は3月です。三寒四温の寒の日でした。
まだ寒かったのに、油断して気が緩んでいました。
今日ちょっと冷えちゃったかな…。
とうっすらよぎりつつ、人間の晩ごはんを食べようとしていたところ、異変に気づきました。
寝ころんだまま、苦しそうにゴソゴソしています。
時刻は18時。そして日曜日です。
通常診療は19時まで。
せっかくの晩ごはんをロクに味わいもせずに詰め込んで、病院へ急行です。
今日は主治医の獣医さんは勤務していない日。
そして今回は、過去2回に比べて、特に苦しそうでした。
もしかしたら、昼間のもっと早い時間から具合が悪かったのかもしれません。
やはり胃拡張で、前回と同じ処置をしてもらいましたが
念のため、明日もう一度主治医の先生に診てもらってください。
とのこと。
帰宅してからも、4~5時間苦しそうにしていて、なかなか回復しません。
痛み止めもしてもらったのに、ずっと苦しそうにしていて、なかなか寝られませんでした。
翌朝、ペレットはちゃんと食べ、うんちもおしっこも出ているようでしたが、念のため再度病院へ。
レントゲンを撮ったところ、回復はしてきているようでした。
こんなに短い間に3回もなって、今は3歳で若いからいいですが、年をとったら体力がもたなくないですか!?
そう思ってしまうほど、毎回苦しそうでかわいそうになります。
胃拡張になる子は、同じような季節に毎年繰り返すことが多いです。
季節の変わり目には特に注意してあげてください。
今回は油断したせいで、愛兎に辛い思いをさせてしまいました。
そして、過去2回の経験から
病院に行きさえすればすぐに回復する。
と、胃拡張を甘くみていました。
お薬をもらって、無事に元気になりましたが、今後も予防を怠らないように気をつけようと思います。
ちなみに、今回もらったお薬は、胃の動きをよくするもので、目薬のような容器に入っている液体の薬です。
抱っこができない愛兎。
投薬はかなり難しそうですが、そこはよくご存知の獣医さんや看護師さん。
診察室でも、お薬をもらう受付でも、同じアドバイスをしてくれました。
好きな食べ物に、5滴ぐらい垂らしてあげてください。
なるほど! Good idea!
朝晩のペレットに垂らすこと1週間。
お薬も無事に全部のめました。
我が家の胃拡張予防法
うさぎは胃も命
うさぎは食べないと胃が動かないそうです。(人間は食べていなくても勝手に胃が動きます。)
なので一日中食べていなければいけません。
短い間にたて続けに何度も胃拡張になり、食べているかどうかを必要以上に気にするようになりました。
サークルが広いので
眠くて動くのが面倒くさくて食べていないときがあるのかも!
と思い、寝ているところへ、牧草を入れたお皿をもっていくようにしたら
食べるんです!
やっぱり面倒くさかったんだね。
味をしめた飼い主は、小一時間食べていないと気になって、牧草のお皿を近くにもっていきます。
最終的には、牧草を手で口元にもっていって、食べさせるようになりました。
眠そうに迷惑そうに顔をそむけながらも、申し訳程度に1、2本食べてくれます。
よしよし。胃が動いている。
自己満足の飼い主。
獣医さんにこの話をすると
2、3時間食べていなくても大丈夫ですよ。
前に食べたものがまだ胃にあるので。
と笑われました。
ただの睡眠妨害…
心配するあまりやり過ぎてしまいましたが、「動くのが面倒で食べないときがある」というのは間違っていないそうで、近くに牧草を置いてあげるのは良いことだそうです。
お昼間はウトウトして動かないことが多いですが、合間をぬってちょこちょこ食べています。
思いついたときにすぐに食べられるように、近くには牧草をたっぷり置いておいてあげたいですね。
温度と湿度と季節の変わり目
胃拡張の話になると、獣医さんが毎回いちばんに言う言葉が
です。
夏場はみんなエアコンをするので、胃拡張になる子は少ないんです。
とのこと。
つまり、温度の変化が胃拡張の原因になることが多いのだろうということですね。
