サラリーマンの年末調整と確定申告:扶養と社会保険料、ふるさと納税、選べる寄付金。還付申告のススメ。

税金

サラリーマンの方は、秋になると、総務や経理の人から

年末調整の書類を提出してくださいねー。

と言われますよね。

  • 会社でちゃんとやってくれてるから確定申告なんて自分には関係ない

と思っていませんか?

事例とともに

  • 年末調整の注意点(扶養と社会保険料控除)
  • ふるさと納税(ワンストップ特例制度)
  • 選択肢のある寄付金(所得控除と税額控除)
  • 確定申告をすると還付となるもの

について解説していきます。

サラリーマンの方からの、よくある質問や疑問についてもお話ししていきます。

事例

動物を愛するサラリーマンのKさん。

動物のことをもっと勉強したいと思い、「愛玩動物飼養管理士」の資格を取得したそうです。

協会から「会費が寄付金になるので確定申告をしてください。」という連絡がきたんです。

ふるさと納税とは違うんですか?

会社で年末調整をしてもらうだけじゃダメなんですか??

Kさんは

  • 専業主婦の妻がいます。
  • 大学生の息子(20歳)がいて、息子のアルバイトの年収は120万円です。
  • 妻と息子の国民年金保険料を支払っています。
  • お母さんの故郷である宮崎県の某市にふるさと納税をして、ワンストップ特例制度の申請を済ませています。
  • 「愛玩動物飼養管理士」の有資格者は「公益社団法人日本愛玩動物協会」の会員になることで特典があるため、合格と同時に会費を支払っています。

順番に詳しくみていきましょう。

年末調整

年末調整と確定申告は何が違うの?

サラリーマンの方はまずは年末調整です。

年末調整は、確定申告の一部を会社がやってくれるという、サラリーマン(給与所得者)ならではの特権ですね。

そのおかげで、「税金を納めている」という意識やご自身の納税額に無頓着な方も多いかと思います。

毎月のお給料からいくらか天引きされて、年末にいくらか戻ってきて、それで結局合計いくら?

となりますよね。

この仕組みを源泉徴収制度というのですが、実はこれ、戦時中の資金集めのためにヨーロッパの某国が考え出したものを参考に始まった制度です。

ひらたく言えば、国のとりっぱぐれを無くすことが目的ですね。

年末調整という制度のない国では、サラリーマンの方も毎年自分で確定申告をします。

そのため「あなたの年税額(年間の所得税額)はいくらですか?」と聞かれたときに、おおよその金額ですが、きちんと答えられる人が多いです。

確定申告をしない方も、確定申告に代えて会社が年末調整をしてくれているだけ、という気持ちで、ご自身の年税額を確認してみてくださいね。

ちなみに年税額は、年末調整のあとに会社からもらう「源泉徴収票」の「源泉徴収税額」という項目です。

さてそうなると

確定申告をするなら年末調整は必要ないのでは?

と思う方もいるかもしれませんが、確定申告をする場合でも、会社は年末調整をする義務があります。

確定申告をするので年末調整はナシでいいですよー。

なんて言う人もいるかもしれませんが、会社の義務ですから、ちゃんとしてもらってくださいね。

厳密には、会社は「扶養控除等申告書」を提出した従業員の年末調整をする義務があり、一定の従業員は「扶養控除等申告書」を会社に提出する義務があります。「扶養控除等申告書」を提出している従業員というのは、毎月のお給料から甲欄で源泉徴収されている人のことですね。

ちなみに、会社には、市町村に従業員の給与を報告する義務もあります。
「源泉徴収票」とほぼ同じ形式の「給与支払報告書」という書類を、従業員の住む市町村へ提出します。

年末調整でできること

さて、確定申告と混同しがちな年末調整ですが、実はできることが限られています。

年末調整でできること
  • 人的控除(障害者、寡婦(夫)、勤労学生、配偶者、配偶者特別、扶養、基礎)
  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 住宅ローン控除の2年目以降

医療費控除、寄付金控除、住宅ローン控除の1年目などは、年末調整ではできませんので、還付を受けるためには確定申告が必要です。

雑損控除も年末調整ではできません。災害等にあった場合には、確定申告をして還付を受けてください。

人的控除と社会保険料控除

では、事例のKさんの年末調整についてみていきましょう。

まず、妻が専業主婦とのことですので、配偶者控除が受けられますね。

I love my wife!

一方、息子さんは年収が120万円とのことですので、扶養控除は受けられません。

Oh! No!

