2023年10月の開始まで、あと半年余りとなったインボイス制度。
ここに来て、また新たな特例措置が講じられる予定です。
その名も
通称
です。
インボイス制度の導入に際し、課題となっている
だった事業者が
ということについては、これまでも多くの特例措置が検討され準備されていますが、ついに
というラスボスが登場しました。
2割特例の概要
対象者
2割特例の対象者は
だったけれど
事業者です。
消費税は、国内のすべての消費について幅広く負担を求めるものであるため、本来は、国内で事業を行った事業者には納税義務があります。
ただし
の事業者については、納税義務を免除するという規定があります。
小規模事業者の納税や事務の負担に配慮して、売上が少ない事業者に限り、納税義務を免除するというものです。
そして、この納税義務の免除については
といった特例があり、納税義務の免除の可不可が細かく規定されています。
これらを総合して、免税事業者に該当するかを判定します。
納税義務の判定って難しいんだね。
そうですね。悪いことをしようとする人がいて、複雑になっています。
納税義務の免除の規定は、消費税の歴史上、不正還付や租税回避に利用されることが多く、問題になるたびに改正があり、とても複雑になっています。
悪いことを企んでいなければ損はしませんので、慎重に判定したいですね。
なお、当然のことですが
は2割特例の適用は受けられません。
また
についても適用対象外です。
対象期間
特例が適用できるのは
の日の属する課税期間です。
個人事業者または12月決算法人なら
の4回分の申告が対象です。
3月決算法人なら
の4回分の申告が対象です。
対象期間後は、従来通り
のいずれかで申告することになります。
計算方法と特徴
通称
と言われるほどですので、納付税額はズバリ
です。
簡易課税制度に似ているね。
そうですね。第2種事業の「みなし仕入率80%」と同じです。
簡易課税制度は、売上だけで計算ができて事務負担が軽減されるため、選択している事業者も多いですよね。
ただし
など、必要な条件もいくつかあります。
特に消費税では、不正還付や租税回避を防止するために、事前の届出と継続適用がとても重視されています。
基本的に、申告するときになってから、有利選択をする(得な方を選ぶ)ということはできません。
ところが、この2割特例は
することができます。
後出しOKなんだね!
はい。継続適用の要件もありません。
本則課税の事業者はもちろん、簡易課税制度を選択していても、2割特例を選ぶことができます。
本則課税の事業者(簡易課税制度を選択していない事業者)の場合は
のいずれかを、申告の際に申告書に付記するだけで選択することができます。
簡易課税制度を選択している事業者は
のいずれかです。
両方計算して得な方を選べばいいんだね。
はい。どちらが有利か明らかなときは、片方だけでも大丈夫です。
こんなときどうする?
既に課税選択をしてしまった事業者
どうせ適格請求書発行事業者になるからと思って、2023年の1月から課税事業者の選択をしてしまいました。
安心して下さい。使えますよ。
今回のインボイス制度導入については、本当にぎりぎりまでドタバタですね。
随分前から検討や準備をしっかりしていた事業者の中には、この2割特例ができる前に、課税事業者の選択をして登録を済ませてしまった事業者もあると思います。
そんな素晴らしい事業者が損をするなんておかしいですよね。
きちんと特例中の特例が用意されています。
個人事業者または12月決算法人の場合を例に、ご説明します。
2021年の売上は1,000万円以下だったけれど、2022年末までに課税事業者選択届出書を提出し、2023年1月1日から課税事業者になっている事業者です。
2023年10月1日からは適格請求書発行事業者です。
この場合、2023年1月1日から2023年12月31日までを課税期間とする消費税の申告書を提出することになります。
簡易課税制度の選択をしている場合は簡易課税で、それ以外は本則課税で計算します。
これを、2023年分について、実際に選択するかどうかは別にして、2割特例も選択できる状態にしておきたい場合は
に
を提出します。
これにより、提出済の課税事業者選択届出書の効力が失われ
になります。
その結果、2023年分として申告するのは、2023年10月1日から2023年12月31日分となり、2割特例の選択も可能となります。
おわりに
2022年末に慌ただしく公表され、2023年4月施行予定の
通称
について解説しました。
適格請求書発行事業者の登録に悩む免税事業者の、背中を押す規定になりそうです。
なんと言っても、消費税の常識を打ち破る
の規定です。
これで最後になるといいですね。