役員の退職金といえば、臨時の多額の費用ですよね。
それがいつの損金になるのかは、気になるところです。
という場合もありますよね。
役員退職給与の損金算入時期についてお話ししていきます。
役員退職給与の損金算入時期
概要:原則と例外
役員退職給与の損金算入時期は、株主総会で支給額が確定した日の属する事業年度が原則です。
通常は、株主総会で金額を決めて、その後支払となりますよね。
この確定日と支払日が同じ事業年度なら、なにも迷うことはありません。
株主総会で支給額が確定した日の属する事業年度
でも支払う時期がズレてしまって、その支払った事業年度の損金としたいときってありますよね。
そういった場合には、その支払った事業年度に損金経理をすることで例外として認められます。
支払った日の属する事業年度
※支払った日の属する事業年度において損金経理をした場合
では実際に例をみてみましょう。
例外の経理処理(1):当期確定・翌期支払
まずは後払いになってしまうとき。
当期に確定、翌期に支払、そして翌期の損金としたい場合です。
原則だと、当期の損金です。

支給額は今期の株主総会で確定したんですが、資金繰りが厳しくて実際の支払いは翌期になりそうです。
翌期は増収予定ですし、退職金は翌期の損金としたいんですが…。
こんな場合には
- 当期株主総会で支給額が確定
経理:処理なし
- 翌期支払い
経理:(役員退職給与)20,000 / (現金預金)20,000
とすることで、法人税の計算においても、翌期の損金とすることができます。
例外の経理処理(2):当期支払・翌期確定
では逆の場合はどうでしょうか。株主総会で確定する前に支払ったとき。
当期に支払、翌期に確定、そして当期の損金としたい場合です。
原則だと翌期の損金です。

死亡退職金なので、翌期の株主総会前に、取締役会で決めて早めに支給しました。
できれば当期の損金としたいんですが…。
死亡退職金は相続財産になりますし、ご遺族の生活や相続税の申告のためにも、早めに金額を確定させて支給してあげたいですよね。
そんなときには、先に取締役会で決議し、株主総会であとから承認を得るという手順で、早めに支給することがあります。
こんな場合も
- 当期取締役会で支給額を決議・支払い
経理:(役員退職給与)20,000 / (現金預金)20,000
- 翌期株主総会で確定(承認)
経理:処理なし
とすることで、法人税の計算においても、当期の損金とすることができます。
認められない場合の法人税の調整

損金経理をすればいいんだったら、未払金でもいいんですか?

いえいえ。例外の条件はあくまで支払ったかどうかです。
株主総会で確定する前に支給額を決め損金経理(未払金)をしていたとしても、実際に支払っていなければ、法人税の計算では損金になりません。
下記のような調整をし、確定または支払った日の属する事業年度で損金となります。
- 当期取締役会で支給額を決議
経理:(役員退職給与)20,000 / (未払金)20,000
法人税:未払役員退職給与否認 20,000(加算・留保)
- 翌期株主総会で確定(承認)・支払い
経理:処理なし
法人税:未払役員退職給与認容 20,000(減算・留保)
おわりに
役員退職給与の損金算入時期についてお話ししてきました。
退職金は多額になるため、保険金などと合わせて節税対策にも使われますが、過大であったり、実際には退職の実態がなかったりすると、全額が損金と認められない場合があります。
退職金の位置づけは企業によってさまざま(老後の生活保障、賃金の後払い、功労金、慰労金等)ですが、税金のことだけにとらわれず、金額や支給条件、支給方法などは慎重に検討し、より良い制度にしたいですね。