季節の変わり目には、朝晩の気温差が大きくなることがあります。
「暑い」「寒い」も大切ですが、「変化」にも気をつけたいですね。
また、「うさぎは寒さに強い」と言いますが、冷えにも注意した方がいいと思っています。
胃拡張になった3回とも、冷えたことも原因のひとつではないかと感じているからです。
いずれも、前後の日よりも少し寒く感じる日でした。
実際に、胃拡張のときは低体温になることが多いそうです。
日頃から冷え過ぎていないか注意して、冬場は防寒対策も念入りにしましょう。
ちなみに愛兎はフローリングで寝そべるのが好きで、真冬は
おなか冷えないかな…。
と心配になります。
かと言って、気に入っているスペースを、マットや敷物でガッチリ塞いでしまうのもかわいそうなので、真冬はフリースを敷いています。
すぐに跳ねのけられてしまうのですが…。
「うさぎを診療できる病院」問題
すぐに診てもらえない地獄
少しでも様子がおかしければ、すぐに病院に行く。
そんなことは言われなくてもわかっていますよね。
うさぎが得意で信頼できる獣医さんに診てもらえるなら、すぐに連れていきたいですよね。
でも無いんです。
開いてないんです。
愛兎は幸いにも、近くにうさぎを診られる病院があって、夜間診療にも助けられたことがあります。
もっと都会なら、もっと近くにいつでも診てもらえるところがあるかもしれません。
でも地域によっては、一番近い動物病院が車で何時間もかかるというところもあります。
しかもうさぎを診られるかわからなかったり、平日の昼間でもお休みだったり。
獣医さんは大学受験の時点でかなり狭き門のようで、中でもうさぎが診られる獣医さんは、想像以上に少ないです。
そして、緊急の夜間診療となると、見つけるのはさらに困難です。
たいていのうさ飼いさんは、朝と夜に掃除や部屋んぽをするのが一般的です。
お勤めの方なら、朝は時間がないので夜にたっぷり遊んであげる、という方も多いと思います。
となると、必然的に異変に気づくのは夜になります。
でも夜間診療が見つからないと、不安な夜を過ごし、翌朝いちばんに病院へ駆け込む、という事態に陥ります。
わたしも経験しましたが、すぐに診てもらえないという状況は本当に地獄でした。
解決策(その1):理想
理想論ですが、いちばん良いのは、24時間365日、近隣のどこかで必ず診てもらえるようにしておくことです。
病院の探し方は、こちらの動画が参考になります。
【うさぎ診療が得意な動物病院の超簡単な見つけ方】獣医師が教える うさぎの診療技術、知識が高い動物病院の検索方法、見分け方:うさぎの飼い方Vol.17
うさぎちゃんねるさん(YouTube) より
体調の悪いときに初めての病院に行くのは不安なので、元気なときに爪切りなどで一度行ってみておくといいかもしれません。
また、かかりつけなら通常診療の時間外でも診てもらえる病院もあります。
移動距離や時間も考慮して、元気なときに探しておけるといいですね。
…とは言っても、実際には難しいです。
愛兎も、当初は
うさぎを診られるかかりつけの病院が、年中無休で夜間診療あり。
深夜は提携の動物病院があるから完璧!
と思っていましたが、上記(初めての異変)のように見事に撃沈。
その後、夜間診療の縮小などもあって、「いつでも近くで」は難しい状況です。
解決策(その2):実用
そこで日頃は
ようにしています。
ポイントは2点。
です。
例えば、愛兎には、たまに野菜をおやつとしてあげていますが、このような「毎日していることではないこと」は、主治医の獣医さんの勤務日を確認してからするようにしています。
といった具合です。
そのほかにも、初めての食べ物や、うさぎ用品の新調、部屋の模様替え、ケージの大掃除(月1回程度の丸洗い)など、いつもと違うことは
にするようにしています。
また、かかりつけの病院の診療終了時間を意識しておくこともオススメです。
その日の診療時間が終了する1~2時間前ぐらいに
今日は元気かな?
おかしなところはないかな?