社会保険料控除については、まずはご自身の社会保険料です。そして家族の国民年金保険料なども対象です。

こちらについて勘違いをされている方が多いですが、社会保険料控除は扶養控除とは無関係です。

扶養控除の対象とならなかった息子さんの国民年金も、Kさんが支払っているのならKさんの社会保険料控除になります。

これは、配偶者控除の対象とならない妻の国民年金を払った場合ももちろん同様です。

誰が払ったかがポイントです。支払った人の社会保険料控除になります。

生命保険料や医療費でも同じ考え方です。

扶養の有無や本人の収入とは無関係で、支払った人の控除や医療費になります。

ちなみに息子さんは20歳ですから、もし扶養控除が受けられていれば控除額は63万円。

大学生はお金がかかりますからね。控除が手厚い年齢層です。

となると、息子さんとしては授業やサークルの合間をぬって一生懸命アルバイトをしているのかもしれませんが、家族全体でみるともったいないことになっているかもしれません。

特にKさんが高収入であれば、息子さんのアルバイトを少し減らして扶養控除を受けられた方が、家族合計の税金は減るかもしれません。

そして減った分をお小遣いとして息子さんにあげれば、息子さんは無理をして働く必要はなく、空いた時間を学生の本分である勉強に使えます。

アルバイトなどで収入が一定ではない家族がいる場合には、家族で話し合い、家族全体として(お金のことだけでなく)より良い方法を選べるといいですね。

わかりました。来年はよく話し合おうと思います。

年末調整の際に、大学生の子どもが扶養控除の対象にならないことが判明することがたまにあります。扶養控除の対象として源泉徴収をしていたのに外れるとなると、還付ではなく追加徴収となる可能性があります。年末のお給料の手取り額が減ってしまうこともありますので、注意が必要です。

ふるさと納税

やっぱりほとんどの項目は、会社が年末調整でやってくれるんですね。

ふるさと納税の分は、ワンストップ特例制度の申請をしたから確定申告には含めなくていいんですよね?

くま税理士
くま税理士

いいえ。Kさんの場合は、ふるさと納税の分も確定申告が必要です。

年末調整のみで確定申告をしない人は、ワンストップ特例制度の申請により、ふるさと納税分の確定申告は不要になりますが、ワンストップ特例制度の申請をしたけれど、あとからなにか追加の項目があって確定申告をすることになった人は要注意です。

ワンストップ特例制度

ふるさと納税のワンストップ特例制度とは、申請をすることで確定申告が不要になる制度です。

条件は

  • 確定申告をする必要がない人であること(年末調整を受けたサラリーマンの方など)
  • 寄付先が5つまでであること

申請をすると、その年の所得税からではなく、翌年の住民税から控除されます。

寄付をする際に「ワンストップ特例制度の申請をする」といった選択肢を選んでおくことで、寄付先の市町村から申請用紙が送られてくるので、必要事項を記入して返送すればOKです。

このように、サラリーマンの方にとっては便利なこの制度ですが、ひとつ注意点があります。

それは

  • 確定申告をすると適用対象外になる

ということ。

ワンストップ特例制度の申請をしたあとで、やっぱり確定申告をすることとなった場合には、ふるさと納税分の寄付金控除も合わせて申告してください。

ワンストップ特例制度の申請をしていても、確定申告をする場合には、ふるさと納税分の寄付金控除も申告が必要です。

コラム:寄付先の選び方

ふるさと納税は、国や自分の住んでいる市町村に払う税金の一部を、自分の払いたい市町村に払うことができる制度です。

自分の払った税金を何に使うかを指定することもできます。

返礼品で選ぶのも楽しいですが、応援したい政策がある市町村や、出張などでよく利用する市町村など、自分の寄付でその市町村の税収が増えるんだと思うと、また違った選び方があるかもしれません。

H市に住む、子どもがいる友人に

「H市の子育てに使う」と指定してふるさと納税がしたいんだけど、自分の住んでいる市町村にしてもいいの?

と聞かれたことがあります。

ふるさと納税の目的どおりの選び方ですよね。目からウロコでした。

このように、自分の住んでいる市町村にふるさと納税をすることも可能です。

もちろん控除は受けられます。

ただし「返礼品は市外在住者に限る」としている市町村が結構ありますので、それでもいいと思うのであれば、自分の住んでいる市町村に寄付をするのもいいですね。

返礼品はあくまでおまけで、ふるさと納税は寄付です。

市町村側も、モノで釣るのではなく、応援したいと思うような政策や取り組みについて情報発信をすることに力を入れてほしいですね。

確定申告

確定申告をするにあたって

さて、それではいよいよ確定申告です。

サラリーマンの方に特によく質問されるのが

確定申告をするときって、会社に何か言わないといけないんですか?

という疑問。

確定申告をするにあたって、会社と何かやり取りが必要だったり、発行してもらわないといけない書類や、提出しないといけない書類があったりするのかな…?

