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中小企業者等の資本金の額の判定時期

税金
税金

中小企業には、税制上の優遇措置がいくつかあります。

多くの場合、その適用可否の判定には期末の資本金の額が使われますが、判定時期に注意が必要な規定もあります。

その代表的なものとして、租税特別措置法の

  • 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

を例に、判定時期について解説します。

概要

優遇措置を受けられる中小企業には

  • 中小法人(法人税法)
  • 中小企業者等(租税特別措置法)

の2種類があります。

中小法人(法人税法)の優遇措置は、以下の6つです。

  • 法人税の軽減税率
  • 交際費の定額控除限度額
  • 貸倒引当金
  • 欠損金の繰越控除限度額
  • 欠損金の繰戻還付
  • 留保金課税の適用除外

判定基準のひとつとして、期末の資本金の額が使われます。

中小企業者等(租税特別措置法)の優遇措置には

  • 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

いわゆる、30万円未満の減価償却資産を一時に償却できる特例のほか

  • 賃上げ
  • 経営改善設備
  • 高エネルギー設備
  • 試験研究

などの特別控除に関する規定があり、判定基準のひとつとして、資本金の額が使われます。

資本金の額の判定時期

原則

「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」の適用が受けられる「中小企業者等」に該当するかどうかの判定は

  • 資産の取得をした日
    および
  • 事業の用に供した日

の現況によるものとされています。

つまり、期末ではなく、減価償却資産の取得日、事業供用日の資本金の額で判定することになります。

事業年度の中途で増減した場合

増資や減資をして、事業年度の途中で資本金の額が変わった場合はどうなりますか?

くま税理士
くま税理士

いい質問ですね!

たとえば、中小企業者(資本金1億円以下)から、増資をして大規模法人(資本金1億円超)に変わった場合、事業供用日が増資前であれば、中小企業者に該当し特例の規定の適用ができます。

増資をした場合(増資前に取得:適用可)
  • 期首資本金:9,000万円

    (中小企業者)

  • 資産取得、事業供用

    中小企業者:適用可

  • 増資:+2,000万円

    中小企業者→大規模法人

  • 期末資本金:1億1,000万円

    (大規模法人)

一方、増資をしたあとで、資産を取得した場合は、事業供用日には中小企業者に該当しませんので、特例の規定は適用できません。

増資をした場合(増資後に取得:適用不可)
  • 期首資本金:9,000万円

    (中小企業者)

  • 増資:+2,000万円

    中小企業者→大規模法人

  • 資産取得、事業供用

    大規模法人:適用不可

  • 期末資本金:1億1,000万円

    (大規模法人)

減資をした場合も同様に、事業供用日の現況で判定します。

減資をした場合(減資後に取得:適用可)
  • 期首資本金:1億1,000万円

    (大規模法人)

  • 減資:▲2,000万円

    大規模法人→中小企業者

  • 資産取得、事業供用

    中小企業者:適用可

  • 期末資本金:9,000万円

    (中小企業者)

減資をした場合(減資前に取得:適用不可)
  • 期首資本金:1億1,000万円

    (大規模法人)

  • 資産取得、事業供用

    大規模法人:適用不可

  • 減資:▲2,000万円

    大規模法人→中小企業者

  • 期末資本金:9,000万円

    (中小企業者)

グループ企業の場合

親会社の資本金の額の判定も同様ですか?

くま税理士
くま税理士

いい質問ですね!

グループ企業の場合は、親会社の資本金の額も、中小企業者等の判定に影響を与えます。

たとえば、出資割合が100%の親会社がある場合は、その親会社の資本金の額も1億円以下でなければ、中小企業者に該当しません。

親会社で増資や減資があった場合も、上記と同様に事業供用日で判定することになります。

親会社の資本金が外貨の場合

親会社が外国企業です。為替が変動した場合はどうなりますか?

くま税理士
くま税理士

いい質問ですね!

たとえば

  • 自社の資本金の額は1億円以下
  • 100%親会社の資本金の額は750,000EUR

の場合、親会社の資本金を円換算すると、為替レートが

  • 133円の日なら99,750,000円
  • 134円の日なら100,500,000円

となり、134円の日に事業供用した場合は、中小企業者に該当せず、特例の規定が適用できません。

役員報酬の定期同額給与については、外貨で支払われる場合、その外貨の金額のままで同額であれば

  • 円換算した金額が同額であることまで求めるものではない

ということになっています。

けれど、中小企業者等の判定については、そのような言及が特にありません。

従って、規定どおりに解釈すると、為替レートが中小企業者等の判定に影響を及ぼすことになります。

資本金が700,000EURから800,000EUR程度の場合、円換算額が1億円付近になります。

中小法人の判定の場合は、5億円が境になりますが、3,500,000EURから4,000,000EUR付近です。

外国の関係会社がある場合は、為替レートがいくらになると、1億円または5億円を行ったり来たりするのか、把握しておくといいですね。

EURレート円換算額(千円)
700,000143.00100,100
700,000142.0099,400
800,000125.00100,000
800,000124.0099,200
3,500,000143.00500,500
3,500,000142.00497,000
4,000,000125.00500,000
4,000,000124.00496,000
(参考)EURと円換算額

おわりに

租税特別措置法の

  • 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

を例に、中小企業者等の資本金の額の判定時期について解説しました。

中小企業の優遇措置は、多くの場合、資本金の額を適用可否の判定基準としますが、その判定時期は期末ばかりではありません。

適用可能な優遇措置を確認し、増資や減資、組織再編等は、計画的に行いましょう。

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