と、食べているところやうんちなどを確認したり、しつこく(!)ナデナデしたりしています。
異変に気づいたとしても病院に間に合う時間に、念入りに「本日の体調」を観察しておくと少しは安心できます。
ちなみに、ストーカーのように主治医の獣医さんのスケジュールを確認することになりますので、不審に思われないように注意しましょう(笑)
もう勤務表出てましたよ!(本人より先に確認)
えっ!
解決策(番外編):こんなのあったらいいな
うさぎを診療できる病院や獣医さんがとても少ないことを知り
うさぎの119番があったらいいのにな…。
人間の病院の「今日の当直」を、うさぎ専門の獣医さんたちでやってくれないかな…。
と思いました。
うさぎが得意な獣医さんで全国ネットワークを構築し、地域ごとに「今日の当直」を決めて、近くの信頼できる診療中の病院を紹介してくれたりするといいなと思いました。
相談だけでもいいんです…。
診てもらえるまでに時間がかかる場合は、その間、何をしてあげたらいいのかとても不安です。
実際に診てみないとわからないとは思いますが、口頭で聞いただけや写真や動画を観ただけで、わかったり予想がついたりすることもあると思います。
わからないから触っちゃダメ!
と言ってくれれば、それだけでも、余計な間違ったことをしなくてすみます。
うさぎの不調は、急を要することが多いです。
全国各地どこに住んでいても、良い獣医さんに出会えて、適切な診療をしてもらえるようになるといいなと思います。
地獄の一夜にできること
解決策はいかがでしたでしょうか。
ここまでしても、やっぱり不安な一夜を過ごさなければならないことがあると思います。
特にお勤めの方は、お昼間はペットカメラを設置されたりしていると思いますが、映像だけで体調を確認するのは困難です。
どうしてもすぐに診てもらえないときにどうしたらいいのか、主治医の獣医さんに聞きました。
初めて胃拡張になった地獄の一夜に迷ったことは以下の3つです。
回答は
温めて、触らずにそっとしておいてあげてください。
とのことでした。
愛兎の場合は、1回目は怪我の可能性があったので、温めるか冷やすかを迷いましたが、胃拡張が疑われる場合は、温めるのが良いそうです。
胃の動きが悪くなっているのならマッサージは良さそうですが、物理的に詰まってしまっている場合もあるので、触らない方が良いそうです。
また、すでに胃が動かなくなっているのなら、無理やり食べさせたりするのは良くないですね。
以下の動画で獣医さんが詳しく説明してくださっていますので、ぜひご覧ください。
うさぎの急性うっ滞【やってはいけない3つの対処法】#58 うさぎの病気 Vol.22
うさぎちゃんねるさん(YouTube) より
「うさぎは不調を隠す」といいますが、幸い愛兎は、胃拡張になった3回とも「ほふく前進」というわかりやすい行動をしてくれました。
具合が悪そうでも、胃拡張以外の病気や怪我の場合もありますので、ひとまず
ことにしようと思います。
また、地獄の一夜の救世主といえば、SNSのうさ飼いさんたちではないでしょうか。
調子が悪いときにSNSなんて…と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、緊急時こそ助けになる存在だと思います。
励ましてもらえたり、ベテランさんにアドバイスをもらえたり、特に病院の情報は、たくさんの方が親切に教えてくださっているのをよく見かけます。
私も初めて胃拡張になったときに「SNSで聞いてみようか…」と悩みました。
思いついたのが深夜だったので諦めましたが、もっと早い時間に聞いてみていたら、すぐに診てもらえる病院が見つかったかもしれません。
うさ飼いさんたちは、みんなうさぎの健康と幸せを願っていて、うさぎの不調が急を要する場合が多いこともよくご存知です。
愛兎の命がいちばん大切です。
躊躇せずうさ飼いさんたちを頼りましょう。
おわりに
2歳半まで病気になったことがなく、健康優良兎だと思っていた愛兎が、立て続けに胃拡張になりました。
もしかしたら、それまでは気づいてあげられていなかっただけで、夜中に一人で苦しんでいた日があったのかもしれません。
胃拡張は、注意していても繰り返してしまうことが多いそうです。
今シーズンも、油断せずに日々観察し、食事管理や温度管理などに気をつけようと思います。