個別対応方式と一括比例配分方式:仕入税額控除の計算方法

税金
税金

新設法人や新規開業、または、インボイス発行事業者の登録によって

消費税の申告がはじめてです。

という場合に、必ず質問を受けるのが

  • 税抜 or 税込
  • 割戻し or 積上げ
  • 個別対応 or 一括比例配分

の選択についてです。

くま税理士
くま税理士

消費税の3大「二択」ですね。

経理方式(税抜 or 税込)と、税額の計算方法(割戻し or 積上げ)については、過去に記事を書きました。

今回は、最後の砦である

  • 個別対応方式
  • 一括比例配分方式

について

  • 仕入税額控除の原則

を詳しく解説するとともに、両方式の計算方法や選択方法をご紹介します。

消費税の

くま税理士
くま税理士

ほんとの仕組みがわかると、両者の違いが見えてきますよ。

少々複雑ですが、順を追って理解を進めていきましょう。

なお、簡易課税の場合は、この選択はありません。

一般課税(※)を前提にご説明します。

(※)「原則課税」「本則課税」と呼ばれる場合もあります。

仕入税額控除の原則

消費税の納付額は

消費税の納付額

預かった消費税(売上) - 支払った消費税(仕入) = 納付する消費税

で計算しますが、この

  • 支払った消費税を差し引く

ことを

  • 仕入税額控除

といいます。

なぜ仕入税額控除ができるかというと

  • うしろの人(売上先)が払う

からです。

あらまし
国税庁:消費税のあらまし(令和6年6月)より

それぞれの取引段階で、税負担は売上先へ移転し、最終的に消費者が負担することになります。

この仕組みを

  • 税の転嫁

といいます。

仕入税額控除を行うことで、二重三重の課税による消費税の累積を排除しています。

したがって、仕入税額控除は、あとで売り上げたときに

  • 預かった消費税

が発生することを前提に、認められるものです。

では、次のような場合はどうでしょうか。

消費税には、非課税となる取引があります。

限定列挙といって、以下の13項目の取引に限られています。

  • 土地の譲渡・貸付け
  • 有価証券・支払手段等の譲渡
  • 利子・保険料等を対価とする取引
  • 郵便切手類・印紙・物品切手等の譲渡
  • 行政手数料・為替手数料
  • 社会保険医療
  • 介護保険サービス・社会福祉事業
  • 医師等による助産
  • 火葬料・埋葬料
  • 身体障害者用物品の譲渡等
  • 学校の授業料・入学検定料・入学金等
  • 教科用図書の譲渡
  • 住宅の貸付け

たとえば、車いすの製造業者は、材料の購入時に消費税を支払いますが、販売時には消費税を預かりません。

このような、非課税売上のための課税仕入れについては、仕入税額控除はできません。

これが、本来の消費税の仕組みです。

うちは非課税売上が少しありますが、支払った消費税の全額を差し引くことができていますよ。

くま税理士
くま税理士

はい。一定の要件を満たす場合は、全額控除できます。

一定の要件とは

  • 課税売上割合:95%以上
    かつ
  • 課税売上高:5億円以下

です。

課税売上割合は、以下の計算式で算出される割合です。

課税売上割合
課税売上割合

95%以上というのは

  • 非課税売上が無い
    または
  • 非課税売上がごく僅か

ということですね。

そのような

  • ほとんどが課税売上

という事業者であれば、すべての取引について転嫁が行われているものとみなして、簡便的に全額控除を認めようという規定です。

少額不追及の観点もありますが、主な目的は事務負担の軽減ですね。

課税売上高が5億円以下という要件については、売上規模の大きな事業者であれば、僅少な非課税売上であっても無視できないことが、理由のひとつとして挙げられます。

そして、複雑な事務処理も可能であると考えられるため、全額控除は認められません。

なお5億円の判定は、1年分の課税売上高で行いますので、課税期間の短縮をしている場合は、年換算をする必要があります。

1月ごとなら4,200万円弱、3月ごとなら1億2,500万円ですね。

仕入税額控除については、便宜上、全額控除を前提として説明されることが多いですが、実は全額控除は、特定の事業者だけが適用することができる、特例的な計算方法です。

消費税の本来の仕組みに従って、原則的な計算をする場合は、売上区分に応じて、仕入税額控除の可否と金額が決まります。

そして、その原則的な計算をする場合の方式として

  • 個別対応方式
  • 一括比例配分方式

の2つがあり、いずれかを選択することになっています。

以上を踏まえて、両者の具体的な計算方法と選択方法を確認しましょう。

具体的な計算方法と選択

個別対応方式

個別対応方式は、課税仕入れを

  • 課税売上対応分
  • 非課税売上対応分
  • 共通対応分

に区分して計算します。

課税売上対応分は、全額が仕入税額控除の対象です。

非課税売上対応分は、全額が仕入税額控除の対象外です。

共通対応分は、原則として、課税売上割合相当額が仕入税額控除の対象となります。

したがって、仕入税額控除額の計算式は

個別対応方式

課税売上対応分 + 共通対応分 × 課税売上割合

となります。

一括比例配分方式

一括比例配分方式では、課税仕入れの税額の合計額のうち、課税売上割合相当額が仕入税額控除の対象となります。

したがって計算式は

一括比例配分方式

課税仕入れの税額の合計額 × 課税売上割合

となります。

選択方法

個別対応方式と一括比例配分方式の選択については、事前の届出は不要です。

確定申告の際に、両方を計算し、有利な方を選択することもできます。

一般的に、個別対応方式の方が控除額が大きくなる(有利となる)ことが多いです。

ただし、個別対応方式を選択するためには、すべての課税仕入れについて区分を明らかにしておく必要があり、事務負担は大きくなります。

区分が明らかにされていない場合は、一括比例配分方式しか選択できません。

また、一括比例配分方式を選択した場合は、2年間継続適用しなければなりませんが、個別対応方式については、継続適用の要件はありません。

おわりに

消費税の

  • 仕入税額控除

について解説するとともに

  • 個別対応方式
  • 一括比例配分方式

の計算方法と選択方法をご紹介しました。

この二択を含め

  • 税抜 or 税込
  • 割戻し or 積上げ
  • 個別対応 or 一括比例配分

のご質問が多いのは、会計ソフトの初期設定で選択する必要があるからですね。

それまで、消費税の経理処理や申告をしたことがほとんどなく

さあ、これから始めるぞ。

という段階で選ぶのは、なかなか難しいですよね。

消費税の仕組みは大変複雑ですので、事前にすべてを理解しておくことは不可能です。

まずは、自社(自分)に今すぐ関係のある内容なのかを確認し、申告までに決めればよいことであれば、ひとまず1か月分だけでも構いませんので、処理を進めてみましょう。

処理を続けるうちに、わかってくることがたくさんあります。

そして、当面自社(自分)には関係のないことだと判断した内容については、後学のためにも、徐々に理解を深めていけるといいですね。

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