法人税事例:株主は外国の大企業。中小企業向けの優遇措置は受けられる?

税金

わたしは長年外国の大きな会社で働いていましたが、日本に関連会社をつくることになり、そこをわたしに任せてもらえることになったんです。

新会社は社員数十名の小さな会社なんですが、大きな会社の関連会社だと、中小企業向けの優遇措置は一切受けられないんでしょうか?

くま税理士
くま税理士

いえいえ。受けられる場合もありますよ。

中小企業向けの優遇措置を受けられる「中小企業」には2種類あります。

株主の規模や持株割合などによって、大きな会社の関連会社でも中小企業向けの優遇措置が受けられる場合があります。

法人税の計算をするときに登場する法人の種類とともに、詳しくみていきましょう。

また、資本関係がある外国の会社と取引がある場合の注意点についても、少しお話ししておきます。

事例

法人税事例

 A社の元社員のBさんは、A社の新しい関連会社であるC社の社長になりました。

C社は中小企業に該当しますか?どんな優遇措置を受けられますか?

グループ関係図(%は持株割合)
  • C社の株主は、A社(70%)とBさん(30%)です。
  • A社の資本金は800万ユーロです。
  • C社の資本金は4,000万円です。

 

法人の種類

まず法人の種類をまとめてみてみましょう。

法人税の計算をするときには、会社の大きさによって、おもに以下の4種類の法人が登場します。

法人の種類
  • 大法人
  • 大規模法人
  • 中小法人
  • 中小企業者等

ひとつずつ詳しくみていきましょう。

大法人

資本金の額が5億円以上の法人をいいます。

大規模法人

資本金の額が1億円超の法人をいいます。

(資本金がない法人の場合は、従業員が1,000人超の法人をいいます。)

※平成31年度に改正があります。5項をご参照ください

中小法人

資本金の額が1億円以下の法人をいいます。

ただし大法人による完全支配関係があるもの等は除かれます

完全支配関係とは、その名のとおり、完全に支配している関係のことです。

つまり、大法人に株式のすべて(100%)を保有されている会社のことです。

資本金の額が1億円以下の小さな会社でも、バック(株主)に大法人がいるなら、優遇措置が必要な弱い小さな会社(中小企業)とはいえないですよね、ということで除かれることになります。

完全支配関係について、詳しくはこちらをご覧ください。

中小企業者等

資本金の額が1億円以下の法人をいいます。

ただし以下の場合は除かれます。

  • 大規模法人に株式の50%以上を保有されている場合
  • 複数の大規模法人に株式の2/3以上を保有されている場合
  • 従業員が1,000人を超える場合
  • 過去3年間の平均年間所得が15億円を超える場合

除かれる理由は中小法人の場合と同じですね。

バック(株主)に大物がいたり、資本金だけが少なくて従業員がたくさんいたり、利益がとても多かったり、実質的に小さな会社ではないといえる会社は除かれます。

中小企業向けの優遇措置

では具体的にどんな優遇措置があるのでしょうか。

中小企業向けの優遇措置を受けられる「中小企業」は以下の2種類です。

  • 法人税法で優遇措置を受けられる「中小法人
  • 租税特別措置法で優遇措置を受けられる「中小企業者等

それぞれ詳しくみていきましょう。

中小法人:法人税法の優遇措置

法人税法の優遇措置は以下の6つです。

法人税の軽減税率

法人税の税率は23.2%ですが、中小法人は、年800万円以下の所得については、税率が19%(平成31年3月31までに開始した事業年度については15%)に軽減されます。

交際費の定額控除限度額

交際費は、法人税の計算をするときは、接待飲食費の50%までしか費用と認められませんが、中小法人は、年800万円まで費用とすることができます。

貸倒引当金

貸倒引当金は、法人税の計算をするときは費用と認められませんが、中小法人は、一定額まで費用とすることができます。

欠損金の繰越控除限度額

欠損金の繰越控除には限度額がありますが、中小法人の限度額はそれ以外の法人よりも多く設定されています。

欠損金の繰戻還付

欠損金の繰戻還付は中小法人しかできません。

留保金課税の適用除外

独裁企業などが会社の利益を余分に内部留保している場合に税額を加算する制度です。中小法人はオーナー企業であっても対象となりません。

中小企業者等:租税特別措置法の優遇措置

租税特別措置法は、時限立法であり頻繁に改正があります。

優遇措置については、基本的に青色申告をしていることが第一要件になります。

よく使われる主なものをご紹介します。

少額減価償却資産の損金算入

30万円未満の減価償却資産を購入した場合に、その全額を購入時に一度に費用とすることができる制度です。

その他の減価償却資産の特別償却・特別控除

「中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除」や「中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除」などがあります。

名称が変わってしまったり、対象資産や償却率などが頻繁に改正されたりしますが、基本的に中小企業者等について、それ以外の法人よりも、多く減価償却(費用化)ができたり、税額控除ができたりする制度です。

試験研究費の特別控除

試験研究を行っている場合に税額控除ができる制度です。中小企業者等の控除額や控除限度額は、それ以外の法人よりも多く設定されています。

所得拡大促進税制(賃上げ税制)