といったことを悶々と考えて、面倒くさいからもういいや、と確定申告を諦めてしまう方もいらっしゃるようです。

確定申告をすることは会社に言う必要はありません。

また、会社が発行してくれる源泉徴収票は確定申告に必要ですが、確定申告をするかしないかにかかわらず、全員に発行するものです。

逆に、確定申告をするにあたって、ご自身が会社に提出する書類なんてありませんし、申告書を会社に見せなければならない、なんてこともありません。

会社の仕事は年末調整で完了です。そのあとの確定申告については、個人的なことですので関係ありません。

まれに、なんらかの事情で年末調整ができなかった場合などに、会社から「確定申告をしてくださいね」と言われることがあります。また、還付の可能性がある場合などに、アドバイスとして確定申告をすすめてくれる方もいるかもしれませんね。

いずれにしても、確定申告をすることは悪いことやうしろめたいことではありませんので、会社とのやり取りを気にする必要はありません。

寄付金控除と寄付金特別控除

ではKさんの確定申告をみていきましょう。

Kさんの寄付金ですが、実はちょっと特別なものなんです。

理由は寄付先が「公益社団法人」であるということ。

寄付金のうち

  • 公益社団法人、公益財団法人、学校法人、社会福祉法人、更生保護法人のうち行政庁が認めた法人に対する寄付金
  • 認定NPO法人のうち行政庁が認めた法人で一定のものに対する寄付金
  • 政党または政治資金団体等に対する寄付金で、政治資金規正法により報告されたもの

は、寄付金控除(所得控除)のかわりに寄付金特別控除(税額控除)を選ぶことができます。

事例のKさんの「公益社団法人日本愛玩動物協会」は、この認定を受けた法人です。

どちらがお得かどうかは、厳密には実際に計算してみないとわかりませんが、一般的には税額控除の方がお得です。

ただし、すごく高収入の人や、寄付額が多い場合などには、所得控除の方が有利になることもあります。

ふるさと納税以外の寄付をした場合や、自分は寄付のつもりはなかったけど寄付になると言われた場合などには、この選択できる寄付金に該当しないかどうか確認してください。

そして、寄付金控除(所得控除)と寄付金特別控除(税額控除)それぞれで、試算してみるといいですね。

必要書類は寄付先によって異なりますが、日本愛玩動物協会の場合には

  • 会費の領収書
  • 税額控除に係る証明書(HPよりダウンロード可能)

そして、前項で申し上げたとおり、ふるさと納税分の申告も忘れてはいけません。

ワンストップ特例制度の申請用紙といっしょに送られきた

  • 寄付金受領証明書

も準備して、確定申告をおこなってください。

サラリーマンの還付申告

上記の寄付金を含め、サラリーマンの方が確定申告をした場合に、還付となる可能性のあるものは、おもに以下の項目です。

  • 雑損控除
  • 医療費控除
  • 寄付金控除
  • 住宅ローン控除の1年目
  • 2か所給与
  • 退職した方

住宅ローン控除は、サラリーマンの方にとってはおなじみの項目ですね。

2年目以降は会社の年末調整で処理してもらえますので、確定申告が必要なのは1年目のみです。

また、医療費控除もご存じの方は多いですよね。

自分の病院代だけでなく、薬代や家族の医療費も合算することができます。

病気で療養中のご家族がいて、毎年医療費控除のために確定申告をされているサラリーマンの方もいらっしゃるかもしれませんが、そのたびに税理士に依頼し、還付金と同じぐらいの報酬を支払ったりしていませんか?

住宅ローン控除の1年目でしたら1回きりのことですが、医療費控除や寄付金控除などで、毎年確定申告をする予定のある方は、ぜひご自身で確定申告をしてみることをお勧めします。

サラリーマンの方の還付申告は、国税庁の確定申告書等作成コーナーでとっても簡単にできます。

申告したい年の作成コーナーは、毎年翌年の1月上旬に開設されます。

前年の作成コーナーで練習してみるのもいいですね。

ちなみに、2か所給与や退職といった項目は、源泉徴収によって所得税を納めすぎている可能性があるものです。

転職やセミリタイア経験のある方、パラレルキャリアの方にとってはおなじみですね。

かくいうわたしも、サラリーマン時代はこの項目の常連でした。

キャリアチェンジで税務会計業界にきましたので、20代の頃はおカネの知識はまったくありませんでしたが、確定申告書等作成コーナーを使って申告書は自分で作成していました。

必要書類を集めて、画面の指示通りに入力するだけです。

永年勤続のサラリーマンの方こそ、一度やってしまえば、毎年同じ作業です。

ぜひ一度挑戦してみてください。

まとめ

サラリーマンの方の年末調整と確定申告のうち、ご相談の多い

  • 年末調整の注意点
  • ふるさと納税
  • 確定申告(還付申告)

について、事例とともにお伝えしてきました。

記事中にご紹介した確定申告書等作成コーナーは、

  • 確定申告書を作成(作成後に印刷して郵送)

といった使い方以外にも

  • マイナンバーカードで電子申告(e-Tax)
  • IDとパスワードを取得して電子申告(e-Tax)
  • 特定の項目で一定の条件を満たせばスマホでも確定申告可能

など、ご自身に合った使い方を選んで利用することができます。

ぜひ試してみてください。

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