
簡易課税制度で事業区分が複数あります。計算方法はどうなりますか?

原則は、みなし仕入率の平均値を使用しますが、特例もあります。
簡易課税制度で
の計算方法について解説します。
原則
簡易課税制度では、事業区分ごとにみなし仕入率が定められています。
第1種事業 | 90% | 卸売業 |
第2種事業 | 80% | 小売業 |
第3種事業 | 70% | 製造業等 |
第4種事業 | 60% | 第1・2・3・5・6種以外の事業 |
第5種事業 | 50% | サービス業、運輸通信業、金融業、保険業 |
第6種事業 | 40% | 不動産業 |
業種ではなく、取引ごとに内容で判断して区分します。
この事業区分が複数ある場合、原則として
を使用して税額を計算します。
平均みなし仕入率の算式は
です。
例えば
だった場合のみなし仕入率は
となります。
これにより
となりますので、納付する消費税額は
になります。

きちんと区分ができていない場合はどうなりますか?

もっとも低いみなし仕入率で計算することになります。
上記の例ですと、もっとも低いみなし仕入率の
を使用して
となり、納付する消費税額は
となります。

金額が全然違いますね…。

そうですね。きちんと区分しておくことはとても大切ですね。
特例
ひとつの事業の割合が高いとき

ほとんどが卸売なのに、少しだけ小売とアフターサービスをしているのでみなし仕入率が下がってしまいます…。

そんな方のために特例があります。
みなし仕入率の特例として
のときは
を使用して計算することができます。
例えば
だった場合、原則計算では、みなし仕入率は
ですので
となり、納付する消費税額は
となりますが、卸売業の課税売上高が
ですので、特例として
を使用して計算することができます。
従って
となり、納付する消費税額は
となります。

特例を使うとお得ですね!

この例の場合はそうですね。
みなし仕入率が高い事業の割合が高いときは、特例を使った方が納付税額は少なくなります。
一方、みなし仕入率が低い事業の割合が高いときは、原則の方が納付税額が少なくなることがありますので、両方計算して有利選択をすることになります。
ふたつの事業の割合が高いとき
3つ以上の事業区分がある場合は、もうひとつ特例があります。
のときは
を使用して計算することができます。

???

わかりにくいですよね。例をみてみましょう。
例えば
だった場合、原則計算では、みなし仕入率は
ですので
となり、納付する消費税額は
です。

一番最初の例と同じだね。

はい。原則計算の説明で使用した例です。
この例の場合、卸売業と小売業の課税売上高を合計すると
になります。
このうち、みなし仕入率が高いのは卸売業ですので
には
を使用します。
そして、残りの
には、割合の高いふたつの事業のうち、みなし仕入率が低い方の
を使用して、全体のみなし仕入率を計算することができます。
これにより、全体のみなし仕入率は
となりますので
となり、納付する消費税額は
となります。

原則より少しだけお得だね。

そうですね。納付税額は原則より3万円少ないですね。
事業区分が3つ以上ある場合は、条件に当てはまれば
のいずれかを有利選択することができます。
ちなみに
は、事業区分の数に応じて組み合わせも増えます。
様々なパターンが考えられますので、見逃さないようにしたいですね。
おわりに
簡易課税制度で
の計算方法について解説しました。
日々の入力できちんと区分しておけば、有利選択や税額計算は会計ソフトが自動で行ってくれるようになっているかと思います。
ただし、課税期間(個人事業の場合は1月1日から12月31日)が終わってしまってからでは、各区分の割合は変更できません。
年が明けて申告直前になってから

あと少しだけ卸売をしていたら90%を使えたのに…。
とならないように、課税期間中に日々帳簿とにらめっこをして、割合や税額を確認できるといいですね。
簡易課税制度を選択している場合は、今後の事業の展望によっては、本則課税(一般課税や原則課税とも呼ばれます。)との比較検討も必要になります。
適切な課税選択をするためには、現状の分析と事業の予測をして、計画を立てたり準備をしたりすることが必要です。
おおよそで構いませんので、様々なパターンで試算してみるといいですね。
消費税に関する各種ご相談、現状分析や試算等は、個別相談で承っております。