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絶妙な親切と余裕の順番待ち:ドイツの思い出

雑記
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前回記事内の「コラム:別送品の思い出」で、少しだけドイツをディスったみたいになってしまったので、今回は、ドイツの良いところをご紹介します。

親切の当事者意識と絶妙さ

ドイツで暮らすことになったとき、出発前に、旅行会社に勤務する旅行通の方に話を聞きました。

その方いわく

ドイツ人の親切は「さりげない」ところがいいねん。
「助けてほしいなー。」っていうときに絶妙に助けてくれるねん。

とのこと。

その後ドイツで、私もたくさん親切にしてもらうことになります。

私の荷物なのですが(Part.1)

私の住んでいたKölnに、日本から母と妹が遊びに来たときのことです。

Kölnといえば駅前に大聖堂があり、長い螺旋階段を上までのぼることができます。

私はのぼったことがあったので、Kölnの駅に到着した2人が大聖堂をのぼっている間に、路面電車で数駅の私の住居まで、荷物だけを先に運んであげておくことにしました。

海外旅行用の巨大なスーツケース2つです。

ゴロゴロ転がしながら、どうにか長い長いのぼりのエスカレータに乗りました。

そして、体勢を整えようとしたところ、バランスを崩して、ひとつがエスカレータを滑り落ちていってしまいました。

幸いうしろに人はおらず、スーツケースは途中で止まっています。

取りに行きたいけれど、手元にあるもうひとつを支えておかないとこちらも倒れそうです。

あわわ…。

すると前に立っていたお姉さんが、赤ちゃんを抱いていたのに、半身になって

私これおさえとくから、あなたあれとってきて!

はい!!

大急ぎで落ちていった方を取りに行き、エスカレータをのぼりきる前に無事に戻ってくることができました。

素早い適切な指示で、本当に助かりました。

私の荷物なのですが、自分のことのように必死になって対応してくれて、とても嬉しかったです。

私の荷物なのですが(Part.2)

日本へ帰国する直前に、隣町の友人宅へ泊まりに行くことになりました。

そのときに、ドイツで買ったプリンタをその友人にあげることにしました。

小さなスーツケースのハンドル部分に、プリンタが入った段ボール箱をくくりつけて出発です。

友人宅の最寄り駅に到着し、エレベータを探しましたが見当たりません。

エレベータがない駅なんだね…。

しかたなく「階段はこっち」の表示がある長い通路を歩きます。

前方には、おばさんとお姉さん(多分親子)が歩いています。

ゴロゴロゴロゴロ…。

スーツケースを転がす大きな音が、石畳の通路に響きます。

歩くスピードがこちらの方が速いようで、徐々におばさん達に近づきます。

するとおばさん達はチラチラこちらを振り返って、なにやらヒソヒソと話しています。

これは手伝ってもらう感じのやつかなー。
でも大きさ的に3人では持ちにくいしなー。

ドイツでは、大きな荷物を持っていると、たいてい誰かが助けてくれます。

それに慣れて(甘えて)、引っ越しの際に、確実に最後までひとりで運びきれない量を

人が居るところまで行けたらあとはなんとかなる!

と、無理やり運んだこともあります。

ちなみに、しっかり助けてもらった上に

これすごく重いね!君より重いんじゃない!?

と、楽しい会話も付けてもらえたりします。

なので、きっと階段の下で声を掛けられそうな雰囲気です。

「ひとりで運べるよ。」と断ろうかな…。

と悩みながら、歩速を緩めて進んでいると、突然うしろからものすごい足音が!

モーレツダッシュでかけつけてきたのは、背の高いお兄さんでした。

そしてちょうど階段下で全員集合。

肩ではあはあ息をしながら

運ぶよ!

とお兄さん。

するとお姉さんが

よかったー。ありがとう!

そしておばさんが

これ3人でどうやって運ぼうかなって考えてたのよー!

私はというと

…。(セリフなし)

私の荷物なのですが…。

親切なジャイアン!?(お前のものは俺のもの)

結局口を挟む隙もなく、お兄さんに荷物を差し出しました。

おばさん達は、自分の荷物であるかのごとく相談をしてくれていたんですね。

ちなみに、階段をのぼりきったところで

どっちに行くの?道わかる?

と、道案内も付いてきます。

ドイツの人の親切は、自分のことのように考えてくれているのが伝わってくることが多いです。

そして、本当に助けてほしいときには必ず助けてくれます。

逆に、自分でなんとかしたいから声を掛けてほしくないなと思うときには、知らんぷりをして、だまって見守っていてくれます。

この絶妙さは、子どもの頃から、何度も何度も知らない人に声を掛けたり掛けられたりして身についたものなのかなと思います。

だから、世界各国を旅した経験のある上述の旅行通の方に「さりげない」と感じさせることができたのでしょうね。

私も、困っていそうな人を見かけると声を掛けるようにしていますが、ドイツの人達とは場数が違います。

おせっかいだったかな…と思うこともありますが、親切がうまくいったときは、自分も嬉しくてとても幸せな気持ちになります。

ドイツで親切にしてもらったときは、いつも本当に困っていたときで、こうやっていつまでも思い出に残るほど感謝しています。

私も、良い思い出になるような「さりげない」親切が、上手にできるようになるといいなと思います。

待てるドイツ、並べるドイツ

ドイツの人は、待ったり並んだりするのが得意です。

エピソードを2つ紹介します。

スーパーマーケットにて

ある日のスーパーマーケット。

レジでは、ベルトコンベアに自分で商品を置いて並びます。

日本ではIKEAで経験される方が多いかもしれません。

前に3人居る列に並んだところ、先頭のお会計中の人が、急に歩いてどこかに行ってしまいました。

探してみると、ATMのあたりでキョロキョロしています。

レジの店員さんは、急いだり焦ったりする様子はなく、隣のレジの店員さんとおしゃべりを始めました。(結構距離があるのですが…。笑)