従業員の給料をあげた場合に税額控除ができる制度です。中小企業者等の控除額や控除限度額は、それ以外の法人よりも多く設定されています。

その他の税額控除

現行で上記2制度のほかによく使われるものはありませんが、過去には「雇用促進税制」というものがありました。新規雇用者が増えると税額控除ができる制度でした。

基本的に中小企業者等の控除額や控除限度額は、それ以外の法人よりも多く設定されます。

事例回答

では、上記をふまえて事例のご回答です。

まず、A社は大法人であり、大規模法人でもありますね。

ではC社はというと

C社は中小企業に該当するか
  • 資本金が1億円以下(4,000万円)で、A社(大法人)による完全支配関係はないので、中小法人に該当する
  • 資本金は1億円以下(4,000万円)だが、A社(大規模法人)に株式の50%以上(70%)を保有されているので中小企業者等には該当しない。

ということで、中小法人向けの法人税法の優遇措置は受けられますが、中小企業者等向けの租税特別措置法の優遇措置は受けられないことになります。

法人税法上は中小法人に該当するので

  • 法人税率は19%(年800万円まで)
  • 交際費は800万円まで損金算入可能
  • 貸倒引当金の設定が可能
  • 欠損金の繰越控除は所得金額まで可能
  • 欠損金の繰戻還付可能
  • 留保金課税の心配なし

となります。

一方、租税特別措置法上は中小企業者等に該当しないので

  • 30万円未満の資産を購入した場合には減価償却が必要
  • 所得拡大促進税制を使う際には控除限度額に注意が必要
  • その他の特別償却や特別控除、税額控除について適用可否や金額に注意が必要

となります。

このように、株主に大きな会社がいる場合、持株割合によって、法人税法上と租税特別措置法上で、中小企業となるかどうかの位置づけが異なる場合があります。

それぞれの優遇措置がどちらのものなのかを、きちんと整理しておくことが大切です。

租税特別措置法の中小企業者等の判定時期には注意が必要です。

中小法人や中小企業者等に該当するかどうかの判定は、おもに事業年度終了時(期末)の現況で判断しますが、租税特別措置法の資産に関する規定については、原則として取得日または事業供用日の現況で判定します。

自社や株主の会社で減資や増資があった場合には、「少額減価償却資産の損金算入」では中小企業者等に該当するけど、「所得拡大促進税制」では中小企業者等に該当しない、ということもあり得ます。

平成31年度改正:大規模法人の範囲の追加

大規模法人について、平成31年度の改正で範囲の追加がありました。

大規模法人
以下のいずれかに該当するもの
  • 資本金の額が1億円超の法人
  • 従業員が1,000人超の法人
  • 大法人による完全支配関係があるもの等

上の2つは元々の規定です。3つ目の「大法人による完全支配関係があるもの等」が今回追加されたものです。法人税法上の中小法人と同じ考え方ですね。

完全支配関係について、詳しくはこちらをご覧ください。

これによって、改正前には租税特別措置法上の中小企業者等に該当していたのに、改正後に該当しなくなる会社が出てきます。

象徴的な例をひとつご紹介します。

C社は、中小法人や中小企業者等に該当しますか?

グループ関係図(%は持株割合)
  • A社の資本金は5億円です。
  • B社の株主はA社(100%)です。
  • B社の資本金は9,000万円です。
  • C社の株主はB社(100%)です。
  • C社の資本金は4,000万円です。
  • A社、B社、C社の間には、完全支配関係があります。

大法人であるA社による完全支配関係がありますので、改正前も改正後も、C社は法人税法上の中小法人には該当しません。

ところが改正前は、租税特別措置法上の中小企業者等には該当していたんです。

改正前は、直接株式を保有されている法人の規模だけを、判定の対象としていました。すべての株式を保有しているB社の資本金が1億円以下だったので、C社は中小企業者等に該当していたんです。

でもおかしいですよね。あきらかにバック(株主)に大物がいます。

ということで、法人税法上の中小法人と要件を合わせる形で今回の改正となりました。

孫会社だろうが、間接保有だろうが、大法人が支配していたら中小企業にはなりません。

ちなみに改正後は、C社だけでなく、B社も大規模法人になります。

外国法人と取引がある場合:国外関連者と別表十七

資本関係がある外国法人と取引がある場合には、法人税の申告をするときに、提出しなければならない書類があります。

「別表十七(四)国外関連者に関する明細書」です。

国外関連者の情報(名称、所在地、事業内容、資本金、持株割合等)と取引の内容を記載します。

国外関連者とは以下です。

国外関連者
  • 株式の50%以上を保有し、または、保有される関係
  • 実質的に支配、または、被支配にある関係

持株割合でいうと、50%が基準になります。こちらが保有していたり、むこうに保有されていたり、別の第三者に保有されている同士だったり、どの場合も含まれます。

実質的に支配(被支配)というのは、たとえば、役員の半分以上が別の会社のえらい人だったり、売上の大半を1社に依存していたり、多額の借入金をしていたり、影響力がとても大きいと実質的に支配している(支配されている)といえます。

そして、この国外関連者との取引を国外関連取引といいます。

事例のC社も、A社と取引があれば、この別表を提出しなければなりません。

モノの売買はもちろんですが、サービスの提供や資産の賃貸借、お金の貸し借りなんかでも、国外関連取引に該当します。

まとめ

株主が外国の大企業である会社の事例とともに、以下の内容についてお話ししてきました。

  • 法人税に登場する法人の種類(大法人・大規模法人・中小法人・中小企業者等)
  • 中小企業向けの優遇措置(法人税法上の中小法人、租税特別措置法上の中小企業者等)
  • 平成31年度改正:大規模法人の範囲の追加
  • 国外関連者と別表十七(四)

範囲が多岐に渡りますが、上の3つは外国法人に限ったことではありません。

自社の株主構成を再度確認して、適用を忘れている有利な措置がないか検討してみてください。

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