私の前に並んでいた2人のお客さんも、怒ったりイライラしたりする様子はなく、笑っておしゃべりです。

カードが使えなかったんだって。

そうなんだ。それでお金をおろしに行ったんだね。

そして私の前の人は、うしろを振り向いて、私にも

カードが使えなくてATMに行ったみたいだよ。

そうなんだー。

店員さん同士のおしゃべりから情報を得た隣のレジでも、同じように伝言ゲームをしています。

そして、なぜか隣のレジの店員さんも手を止めて、3~4人×2列で見守ります。

みんなで待つこと数分。

お金をおろしに行った人は、ニコニコしながらゆっくり歩いて戻ってきました。

ありがとう!

これが日本なら、もしかしたら、うしろに並んでいる人の中には、怒る人がいるかもしれません。

そしてレジの店員さんは、自分は悪くないのに、慌てた感じで申し訳なさそうな顔をして、謝りながら次の番の人を先に精算するかもしれません。

カードが使えなかったお客さんの、悲壮な顔で大急ぎでATMに行ってダッシュで戻ってくる姿が目に浮かびます。

日本の接客業の方の姿勢や、日本人の「人に迷惑をかけてはいけない」という意識は、素晴らしいと思います。

でも、たまには、ドイツみたいにのんびりおしゃべりをしながら、ゆっくり待つのも楽しいんだけどなーと思うことがあります。

ちなみに、すごく田舎の話とかではありません。

まあまあ都会の、まあまあ人がたくさんいる大きなスーパーマーケットの、しかも結構混雑する時間帯(夕方頃)の出来事でした。

パン屋さんにて

パン屋さんに行ったときのこと。

ドアを開けて入ると、横長のショーケースがあって、いつもはレジが左右に2か所あります。

ところがあるとき、右側のレジしかない日がありました。

その右側のレジの前には会計中と思われるお客さんがいて、レジの店員さんはカーテンの奥へ行っているようで見当たりません。

ショーケースの左側の方にお気に入りのパンがあるわたしは、左側の前に立ちました。

と同時に、家族連れの新しいお客さんがドアから入ってきて、右側のお会計中の人の後ろに歩み寄ります。

そこへカーテンの奥から戻ってきたレジの店員さん。

会計を終えてお客さんが出ていくと、目の前にいる、私のあとから入ってきた家族連れのお客さんに

次の方どうぞ!

と声をかけました。

するとそのご家族が、みんなで一斉に私の方を見て、口を揃えて

あの子が先よ!

全員の視線を一身に浴び、大注目される私。

(ギクッ)

それを聞いた店員さんは

あら、そうなの?
(私の方を向いて)ご注文どうぞ!

あ…。う、うん…(汗)

わたしがモタモタしていたのには実は理由があって、お気に入りのパンの発音が難しく、口で言っただけでは伝わらないことがあるので、指をさしながら注文したかったのです。

外国語じゃなくても、お菓子のオシャレな長い名前がよく見えなくて

これー。

と、指をさして注文するときってありますよね。

左側のレジなら、すぐ目の前で指をさせるので「左側のレジは使わないのかなー。」と、選んでいるふりをしながら様子をうかがっていたのでした。

なのに「どうぞ。」と言われてしまい、できる限り腕を伸ばして指をさしながら右側のレジで注文しました。

自分たちの方が後だということを、ともすれば、ちょっと怒っているんじゃないかと思うぐらい被せ気味に言うドイツの人々。

病院など、行列を作ってきちんと並んでいない状況でも、みんながちゃんと順番を見ていると聞いたことがあります。

わざと順番抜かしをする人なんていませんし、怖そうな大きな男の人がうっかり順番を間違えたのを、弱そうな小さなおばあちゃんが注意する光景も、普通のことです。

もちろん間違えた人は、謝ってちゃんと並び直します。

申し訳なさそうな顔ではなく、ニコニコしているのが面白いです。

きっと「教えてくれてありがとう。」という気持ちなのでしょうね。

おわりに

ドイツで暮らして、私が良いと思ったところを紹介しました。

少し外国で暮らしたからと「○○(国名)では××なんだよー。なのに日本(人)は…。」と、日本をディスってしまうのは、外国かぶれあるあるです。(笑)

なので、あまり声高らかに主張したいわけではありませんが、ドイツから帰ってきた直後は

街中で出会う知らない人が、全員ドイツの人だったらいいのに…。

と少し思いました。

それぐらいドイツは、私にとっては居心地が良いところでした。

日本に、旅行に来たり住んでいたりする外国の人が

日本人は知っている人にはすごく親切なのに、知らない人には…。

と言うのはよく聞く話です。

でも日本人だって、こちらから手助けをお願いすれば、ほとんどの場合快く応じてくれます。

また、日本には、外国の人がびっくりするような良いところもたくさんあります。

自国の良いところは誇りを持って大切にし、外国の良いところは真似してみようと思えるような、より良い社会になるといいなと思います。

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